熊谷組株主代表訴訟事件  


訴     状 


           当事者の表示 − 別紙のとおり
           請求の趣旨  −  別紙のとおり
           請求の原因  − 別紙のとおり


           証   拠   方   法 
   意見書                                     1通


           添   付   書   類 
1  意見書                                          1通
1 委任状                     1通
1 商業登記簿謄本                 1通



          2001年6月26日

            原告訴訟代理人
              弁護士(代表) 松   丸    正


福井地方裁判所  御 中


当事者の表示 


                    原 告 

〒590-0077  堺市中瓦町1丁4−27 小西ビル6階 
                              堺法律事務所    
                              TEL 0722−32−5188
                              FAX  0722−32−5455
                        上記原告訴訟代理人
                                弁護士  松   丸       正
                                          外別紙代理人目録記載のとおり

〒162-0856    東京都新宿区市谷甲良町1番3号
                被 告  熊   谷   太 一 郎

〒180-0004    東京都武蔵野市吉祥寺本町3丁目10番12号
                同    松   本   良   夫

〒228-0802    神奈川県相模原市上鶴間2603番地1
                  サンヴェール町田グランデュール606号室
                同    鳥   飼   一   俊


           請求の趣旨 

1 被告熊谷太一郎は、訴外株式会社熊谷組に対し、金4984万6000円、被告松本良夫は
、訴外株式会社熊谷組に対し、金3699万7000円、及びこれらに対する本訴状到達日の翌
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告鳥飼一俊は、訴外株式会社熊谷組の代表取締役として、政党、政党の支部、政治資金団
体に対し、寄附をしてはならない。
3 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決並びに1項及び2項につき仮執行宣言を求める。

           請求の原因 

【目 次】
はじめに                              
第1 当事者                             5頁
第2 本件政治献金                          5頁
第3 企業の政治献金の特異性                      6頁
第4 八幡政治献金事件とその批判                                  10頁
第5 八幡政治献金事件以降の政治献金に関する最高裁判決の検討     18頁
第6 本件政治献金は公序に反するものである             24頁
第7 本件政治献金は権利能力の範囲外の行為である                   26頁
第8 本件政治献金は公職選挙法199条1項に違反する              29頁
第9 本件政治献金の一部は政治資金規正法22条の4第1項に違反する 32頁
第10 本件政治献金は取締役の善管注意義務違反である         36頁
第11 差止の必要性                         41頁
第12 結論                                                    42頁






  

はじめに
八幡製鉄政治献金最高裁判決(1970年6月24日民集24巻6号625頁、以下「八幡
製鉄政治献金最高裁判決」と略す)は政治献金が社会通念上、期待、要請される行為である
とする「政治献金奨励判決」を出して、30年以上が経過した。
 上記判決後、心おきなく企業はその「効用」に期待し、また、金権にまみれた政党、政治
家は、企業のための政治をしているのであるからそれを当然のこととして要請した。
  リクルート事件や一連のゼネコン汚職事件はその中で生まれ、その被告人らは例外なく、
政治献金であると弁解した。
 限りなく「クロ」に近い政治献金の横行が、政治腐敗を生み出し、政治がゆがめられた。
また、政治献金により国の意思形成が左右されかねない状況が続き、国民の参政権が侵害さ
れてきた。八幡政治献金時期とここ数年の時代、政党、国民の意識が大きく変わった。
 政治献金は企業の正常な活動ではないし、又、企業献金は本来的には禁止されるべきもの
である。
 ある学者は「西洋の諺に『笛吹きに金を与える者が曲目を決定する』というのがあるそう
である。会社の政治資金寄附についてもこの常識から出発することが肝要である」と述べて
いる(明大論叢第63巻2・3号三枝一雄「会社のなす政治献金」論について)。
 今、この常識から出発するかどうか企業も問われている。また、司法も問わている。
 裁判所の適正な判断を求めたい。


第1 当事者
 1 訴外株式会社熊谷組(以下、「訴外会社」という)は、建設土木業を目的とする資本
     金334億1162万6150円の株式会社である。
 2 原告は、2001年2月7日(同年2月8日送達)、本件についての提訴請求をする
     6か月以上前から訴外会社の株式1000株以上を有する株主である。
 3 (1) 被告熊谷太一郎(以下「被告熊谷」という)は、1978年から1997年11
          月まで、訴外会社の代表取締役社長であった。
   (2) 被告松本良夫(以下「被告松本」という)は、1997年11月から2000年
          9月まで、訴外会社の代表取締役社長であった。
   (3) 被告鳥飼一俊は、2000年9月以降、訴外会社の代表取締役社長である。

第2 本件政治献金
 1 訴外会社の政治献金
   訴外会社は主として政権党の政治団体に対し、従前から巨額の政治献金を続けていた。
     1976年(昭和51年)から1999年(平成11年)までの間の国民政治協会への
     献金額は6億3000万円余になっている(別表T)。
   被告熊谷、同松本は、訴外会社の代表取締役社長にそれぞれ在任中、その代表取締役と
     して、次のとおり財団法人国民政治協会に対し、政治献金を行なった
    1996(平成8)年  1月22日                275,800円
                          3月14日            1,000,000円
                          5月10日                600,000円
                          5月29日     11,760,000円
                          5月30日       7,056,000円
                        9月13日            5,000,000円 
                                     合計   28,174,000円

    1997(平成9)年  2月10日            3,000,000円
                          2月13日          11,670,000円
                          9月14日            7,002,000円 
                                     合計   21,672,000円 

    1998(平成10)年  3月30日         18,672,000円
                          3月19日           2,000,000円 
                                      合計   20,672,000円

    1999(平成11)年  4月 8日                 24,000円
             9月13日          16,277,000円
                        12月29日                  24,000円 
                                      合計   16,325,000円

  (なお、訴外会社の政治献金額は、国民政治協会以外の政治団体にも献金しているが、金額
     も比較的少なく、かつ継続的でもないので本件訴訟ではこの献金を対象とする。)
 2 本件政治献金のプロセス
(1) 本件政治献金の具体的手続は、自民党又は国民政治協会の担当者から、訴外会社も所属
     する日本建設業連盟(日建連)に要請があり、日建連として建設業界としての寄附総額、各
     社の「目安額」を決め、それを各社に伝達し、各社で相談して国民政治協会に具体的に寄附
     することになっていると伝えられている。
(2) 日建連加盟企業の1995年(平成7年)から1999年(平成11年)までの間に国民
     政治協会へ献金した金額は別表(U)のとおりで年間4.4億円から6億円である。
 3 企業の献金の大半の最終支出先は国会議員一人一人への組織活動費と消えている
   国民政治協会が自民党に献金している額は別表(V)Aのとおり年間48億円から約75億
      円である。
   自民党の収支は別表(V)のとおりとなっており、企業献金の大半は国会議員の一人一人の
     組織活動費に支出されている(別表(V)の3)。国会議員がこの金を何に使っているのか
     全く不明である。
 4 本件政治献金の理由
      訴外会社は政治献金する理由を「資本主義・市場主義経済・自由主義経済体制等を守る為に
      は企業の応分の負担が必要」等と説明している(但しマスコミ報道)。

 

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