住友銀行株主総会決議取り消し訴訟(000927-1)

株主オンブズマンでは、2000年6月の住友銀行株主総会を前に、同行の株主に(役員の報酬と退職
慰労金の個別開示)を求める株主提案を呼びかけました。その結果71名(総株数40万8千株)の
委任状が寄せられ、6月29日の株主総会の議案として提出致しました。
総会開催通知書と併せて、住友銀行が全株主に送付した議決権行使書には、この株主提案と会社提案を
含め、総会で付議する8議案が記載されていましたが、それぞれの議案に対する意思表示として、『賛』
または『否』を記入する欄のみがあり、白票(無記入)の場合は、会社提案は『賛』、株主提案の議案
は『否』の表示があったものとして扱うと記載されていました。

 結果は、各議案の議決は白票が大多数を占め、会社提案は可決、株主提案は否決されました。
同じ白票でも会社提案と株主提案の議案とで扱いを変えるのは不公平であるとして、9月26日当会の
会員で同行の株主2名が住友銀行を相手に総会決議の一部取り消しを求め、大阪地裁に提訴しました。
以下は訴状の全文です。

                     訴     状


    当事者の表示−別紙のとおり


       二〇〇〇年(平成一二年)九月二六日

              
大阪地方裁判所 御 中

                      請  求  の  趣  旨

一、被告の二〇〇〇年(平成一二年)六月二九日の第一五六期定時株主総会における別紙総会議案目録
   (一)(二)記載議案の決議を取り消す。
二、訴訟費用は被告の負担とする。
    との判決を求める。

                      請  求  の  原  因

一、当事者
   原告は、いずれも被告会社の株式を一〇〇〇株以上保有する株主である。
   被告は、銀行業を目的とする資本金七五二八億四八六三万二四〇〇円の株式会社である。

二、被告会社の株主総会と株主提案
  1 被告会社は、二〇〇〇年(平成一二年)六月二九日、第一五六期定時総会を開催した(以下、本総
    会という)
  2 被告会社の取締役会は、本総会に、第一号議案乃至七号議案を提案した(請求の趣旨記載の総会議
    案目録(一)は七号議案である)。
  3 他方、被告会社の株主七一名(持株総数四〇万八〇〇〇株)は、本総会において、商法第二三二条
    の二の株主提案権を行使して、別紙総会議案目録(二)記載の議案を提案した(本総会では八号議案と
    なった)。(甲一号証)

三、被告会社の議決行使書面における白票の取扱い
  1  被告会社は右定時株主総会招集通知と同時に全議案に対する議決権行使書面を株主に郵送した(甲
    二号証の一、二)。
    右議決権行使書面において、全議案について保留・棄権欄は設けられず、取締役会提案議案である
    第一号から第七号までの議案についての白票は賛と扱う旨、一方株主提案議案である第八号議案につ
    いては否と扱う旨、それぞれ右書面に記載して送付した。
 2 本総会では右取扱いに従って採決を行った。その結果、取締役会提案は「可決」され、株主提案は
   「否決」された。
  3 しかし、原告らが、総会終了後、議決権行使書を閲覧謄写したところ、各議案の七〇〜八〇パーセ
    ントは白票であった。白票に対する取締役会の不公正な処理により、本総会では、取締役会提案は「
    可決」され、株主提案は「否決」された。

四、保留・棄権の意思表明を認めない議決方法は、決議において著しく不公正であり、取り消しされるべ
  きである。
  1 株主総会は、株主が保有株数に基づき投票権を有する民主的会議体であり、株式会社の意思決定に
  おける最高機関である。
  株主は各議案の議決にあたり、賛、否の意思を表明するとともに、各議案ごとに対して賛否の意思が
  未だ形成されていないときは、賛否の意思を保留・棄権する自由が認められるのは会議体の意思形成
  の原則からして当然である。
   従って、被告会社としては、賛否欄と同時に保留・棄権欄を右行使書に記載し、且つ白票は保留・
  棄権として取り扱うことにして、株主に各議案への意思を問うべきであった。
   しかるに、被告会社は議決権行使書に保留・棄権欄を設けず、更に白票については前記三1のとお
  り採用したことは、著しく不公正な決議方法となり、商法第二四七条の決議の取消事由となる(但し、
  原告が取消を請求する議案は別紙総会議案目録(一)(二)記載の議案にとどめる)。

 2 我が国経済の国際化に伴い、外国の投資家が我が国の閉鎖的株主総会に対しても種々の要求を開始
  し始めた。又、企業の株主総会も二一世紀に向かって変わろうとしている。
   ちなみに、カルパースというカリフォルニア州公務員退職年金基金(我が国のコーポーレート・ガ
  バナンス委員会に重大な影響力を有している)が、対日コーポレート・ガバナンス原則を二年前に公
  表した(甲三号証)。なお、カルパースは、我が国だけでなく、ドイツ、イギリス、フランス等にも
  コーポレートガバナンスの原則を要求している(甲四号証)。
   この中で、退職慰労金等の情報の株主への開示をはじめ株主総会での株主議決権の行使に関して、
  我が国の企業が厳正な集計をしていないとの懸念を示し、前記のとおりその改善策として棄権制度等
  の導入の要求をしている(甲三号証、5、A、B)。我が国の議決権行使書には、棄権という欄を企
  業が意図的に設けず、その上、白票を取締役会提案に「賛成」として集計しているからである。
    本株主総会において、外国の機関投資家をはじめ外国法人の圧倒的多数は、本議決書に対し、自ら
  賛否、棄権という欄を作り、同議決書を行使している(甲五号証)。
  3 以上のとおり、本議決権行使書は、株主総会における株主の意思を正確に反映させず、且つ、グロ
  ーバルスタンダードの基準にも合致しない決議方法であるから、商法二四七条一項一号に該当する。

五、株主提案につき取締役会提案とは白票の取扱いを異にしたことは著しく不公正な決議方法であり、決
  議取消事由となる
  1 被告会社は、既述したとおり、議決権行使書面において賛否の記載のないときは、取締役会提案(
  右書面には会社提案とあるが不正確であり、株主の賛否の意思形成を誤導する記載である)について
  は賛、株主提案については否として処理して集計し、決議した。
    民主的会議体においては提案者が誰であるかを問わず、適法に提案された議案についてはその議決
  にあたり平等に取り扱うのが当然のルールである。少数派の株主からの提案であろうと、その議決に
  あたっては多数派の株主の提案と同様に取り扱うべきである(例を挙げれば、国会議決において、政
  府提案と議員提案とにつき、議決について白票の取扱いを別異に扱うことができないことと同様と考
  えることができよう)。
    議案の決議につき異別の扱いをしたことは、取締役会提案については白票を賛と扱うことによって
  賛成の議決数を、株主提案については否と扱うことによって反対の議決数を、それぞれ恣意的に増や
  すことを企図したものである。
  2 ちなみに、被告会社の取締役会提案は圧倒的多数で可決されたとしているが、実態はそのうちの七
  〇〜八〇パーセントは白票であり(甲六号証)、真に「賛」に○をつけている株主は二〇〜三〇パー
  セント弱である。
   逆に、株主提案が圧倒的多数で否決されたと処理されたが、しかし、積極的に「否」に○をした株
  主は少数であり、七〇〜八〇パーセントの株主は白票である。
      以上のとおり、白票を不公正に処理した結果、取締役会提案は「可決」され、株主提案は「否決」
  されたに過ぎないものである。
  3  以上、株主提案である第八号議案について、取締役会提案と同じ扱い、賛否の記載のないものを賛
  として扱わなかったことは、著しく不公正な決議方法に該当し、第八号議案の議決には取消事由が存
  在する。

六、結論
   よって、原告らは被告会社に対し、請求の趣旨記載の判決を求めて本訴に及んだ。

                          証  拠  方  法

 一、甲第一号証             定時株主総会招集通知
 二、甲第二号証の一〜二     原告らに対する議決権行使書
 三、甲第三号証             カルバース対日コーポレートガバナンス原則
 四、甲第四号証             「コーポレートガバナンスの展開、株主と経営者の攻防」と題する論文
 五、甲第五号証の一〜七     全議案に白票を投じた大企業の議決権行使書の一例
 六、甲第六号証の一〜一〇   各議案に対し、棄権欄を設けて投票した外国法人等の議決権行使書の一例

添  付  書  類
  一、甲号証(写)                                 各一通
 一、委任状                     各一通
 一、商業登記簿謄本                  一通

◆住友銀行関連情報索引へ戻る。