住友商事株主代表訴訟の和解について
                                       2001(平成13)年3月15日
                                     弁護団(代表 松丸正 外29名)

1 (本件代表訴訟の契機)
 (1) 今回の株主代表訴訟は、1996年(平成8年)6月の株主総会で会社が十分説明しなかったことが発端である。
          取締役が説明責任を尽くしておれば、おそらく今回の代表訴訟の提訴には至らなかった。
                                              
 (2) その為に原告は1996年(平成8年)9月、株主総会決議取消訴訟を提訴した。  
     他方、翌年の株主総会には株主オンブズマンの森岡代表をはじめ原告らが出席し、株主総会の改革を要求し続けた。
     会社も1997年(平成9年)6月の株主総会からは開かれた株主総会に改革すべく努力した。とにかく株主の質
          問があれば何時間でも説明するという態度に変わった。この総会の中で役員報酬(退職金を含む)の開示を要求し
          続けた。
                                                    
 (3) 今回の交渉の過程の中で、会社が株主総会等を別紙の会社見解のごとく改革すると社会に対し宣言することの合意に
     至った。私達はこの改革について100%賛成できるものではないが、我が国の閉鎖的企業が多数存在する中で、会
     社が1歩でも2歩でも透明性のある企業に向け歩んだことを評価する。今後とも会社がより一層、退職金等の個別開
     示を含む情報開示に向けて努力されることを願ってやまない。                 

2 (株主代表訴訟の経過)
 (1) 1997年(平成9年)4月8日大阪地裁に提訴、被告より担保提供の申立があったが、取下になり、同年7月2
          日から審理が開始された。
     私達はこの間、取締役会議事録、会社の社内の文書等の提出命令の申立をしてきた。更には浜中刑事記録等を精査
          する等手続を進めてきた。
     この間合計28回の口頭弁論、弁論準備手続等を実施した。

 (2) この審理の過程の中で判明したことは浜中の違法行為に対し取締役が積極的に加担したり、又は浜中の行為を明示
          又は黙示で承認している事実(証拠)を発見することが出来なかった。
     この間、取締役らが浜中の行為を見逃したという善管注意義務違反を怠った可能性が見られるけれども、取締役の
          コンプライアンス(法令、倫理遵守)違反の事実の確認まで至らなかった(提訴前は株主総会を強行して突破する
          ことから見て、取締役が関与している疑いがあるとの疑念を株主に与えた)。
     取締役のコンプライアンス違反がないとなると後は取締役の「過失」をどう見るかということになった。

3 (株主代表訴訟の限界)
 (1) 株主代表訴訟は会社の損害を回復する為に取締役の責任を追及する訴訟である。取締役の責任の追及の結果、会社
          に二次損害が生じる場合は株主代表訴訟を遂行するかどうか意見が分かれる。
     コンプライアンスにかかわる事項で取締役の責任追及が行われる場合は、一会社の問題でなく、社会に影響ある問
          題なので、取締役の追及は必要である。その結果、会社に二次損害が生じてもそれは社会からみて必要である。
          しかし、コンプライアンスの問題でなく、通常の取締役の注意義務違反の結果、会社に損害を与えた株主代表訴訟
          の場合に、その損害賠償の追行過程で二次損害が会社に生じるとすれば、それは株主代表訴訟の持つ矛盾にぶつかる。
     会社の為に取締役の責任を追求しているのに、その結果、会社が二次損害を受けるという矛盾である。

 (2)  (二次損害の危険性、可能性)
     会社は、今アメリカ、イギリス等外国での損害賠償請求の裁判の当事者となっている。本件裁判を追行していった
          結果、取締役の責任は肯定されたが、しかしその結果、会社に二次損害が生じるとすれば、それは株主の意図する
          ものとは違った結果を生み出す。
                                   
4 (和解の経過)
     和解交渉は裁判官の和解勧奨により昨年11月から開始された。もちろん和解が成立しない場合の原告側の主張、争点
      整理も併行して進行してきた(争点は絞りきれた)。そして、本日別紙和解条項のとおり最終合意に至った。

5 (被告との金額の和解)
      退職金は原告の推定だと8億6千万円位(税込み)となる。被告に法的責任か経営上の責任かはともかく、責任がある
      以上は、その半額を返還すべきと要求していた。
      会社が受けた損害の2800億円という事実に照らすと、損害が補填される金額ではないが、何十、何百億円を要求し
      ても支払能力の点から見て不可能なことは明白であった。むしろ、弁護団としては現実的可能性を本和解で追及した。
      これに対し、被告ら及び会社からは、和解による早期解決を図ることに異論はないが、米英では法的責任の所在につい
      て触れないで和解することが通例であり、これと異なる方式で和解すれば、米英等で係属している会社を当事者とする
      訴訟等において、被告らが法的責任を自認したと扱われ兼ねない虞がある旨の説明があった。このような和解交渉の経
      過の中で、原告としては、4.3億円という金額から見て、被告の取締役らが遺憾の意を表明し、責任を感じ、返却される
      ことになったので、上記株主代表訴訟の性格から見て、和解することになった。

6 (本裁判の今後への期待)
 @  法的責任ではなく、従業員の違法行為でかつ会社のトップが直接関与していないケースでも経営上の責任を認め、相当
      額の金額を返還したことは今後の先例になろう。このような損害が会社に発生することはあり得ることであると自戒し、
      それを阻止する為の万全の対策を取締役は 措置する責任が存在することになるからである。

 A 不幸にして会社に巨額の損害が発生した場合、取締役がどのように対処し、かつ株主、社会に対しアカウタビリティー
      を示すかが重要であると思われる。
      今回、原告が株主総会で質問したがそれが殆どシャットアウトされ、シャンシャン総会で終了した。
   しかし、株主、社会に対し説明責任を果たさなかった結果が今回の株主代表訴訟を招いたことについて、会社の取締役
      は株主等へのアカウンタビリティーの重要さを自覚して頂きたい。

 B  住商は1997年からの株主総会を改革し、更に今回、役員の報酬開示等に部分的であるが踏み切ったことも、ささや
      かではあるが今後の株主総会を改革する先例となることを期待する。

会社見解
本日大阪地方裁判所平成9年(ワ)第3374号株主代表訴訟事件が和解によって解決したことに関連して、会社は会社の定時株主総会(以下
[総会]という。)の招集及び運営に関し、次のとおり見解を明らかにする。
1.会社は今後とも株主の負託に応えるため、適切は総会運営に注力する。
2.会社は前項の目的を達成するため、今後の総会運営について以下の条項を実施する。
  @総会の招集通知を会日の3週間前までに発送すること
  A総会の招集通知には日本文のほかに英訳文を作成すること
  B総会に取締役又は監査役の退職慰労金を支給する議案を提出するときは、対象となる取締役・監査役ごとに予定支給額を総会で開示
    すること。
  C総会に取締役及び監査役(以下[役員]という。)の報酬に関する議案を提出するときは、総会において、役員(社外を除く)に対する予定
    支給総額、最も高額な報酬を受ける者に対する予定支給額及び全役員に対する予定支給額の平均額を開示すること
  Dインターネットのホームページに定時株主総会の招集通知及び営業報告書並びに中間報告書の全文を日本語及び英語の両方で掲載
    すること
                                                   2001年3月15日
                                                   住友商事株式会社」
                                                   取締役社長 宮原賢次 

和解条項

1 被告秋山富一、同A、同B、同C、及び同Dは、濱中泰男による銅の不正取引に関し、利害関係人が多額の損害を被ったことに遺憾の意を
  表し、これの回復に充てるため、法的責任を認めることなく、連帯して和解金4億3000万円を、平成13年4月末日限り、利害関係人に対し
  支払う。

2 原告は、被告亡E訴訟承継人に対する本件訴えを取り下げ、同被告らはこれに同意する。

3 原告は、被告亡E訴訟承継人を除く被告らに対するその余の請求をいずれも放棄する。

4 訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする。
                                                        以上


住友商事関連情報 index へ戻る (file010315)