以下に、住友金属裏金使途秘匿事件の概要(原告主張整理メモ)を掲載します。

2009年1月25日
株主オンブスマン


平成18年(ワ)第6045号・平成19年(ワ)第7007号
原告 森岡孝二 他
被告 小島又雄 他

住友金属裏金使途秘匿事件の概要
(原告主張整理メモ)


2009年 1月19日     
大阪地方裁判所第4民事部合議B係 御中


原告ら代理人
弁護士 長野真一郎

弁護士 河野豊



 本事件ら(平成18年(ワ)第6045号事件の内の使途秘匿金事件、及び、この使途秘匿金の作出・支出の実行行為者であるKを懲戒解雇処分とせずに退職金を支払った平成19年(ワ)第7007号事件)における、原告の主張の概要は、下記の通りである。

第1 これまでの審理の中で明らかとなった事実
1 住友金属は、平成11年3月期から平成16年3月期までの6年間に、大分市にある設備工事会社の光和に対して、住友金属が受注した工事について光和を2次下請会社に組み込んだうえで1次下請会社に対する発注額を水増しする方法等によって、金34億5450万円を支払った。
 住友金属は、大阪国税局より、右支出額について使途秘匿金の認定をうけ、その結果、平成17年8月までに、法人税、追徴法人税、及び地方税として右使途秘匿金額の96.90%に相当する税額32億9460万円を負担・支出した。
2 この光和への支出は、
 (1)住友金属としては、本来支払う必要もなければ、(当然のことながら)法的に支払義務もないものを、発注額の水増しという方法によって、住友金属の有する資金を社外に流出させたものであること、及び、
 (2)(後記の通り、被告ら取締役の各自の加担・関与はあるけれども、逆に、被告らも自認する通り、)正式に取締役会の決議によって会社としての支出を承認したという事実も一切ないこと
からして、住友金属にとっては、右支出自体が損害である。この点は被告も争っていない。
 そして、この光和への支出が使途秘匿金として認定され、上記税額の負担・支出をさせたのであるから、右税相当額も、住友金属の損害である。
3 光和に流出した資金の使途については、以下の点が明らかとなった。
(1)被告らの主張によれば光和はこれを地元対策のために支出したというが、その具体的な使途は一切不明であること、
(2)逆に、報道によって明かとなっているのは、住友金属が自治体発注のプラント工事等の受注のために、自治体関係者に工作して非公表の最低制限価格を発注者側から聞き出すという、明確な犯罪行為(刑法96条の3 競売入札妨害罪)を行うための資金に使われていること、
(3)特に光和の社長が死亡した平成15年1月以降は、光和に入った資金5億9000万円がその後、住友金属の社員(K)に渡ったが、同社員による使途も一切不明のままであること。
4 この光和への計34億5450万円の支出を実行した者(実行行為者)は、住友金属の社員であるK及びIである。

第2 被告らの本事件への対応とその関与
1 被告らの主張によれば、K及びIは、被告らを含む住友金属の他の一切の者に知らせず、独断で、この光和に対する水増し発注を計画・実行してきたとのことである。
 しかし、その主張は、以下の通り、極めて不合理な主張であり、事実ではない。
(1)本件水増し発注は、6年間もの長期間、繰り返し実施され、その金額は、合計34億5450万円という巨額なものである。
(2)Kは住友金属の環境エンジニアリングの営業部門(環境エンジニアリング営業部)に属する社員であり、自治体等からの受注を業務とする。一方、本件水増し発注は、それとは別の部門である発注・調達部門によって実施されざる得ないところ、この発注・調達部門は住友金属のなかでは全くの別系統になっている(エンジニアリング事業本部の中の建設エンジニアリング事業部・エンジニアリング総括部・調達グループが担当)。上司も別であり、決済権限者も別である(乙19の2)。この点は、環境エンジニアリング技術に属するIについても全く同様である。 従って、別部門である発注・調達部門の決裁権限を有する責任者の承認・協力なくして、単に1回や2回の単発的な水増しではない本件のように巨額の水増し発注工作を、他の一切の社員の知るところなく、K及びIが実行し、それを6年間もの長期間、継続することは不可能である。しかも、右水増し工作は、ひとつのプラント・プロジェクト工事で実施されたのではなく、全く全国各地の住友金属の受注工事で行われたのであるから、これをKとIの2人の社員だけで計画し、失敗なく実施することは、なおさら、現実には不可能である。
(3)また、水増し発注による光和への支払は、直接光和に支払うものではない。1次下請け会社との間で内容虚偽の発注を行い(そのために、事前に水増し額を含む不合理に高い見積書を1次下請会社によって正式に作成提出させる必要がある。)、かつ、光和を右会社の下の2次下請に入れたうえで、全く実際の業務を行わない光和に対して1次下請け会社より水増し金を含む不合理に高額な支払わすという複雑かつ多数の関係者の関与する計画をたてたうえで、これを失敗することなく実行しなければならない。これ以外に、上記の住友金属社内での他の部門を巻き込んだ多数の社員・決裁権限者の関与が不可欠な複雑な工作を必要としている。このような複雑かつ多数の者の関与する水増し発注工作を、単に、住友金属の2人の社員による計画だけで、失敗なく、しかも、上記長期間繰り返し実行することは、およそ不可能である。
(4)K及びIが行った光和に対する水増し金額の支出は、被告らの主張によれば、上司ら幹部の承認を得ることなく、内容虚偽の見積書作成や査定を行わせた上で、本来支払う義務のない金額の水増し発注契約を住友金属に締結させて、同社より支払わせるというものである。これは、住友金属の社内規定に著しく違反するばかりでなく、詐欺罪に該当する歴然とした犯罪行為である(2次訴訟の退職金支払い事件の甲2参照)。
 被告の主張によればKらは私利私欲のためではなく会社のためにやったというのであるところ、そもそも、住友金属の社員であり、逆に社員でしかないK及びIが、このような住友金属の社内・社外の多数の者の手やそのチェックを経ることになる、極めて複雑な水増し発注工作とその実行を、発覚の危険や、それによって自らの人生に取り返しの付かない甚大な不利益=刑事処分及び社内処分をかえりみることなく、私利私欲とは無関係に、独断で実行し、かつ、それを6年間継続するという必要性が全くない。同人らにはこれについて、(被告の主張を前提とする限り、)一切の動機がない。この点について、被告らは何ら説明が出来ていない。
(5)そして、仮に、被告主張通りであれば、このような大規模かつ重大な違反行為を計画・実行し、その結果、34億5450万円のもの巨額な損害を住友金属に与えたうえ、社内調査において、その使途、特に自らが直接支出を行った5億9000万円についても一切説明を拒絶したKや、同人とともにこれを実施したIに対しては、直ちに懲戒解雇処分がなされるべきこと当然である。法令遵守を被告らが真に住友金属社員に励行・実施させる意思が本当にあったのであれば、それ以外の選択の余地はないはずである。
 ところが、被告らは、本件犯行が発覚後も、KやIを懲戒解雇することなく、原告らによる取締役会議事録提出の申立(その申立理由中に本件使途秘匿金問題が記載されている)がなされた後に、同人らを普通解雇処分として退職金を支払った上、住友金属の関連会社に就職させたのである。
(6)上記K・Iに対する極めて甘く寛大な処分を行い、及び、それによって他に影響が及ばないように、被告らは、事件発覚後の社内調査も、極めて不十分なまま打ち切った(使途は一切不明なままであり、かつ、何故このような部門を越えての大がかりな水増し発注・支払工作が、6年もの長期間、住友金属のなかで発覚しないまま継続・実行できたかについての解明もない)。
2 以上の被告主張を前提とする極めて不合理な事実は、K・Iの本件の水増し工事の発注工作とその実施が、被告らの「指示」・「承認」・「容認」のもとで、K・Iが実行行為者(「汚れ役」)としてなされたものであることを示している。
この点は、昨年より報道されている、西松建設による裏金作りと本質的に同じものである(裏金作りは会社トップの指示によるものであることが判明してきている。裏金は下請会社との架空・水増し発注を繰り返して行っている等。甲10〜15)。そうでなければ、そもそも、本件の如き巨額かつ長期間で複雑な裏金作りが計画・実施され、それが成功するはずがない。
3 被告らにおいて、そうでなく、「事件発覚まで一切Kらの行為を知らずこれを指示・承認・容認は一切していない。発覚後は法令遵守と再発防止のために、厳正な調査を徹底して行った」と主張するのであれば、事件発覚後の社内調査報告書が存在するのであるから、これを速やかに提出されたい。裁判所においても、この点についての訴訟指揮を行われたい。
また、本件使途秘匿金事件と退職金支払事件は、上記の通り、事案を基礎づける事実が全く共通であり、証拠の殆どが共通しているので、現在の主張整理の時点において、併合されたい。

第3 被告らの法的責任
1 裏金支出行為の特定
住友金属からの裏金の支出(光和に対する支出で使途秘匿金の認定をうけたもの)のうち、被告第5準備書面添付の「一次下請への支払金額及び国税局の認定に基づく光和向け金額」記載の各工事(A〜L)については、各1次下請との契約に基づく各請負代金の支払いが問題となる。
例えば物件Aについては、プラント機器製作の請負契約に基づいて連番1の業者に対し16億8000万円を支払った行為が裏金支出行為であり、その結果、そのうちの1億3335万円が光和へ流れたわけである。
これに対し、同準備書面添付の「発注者側に光和を介在させた物件」については、その物件に関して光和に発注した業者(光和の上流に位置する元請業者)から住友金属が受注した案件(他案件)の受注契約におけるダンピングであるが、その問題となる受注契約の詳細(元請業者名や受注金額等)は今のところ不明である。
2 裏金支出の違法性(住友金属に対する損害)
 光和に流れた裏金は各種工事の地元対策・受注工作に使われたというのが被告の主張であるが、その具体的な支出先は上記の通り全く不明である。
しかし、地元対策・受注工作に使う以上、その支出先は工事発注の権限を持つ者か、権限者に対する影響力を持つ者であることには間違いない。そして、国税局に摘発され、全国に報道された後にも明らかにできないということは、それを明らかにすれば罪に問われるからであると合理的には考えられる。仮に、真実、Kしか支出先を知らず、被告らがそれを聞き出せないということであれば、Kがその相当額を私的に流用した疑いも否定できない(上記西松建設の裏金の場合も、地元対策費に使われるとともに、実行行為者が私的にも流用しており、これが業務上横領として事件化されている。甲15、16)。
 いずれにしろ、本件裏金の支出には正当な目的が認められず、従って違法であり、住友金属に損害を与えたものであることには違いがない。
3 各被告の関与
 前述のとおり、本件裏金の作出・支出は、巨額かつ長期かつ広範囲に行われているから、KとIの両名だけで行われたとは到底考えられず、会社ぐるみであった。そして、被告らは、本件裏金の作出・支出について、指示・承認・容認をしていたのであるから、これは取締役としての善管注意義務・忠実義務に違反する。
 加えて、裏金作りの手段となった上記各下請発注契約、及び、光和が上流に介在した工事については、他案件の受注契約に決裁等によって関与した取締役(1件総額5億円以上は事業部長が決済)には直接の過失責任が、直接関与しなかった取締役には監視・監督責任が認められる。
 さらに、裏金を受注工作に使った物件については、その受注契約に決裁等によって関与した取締役には直接の過失責任が、直接関与しなかった取締役には監視・監督責任が認められる。
4 コンプライアンス体制構築について
 前述のとおり、本件のように長期間かつ大規模な会社財産の流出を見逃している以上、住友金属に求められる標準的なコンプライアンス体制が無かったことは明らかである。本件発覚後の調査内容(実際上、独自の調査は何もしていない)及びKら実行行為者に対する甘過ぎる処分内容からして、コンプライアンス体制の運用にも欠陥があったのであるから、コンプライアンス体制構築及び運用において各被告に善管注意義務違反が存在する。
5 秘匿金認定を免れなかった行為について
本件裏金の支出が大阪国税局に発覚し、同局から税務調査を受けたにもかかわらず、上記支出金の支出先及び支出目的を明らかにせず、使途秘匿金との認定を受けた行為についても、その決裁に関与した取締役には善管注意義務が認められる。
6 また、上記実行行為者であるKに対する調査を同人が一切その使途について説明しないままであるにもかかわらず、調査を打ち切り(終了させ)、かつ、同人を懲戒解雇処分とせず、退職金を減額のうえ支払ったことに関与した取締役については、同支払についても、善管注意義務違反がある。
以上



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