本会が10月下旬から行っておりました上場企業500社を対象とする政治献金の現状とあり方に関するアンケート(10月22日に調査の趣旨と質問票掲載)につきまして、その調査結果の概要と提言を以下に掲載いたします。

2009年12月26日
株主オンブズマン



上場企業の政治献金に関するアンケート調査結果の概要と
株主オンブズマンの提言


2009年12月26日
株主オンブズマン代表
森岡 孝二(関西大学教授)

I 調査目的と調査対象

 先の総選挙で民主党が圧勝し、政権交代が行われた。民主党はマニフェストで「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」と公約し、来年の通常国会で政治資金規正法の改正を目指す意向を表明している。また、こうした政治情勢を受けて、日本経団連は、政治献金の斡旋に際して2004年以降発表してきた同会の「優先政策事項」にもとづく自民党、民主党などの政策評価を今年は見合わせることになったと報じられている。
 そこで本会は、現時の政治情勢を踏まえて、上場企業500社を対象に、最近3年間に政治献金を行なったかどうか、また今後するかどうかを中心に政治献金の現状と在り方について緊急アンケート調査を実施した。

II 調査内容
1. 日本経団連の会員企業であるか否かについて
2.最近3年間の政治献金の有無について
3.政治献金を行なった理由について
4.政治献金を行わなかった理由について
5.民主党中心の三党連立政権のもとで政治献金をするか否かについて
6.これまでの献金先を変更するか否かについて
7.政治資金規正法の改正によって企業献金を禁止する必要の有無について
8.日本経団連による政党の政策評価にもとづく政治献金の斡旋について
9.政党の政治資金の望ましい在り方について
10. 企業による政治献金の現状と在り方について(自由記述)

III 調査期間と回答率

 2009年10月23日に「会社四季報プロ500」に採用されている500社に調査用紙を送付し、12月20日までに116社から回答を得た。回収率は23.2%であった。

IV 調査結果の概要

Q1. 貴社は日本経団連の会員企業ですか

日本経団連の会員企業である94社81.0%
日本経団連の会員企業ではない2219.0
その他00.0
回答116社 無回答ナシ

Q1・回答の図

 企業の政治献金は現状では日本経団連の斡旋と業界団体の要請に応じてなされていると考えられる。そこで最初に調査対象企業が日本経団連の会員であるかどうかを尋ねた。結果は回答企業116社のうち会員企業が94社(81%)、非会員企業が22社(19%)であった。

Q2. 最近の3年間に政治献金を行なったことがありますか。

献金を行なったことがある57社49.1%
献金を行なったことがない5850.0
その他10.9
回答116社 無回答ナシ

Q2・回答の図

 この質問では最近3年間(2007年〜2009年)に政治献金を行なったことがあるかどうかを尋ねた。「ある」と答えた企業は57社(49%)、「ない」と答えた企業は58社(50%)であった。ほかに「その他」と答えた企業が1社ある。電力は回答のあった5社のすべてが「ない」と答えている。
 経団連会員企業94社のうち、最近3年間に政治献金を「行なったことがある」と答えたのは56社(59.6%)で、37社(39.4%)は「行なったことがない」と答えている。また、非会員企業22社のうち20社(90.9%)は「行なったことがない」と答えている。結局、政治献金実施率は、経団連会員企業では6割であるが、非会員企業では1割にとどまる。

Q3. 2の質問で「ある」と答えた企業にお尋ねします。 政治献金を行なったのは主としてどんな理由からですか(複数回答可)。

適切な政策の立案と実行を期待して34社63.0%
企業の社会的責任の一環としての社会貢献のため3157.4
議会制民主主義の健全な発展のため2138.9
自由主義経済体制を維持するた1527.8
長年の慣行となっているため59.3
貴社もしくは業界団体の利益の実現に資するため35.6
寄附の要請を断ると業界団体で立場が不利になる恐れがあるため23.7
その他23.7
回答54社 無回答3社

 この質問ではQ2で最近3年間に政治献金を「行なったことがある」と答えた57社に対して、その理由を複数回答尋ねた。回答のあった54社のなかでは、「適切な政策の立案と実行を期待して」が34社(63.0%)で最も多く、政治献金は企業および業界にとって望ましい政策を政権党に求めるために行われてきたことが窺われる。以下、「企業の社会的責任の一環としての社会貢献のため」31社(57.4%)、「議会制民主主義の健全な発展のため」21社(38.9%)、「自由主義経済体制を維持するため」15社(27.8%)となっているが、これらはいずれも政権党への政治献金を正当化するための名目的理由とされてきたものといえる。

Q4. 2の質問で「ない」と答えた企業にお尋ねします。
政治献金を行わなかったのは主としてどんな理由からですか(複数回答可)。


政治献金はしない方針を貫いてきたため32社59.3%
企業が政治活動の資金を政党に寄附するのは望ましくないため916.7
政治献金の要請に応ずるのは現在の経営状態では難しいため713.0
その他611.1
政治資金規正法の規定により政治献金が禁止されている企業であるため59.3
回答54社 無回答4社

 この質問ではQ2で最近3年間に政治献金を「行なったことがない」と答えた58社に対して、その理由を複数回答で尋ねた。回答で最も多いのは「政治献金はしない方針を貫いてきたため」の32社(59.3%)である。これを「企業が政治活動の資金を政党に寄附するのは望ましくないため」と答えた9社(16.7%)と合わせると、最近3年間に政治献金をしたことがない企業のうち、4社に3社は、政治献金を明瞭に否定している。ほかに、「政治献金の要請に応ずるのは現在の経営状態では難しいため」と答えた企業が7社(13.0)、また「政治資金規正法の規定により政治献金が禁止されている企業であるため」と答えた企業が5社(9.3%)ある。なお、政治資金規正法では国から補助金を受けている企業や、3年継続して赤字の企業は政治献金ができないことになっている。

Q5. 過去の政治献金の有無に関係なくすべての企業にお尋ねします。
民主党中心の三党連立政権のもとで政治献金をするかどうかについてどのように考 えていますか。


しない43社38.1%
どちらともいえない3026.5
するかしないか検討する1210.6
しない方向で検討する119.7
する方向で検討する76.2
他社の動向を見て判断する54.4
その他32.7
する21.8
回答113社 無回答3社

Q5・回答の図

 この質問では民主党中心の三党連立政権のもとで政治献金をするか否かについて尋ねた。回答で最も多かったのは「しない」の43社(38.1%)である。「しない方向で検討する」の12社(10.6%)を合わせると、半数近くの企業が「しない」または「しない方向で検討する」と考えて答えていることになる。
 Q1では回答企業の半数の58社が過去3年間に献金をしていなかった。それと比べると、民主党政権下で政治献金を「しない」と答えた企業が43社、「しない方向で検討する」と答えた企業が12社で両方合わせても55社で、大差はない。このかぎりでは、新政権誕生にともなう変化はほとんど見られないとも言える。しかし、おなじくQ1で過去3年間に献金をした企業がほぼ半数の57社ありながら、民主党政権下でも「する」と答えた企業が2社(1.8%)にすぎず、「する方向で検討する」と答えた7社(6.2%)を合わせても、9社(8%)にとどまる。この点を考慮すると新政権誕生の影響は大きい。また多くの企業が模様眺めをしていることも、新政権誕生の影響を物語るものである。

Q6. 5の質問で「する」または「する方向で検討する」と答えた企業にお尋ねします。これまでの献金先を変更されますか。

どちらともいえない7社50.0%
その他321.4
変更せず、これまでどおり自民党・国民政治協会に214.3
変更し、民主党・国民改革協議会に  
自民党・国民政治協会を主に、民主党・国民改革協議会にもいくらか214.3
民主党・国民改革協議会を主に、自民党・国民政治協会にもいくらか  
自民党・国民政治協会と民主党・国民改革協議会にほぼ同額  
回答14社

 この質問では民主党中心の3党連立政権のもとで政治献金を「する」または「する方向で検討する」と答えた企業9社に対して「献金先を変更する」か否かを尋ねた。回答対象企業数9社と実際の回答企業数14社は一致していない。
 回答企業数14社では、「どちらともいえない」が7社(50%)、「その他」が3社(21.4%)であった。献金先を「変更せず、これまでどおり自民党・国民政治協会に献金する」はわずか2社(14.3%)しかなかった。「自民党・国民政治協会を主に、民主党・国民改革協議会にもいくらか献金する」も社(14.3%)にとどまった。 回答対象企業の9社にかぎれば、「変更せず、これまでどおり自民党・国民政治協会に献金する」が2社(22.2%)、「自民党・国民政治協会を主に、民主党・国民改革協議会にもいくらか献金する」が1社(11.1%)、「どちらともいえない」が5社(55.6%)、「その他」が1社(11.1%)である。

Q7. 民主党は政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体献金及びパーティー券購入を禁止するという政策を掲げていますが、法改正によって企業献金を禁止する必要があると考えますか。

どちらともいえない79社70.5%
禁止する必要がある2017.9
禁止する必要はない87.1
その他54.5
回答112社 無回答4社

Q7・回答の図

 この質問では民主党の公約である政治資金規正法の改正による企業献金の禁止について、その必要があるか否かを尋ねた。回答で最も多いのは「どちらともいえない」の79社(70.5%)である。これから、現時点では大多数の企業が態度を決めかねているか、態度を表明することを保留していることがわかる。しかし、そういうなかでも、20社(17.9%)が「禁止する必要がある」と答えている。その一方、「禁止する必要はない」と答えた企業は8社(7.1%)にとどまる。

Q8. 日本経団連による優先政策事項に照らした政党の政策評価にもとづく政治献金の斡旋についてどのように考えていますか。

どちらともいえない75社 67.0%
やめたほうがよい2017.9
つづけたほうがよい1210.7
その他54.5
回答112社 無回答4社

Q8・回答の図

 この質問では日本経団連による政党の政策評価にもとづく政治献金の斡旋についてどのように考えているかを尋ねた。Q7の回答と同様に、「どちらともいえない」と答えた企業が大多数の75社(67%)を占めた。注目されるのは「やめたほうがよい」と答えた企業が20社(17.9%)に上る一方で、「つづけたほうがよい」と答えた企業は12社(10.7%)にとどまることである。Q7で政治献金を法律で「禁止する必要がある」と答えた20社のうちで、経団連による政策評価にもとづく政治献金の斡旋を「やめたほうがよい」と答えた企業は半数の10社である。他の10社は経団連の斡旋については「どちらともいえない」を選択している。

Q9. 今後、政党の政治資金は何によって賄われるのが望ましいと考ますか。

党費と個人献金と政党助成金58社55.8%
党費と個人献金と政党助成金と企業・団体献金2322.1
その他1211.5
党費と個人献金1110.6
回答104社 無回答12社

Q9・回答の図

 この質問では、政党の政治資金は何によって賄われるのが望ましいと考えているかを尋ねた。回答数104社のうち、最も多いのは「党費と個人献金と政党助成金」と答えた58社(55.8%)である。その一方で、企業・団体献金を肯定して「党費と個人献金と政党助成金と企業・団体献金」と答えた企業が23社(22.1%)ある。これはQ7で政治献金を法律で「禁止する必要はない」と答えた8社、およびQ8で「政党の政策評価にもとづく政治献金の斡旋について「つづけたほうがよい」と答えた企業12社より多い。企業・団体献金も認める23社のなかには、Q7およびQ8で「どちらともいえない」と答えた企業の一部が含まれている。「党費と個人献金」が望ましいと答えた企業の11社(10.6%)は、政党助成金も企業・団体献金も望ましくないと考えられる。

Q10. 企業による政治献金の現状と在り方についてなにかとくにお考えがあれば自由にご記入ください。

 この質問では、最後に企業による政治献金の現状と在り方について自由記述を求めた。記述があった3社は、それぞれ「基本的に企業による政治献金は禁止したほうが良い」、「政治献金をやめる方向で検討したい」、「当社では政治献金等を行なったことがなく、Q7〜Q9はご回答しませんのでご了承願います」と書いている。


V 2004年の調査結果との比較

 株主オンブズマンは2004年にも上場企業の政治献金の現状と考え方についてアンケート調査を行なった(参照)。このときの調査は、日経225社を対象に実施し、94社(41.8%)から回答を得た。今回は会社四季報プロ500社を対象に実施したので一律には比較できないが、ここでは特徴的な違いをいくつか見ておく。
 日本経団連への所属については、04調査では会員企業95%、非会員企業4%であったが、今回の09調査では会員企業81%、非会員企業19%となっている。過去3年間の政治献金の有無については、04調査では「ある」が66%、「ない」が30%、その他および無記入が1%であったが、09調査では「ある」が49%、「ない」が50%、その他が1%である。
 政治献金を行う理由については04調査と09調査とでは目立った違いはない。他方、行わない理由については、「政治献金はしない方針を貫いてきたため」が46%から59%に増えている。また「企業が政治活動の資金を政党に寄附するのは望ましくないため」が7%から17%に増えている。
 今回と同じ質問をした「望ましい政治資金の在り方」については、「党費と個人献金と政党助成金」が32%から56%に、また「党費と個人献金」が4%から11%に増えている。その反面、「党費と個人献金と政党助成金と企業・団体献金」は、40%から22%に減っている。
 これらの変化は総じて先の総選挙の結果、政権交代があったことを反映していると考えられる。


VI 政治献金の廃止を求める提言

 株主オンブズマンはかねてから企業の政治献金は、憲法上は個人にのみ認められている参政権を法人に認めることによって政治を歪めるだけでなく、産業界と政界の癒着を招き、政治腐敗の温床にもなってきたとして、その廃止を求めてきた。その立場から、今回のアンケート調査の結果を踏まえて、以下の諸点を提言する。
  1. 日本経団連は、2009年9月13日付けの本会の申し入れにも述べたように、総選挙による政権交代で生まれた新しい政治情勢を踏まえて、政治献金およびその斡旋をやめる。また、優先政策事項をもとに政党の政策評価を行い、それをもとに会員企業に対して特定政党への政治献金を求めることもやめる。

  2. 民主党は「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」(マニフェスト)という選挙公約を守り、来る通常国会で政治資金規正法の改正を実行する。その内容については政治資金オンブズマンが発表している「政治資金規正法改正案」(PDFファイル)を参考にする。

  3. これまで国民政治協会を通して自民党に政治献金を行ってきた企業は、政権交代後の政治情勢を踏まえ、自民党への献金を中止するだけでなく、今後一切の政治献金を廃止する。
追記: 今回の株主オンブズマンによる上場企業の政治献金アンケート調査にご協力いただいた企業にたいして、この場を借りてお礼申し上げます。


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