「五洋建設」(東京都文京区)の株主である株主オンブズマンメンバーが自民党長崎県への献金など総額約2億2000万円の返還を現・旧経営陣6人に求めた株主代表訴訟は、5月30日、東京地裁(難波孝一裁判長)で和解が成立しました。
 以下に、和解にあたっての株主オンブズマンと政治資金オンブズマンの連名のコメントと和解条項を発表します。


五洋建設株主代表訴訟の和解にあたって

2008年5月30日

NPO法人株主オンブズマン代表 森岡孝二 (関西大学教授)
政治資金オンブズマン共同代表   上脇博之 (神戸学院大学大学院教授)
原告弁護団(団長 松丸正、同事務局長 阪口徳雄)


1 五洋建設株主代表訴訟の経過

(1)【1】 平成15年(ワ)第26706号事件(平成15年8月提訴)
     当事者 原告 三宅陸郎(元高等学校教諭・現年金生活者)
     被告 水野廉平 外3名
  【2】 平成19年(ワ)第32106号事件(平成19年11月追加提訴)
     当事者 原告 同
     被告 ○○○○ 外1名

(2) 請求の趣旨

【1】 被告役員らは、連帯して、自民党長崎県連への平成5年〜13年の政治献金5900万円を会社に返せ。
【2】 被告役員らは、連帯して、談合による課徴金1億6342万円を会社に返せ。

(3) 裁判の経過

【1】 長崎県におけるゼネコンの異常な献金額は、
    http://homepage2.nifty.com/~matsuyama/nagasaki.html 参照。
    実態については、
    http://homepage2.nifty.com/~matsuyama/0051.html 参照。
【2】 公取委の記録の文書提出命令
・2004(平成16)年4月7日、公取委の記録について提出命令の申立。
・公取委は、談合担当者らの供述調書を提出すると今後の審査の遂行に支障が生じる として反対。
・ 2006(平成18)年2月3日、インカメラのため公取委に文書の提出を命じる(民訴法223条6項)。
・ 公取委が民訴法220条4号ロの該当性について反対。
・ 2006(平成18)年9月1日、公取委に対し、文書提出命令。
・ 2007(平成19)年2月16日、東京高裁 決定
・ 2007(平成19)年3月23日、東京高裁 抗告不許可決定
・ 公取委の供述調書ようやく開示。この供述調書により長崎県の談合の実態が判明。

・ 五洋建設の独禁法遵守マニュアルについては、
  以前掲載のPDFファイル 参照。

【3】 証拠調べ
・ 平成19年12月6日、元長崎営業所所長(政治献金及び談合の担当者)及びそれらを監督する元九州支店長(元取締役)の尋問。
・ 平成20年1月24日、現取締役及び当時のコンプライアンス担当者の尋問。
・ 平成20年3月13日、最終準備書面を提出し、終結。
・ 談合に関する最終準備書面は、
  http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/folder/1177889.html 参照。

【4】 和解に至る経過

イ 平成19年12月6日、翌年1月24日、一度和解が行われた。
原告側は、
・ 役員らは、連帯して、政治献金事件の寄付額(5900万円)及び課徴金1億6342万円を会社に返還する(しかし金額にはこだわらないと主張)。
・ 原告が推薦する外部委員を入れて会社の独禁法遵守マニュアルを見直すことが重要。
・ 政党支部への献金をやめること。
しかし、この段階では、被告側の考えとあまりにも隔たりがあり、和解打ち切り。

ロ 平成20年3月13日、終結と同時に職権和解勧告。
・ 平成20年3月13日、同年4月17日、同年5月16日、同年5月30日に和解が行われ、本和解に至った。
・ 和解金について、裁判所から4月17日付文書で、8800万円と勧告。


2 本和解にあたっての原告のスタンスと和解の意義

(1) 五洋建設を含むゼネコン業界の「独禁法遵守コンプライアンスプログラム」は、
【1】談合は個人犯罪 【2】談合をしている前提ではなく新たに談合に加担する前提 【3】したがって従業員に「研修、教育」をすれば談合防止になる、という視点で作成されている。この点に根本的欠陥がある。
 これに対し、原告は、本件裁判において、このような程度では「談合容認プログラム」であり、役員の「役員談合免責プログラム」であると反論した。
 原告は、談合防止プログラムには、最低限下記記載の調査項目が含まれているものでなければならず、そうでなければ有効な談合防止システムとはならないと主張した。

イ.発注機関ごとの公共工事発注状況の把握
ロ.業界(談合)担当者が出席した他の業者との会合連絡について報告書を提出させ、その内容の把握
ハ.応札価格について、応札の経過と応札金額の根拠を応札担当者から聴取
ニ.積算部門又は積算担当者から応札価格について積算したかどうかのチェック及び積算したときの応札価格の妥当性の聴取
ホ.各営業所、支店に対する営業部門との別部門を設置する等して、上記の関連部門、担当者らから定期的な調査ならびに事情聴取

(2) 今回、株主側と五洋建設との間で、五洋建設において「談合防止・コンプライアンス検証・提言委員会」(仮称)を設置することで合意した。同委員会には株主側の推薦する外部委員も参加し、再発防止のための新独禁法遵守マニュアルを作成した上で、会社に提言を行い、会社はその提言を尊重して実施することを約しました。

おそらくこれが出来れば日本の入札業界の独禁法遵守マニュアルのモデルとなろう。
原告側が推薦した外部委員は鈴木満教授である。
http://www.cc.toin.ac.jp/kika/2005J/suzuki.html

(3) 政治献金について
政党の都道府県支部連合会への献金の禁止(熊谷組の事件では敗訴している)

3 評価
五洋建設が上記3(2)を受け入れた以上、談合と本当に決別する覚悟を決めたという点を評価したい。また、問題の多い政党の都道府県支部連合会への献金をやめると決断された会社の姿勢を評価すべきである。




和解条項

1 被告らは、利害関係人五洋建設株式会社(以下、「五洋」という。)に対し、連帯して、平成22年6月30日限り、解決金8,800万円を支払う。

2 利害関係人五洋は、既にコンプライアンス委員会、杜内通報制度等の組織や仕組みを設け、独占禁止法遵守マニュアルを改訂し、従業員教育の徹底に努めるとともに、就業規則及び役員規程の改定により違反行為者に対する厳しい制裁規定を設け、入札関係書類の保管を義務付け、それら資料の確認や従業員に対するヒアリングによる社内監査を徹底する等、独占禁止法遵守のために取り得る種々の施策を講じてきたところであるが、今般、本件和解を契機として、改めて独占禁止法違反等の事件の再発防止に向けて、コンプライアンスの推進に全社を挙げて取り組む決意であることを表明し、更なる独占禁止法遵守体制の強化を推進する。その具体的行動として、利害関係人五洋は、同種の事件の再発防止を目的とし、原告の推薦する元公正取引委員会審判官1名を加えた「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」(仮称)を可及的すみやかに設置するものとする。同委員会は、再発防止のための新独占禁止法遵守マニュアルを作成し、おおむね1年を目途に利害関係人五洋に対し提言を行う。利害関係人五洋はその提言を尊重し、実施する。

3 利害関係人五洋は、第1項の金員を下記の費用に充当する。

ア 上記「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」(仮称)費用
イ 入札談合に関する通報制度等を担当する外部の専門家に委嘱する費用
ウ 談合防止のマニュアルの整備のための費用
工 職員の研修プログラムの充実のための費用
オ その他、談合防止を図るため利害関係人五洋が必要と認めた施策のための費用

4 利害関係人五洋は、今後、政党の都道府県支部連合会に対する政治献金及び政党の都道府県支部連合会が開催する政治資金規正法第8条の2所定の政治資金パーティにかかるパーティ券の購入をしない。

5 原告は、その余の請求を放棄する。

6 原告は、今後、利害関係人五洋の現在及び過去の取締役並びにこれらの相続人に対して、本件和解日以前に生じた事項に基づく株主代表訴訟を提起しない。

7 訴訟費用は各自の負担とする。



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