大和銀行株主代表訴訟の大阪地裁の判決について

                                                 株主オンブズマン
                                                    代表  森  岡  孝  二

1 賠償額について
    これだけの巨額の賠償額を命じたのは初めてである。
    平成8年6月20日、東京地裁が、日本航空電子事件で12億4752万円を命じたのが、今までの
  最高額であった。

2 甲事件について
    甲事件とは、取締役の一従業員が不正行為を繰り返して会社に巨額の損害を生じさせているのに、そ
  のリスク管理を怠ったとして取締役に損害賠償が求められたケースである。これに対し、本判決は、
  危険な取引についての十分なリスク管理を直接の担当取締役は怠ってはならない旨命じた判決である。
  従業員の違法行為を知っていてそれを放置していた場合ならともかく、従業員の違法行為を知らなか
  ったのにその取締役にも責任を認めた点は、商法改正後(平成5年10月)、初めてであると思われ
  る。従来は、従業員の違法行為を知らなかったら免責されると一般に解されていたからである。
  総会屋への利益供与等、部下がやったから知らなかったという弁明は、少なくとも担当取締役につい
  てはその責任が免除されないという先例となろう。日本の取締役の無責任さを厳しく批判した点で評
  価できる。

3 乙事件について
    乙事件とは、従業員の違法行為を知った取締役らが2ヶ月間アメリカの当局に報告しなかったことに
  より、アメリカ当局から3億ドルの罰金が大和銀行に課せられた事件である。
   乙事件の場合、取締役は2ヶ月間、本件をアメリカに通知しないということについて知っていた点
  において、甲事件とは異なる(日本航空電子事件の例と同一である)。
   しかし、2ヶ月間アメリカ当局への報告が遅れたことにやむを得ない事由があり、被告は経営判断
  の抗弁を出している。
   しかし、本判決は、法令遵守(コンプライアンス)は経営の最も重要な事実であり、法令を遵守す
  ることに取締役の裁量性がないと断定した。
   わが国の取締役は、コンプライアンスについて極めて無責任体質が存在する中で、本判決は、取締
  役に対する重大な警告判決となろう。 

4 株主代表訴訟とコーポレートガバナンス
     わが国の取締役に対する商法上の機関(株主総会、監査役、監査法人)は全く機能せず、労働組合
  もチェック機能を喪失している。
   ハザマ、高島屋株主代表訴訟等と続き、取締役をチェック出来るのは株主代表訴訟であるというこ
  とを改めて、しかも巨額の賠償額を命じることにより示した判例といえる。

5 商法改正の動きに反対する
     株主代表訴訟の改悪の動きが、自保公政権の中で今図られようとしている。
    やっと、育ちかけてきた株主代表訴訟を改悪することは、旧来の取締役の無謀専断を復活させる役
  割にこれらの商法改正は加担することになるので、直ちに中止すべきである。