市民株主運動の日韓交流−−韓国、参与連帯・経済民主化委員会を訪ねて


株主オンブズマン(KO)は、夏の研修合宿を兼ねて、韓国の参与連帯(PSPD)の小額株主運動部会であ
る経済民主化委員会(PEC)と交流する目的で、この8月1日から3日にかけてソウルを訪問しまし
た。8月2日に行われた交流会の日本からの参加者は10名(ほかに同伴者2名)でした。先方の出席
者は、ちょうど参与連帯の2泊3日の夏季研修合宿と重なったという事情もあって8名でしたが、そ
れでも中心メンバーはほとんど全員が都合をつけてくれました。

今回、私たちが参与連帯を訪問することになったのは、昨年11月に京都で開かれた社会文化学会の大
会で、参与連帯の前事務所長で市民社会団体連帯会議(NGO連合)の常任運営委員長の朴元淳弁護士
と森岡が「韓日における市民社会の方向性を探る」というテーマでゲスト報告をしたことがきっかけ
です。

交流は、午前9時に始まり、ミーティング形式で午後1時近くまで双方の報告と質問および意見交換
を行い、その後いっしょに昼食を取って午後2時過ぎまで続きました。通訳を交えての報告、質問、
討論だったので、時間不足は否めませんが、それでも経験交流と相互理解を深めるうえで大きな収穫
がありました。

以下、印象に残ったことを箇条書きにしておきます。

1)
創設は、KO1996年、PEC1997年(親組織のPSPD1994年)とほぼ同じ時期であり、弁護士、公
認会計士、市民ボランティアからなる組織構成や、株主代表訴訟や株主提案を中心とする活動手段も
驚くほど似ています。

2)
母体の参与連帯は、会員約15000人、専従者約50名の大きな市民団体で、年齢構成も若々しい組織
だという点でKOと大きく異なるが、実動メンバーだけをいえばPECKOも同じく20人前後のいわば少
数精鋭グループです。

3)
市民団体による企業監視と企業改革の運動として、広範な市民の支持が得られることを重視し、他
の領域の市民運動以上にマスメディアの注目を集めてきた点もよく似ています。

4)
株主提案などの活動ではターゲット企業に狙いを定めて集中的にキャンペーンを展開するという点
でも似ています。

5)
しかし、PECは、創業者一族が絶対的支配権をもつ財閥(現代、LGSK、サムスンなど)を民主化
するという目標のもとにターゲット企業を選んでいる点でわれわれと異なります。企業が交渉を拒否
せず応じるのも日本とは違う点です。

6)
また、PECは、KOと違って、外国の機関投資家を主な対象に組織的にプロキシー・ファイト(株主
総会の委任状集め)をしたり、ロードショー(巡回興行)と称して、欧米の主要都市に出向いて韓国
のコーポレート・ガバナンス事情について機関投資家に対して説明会を開いたりしている点で、KO
りはるかに国際的な活動をしています。

7)PEC
は、コーポレート・ガバナンスの改革でも、SKテレコムに対して漢陽大学経営学科の金大植副
教授を社外取締役に送り込むなど積極的な成果を上げています。

8)
株主代表訴訟では、KOは多くの事件で再発防止を約束させて和解してきたが、PECは、これまでに
和解した例はなく、一審で勝利した事案を含めすべて係属中です。

9)PEC
は証券事件の集団訴訟(クラスアクション)制度やその他の課題で立法活動を重視し、与野党
の国会議員への働きを積極的に行っています。

10)
日韓の経済界の結びつきや、市民団体としての課題の共通性から、双方ともこれを機会に交流と
共同を強める必要性を認識しました。

国際交流の具体的な課題や方向性についてはミーティングではほとんど議論できませんでした。しか
し、当日の夜、宿泊したロッテホテルに朴元淳弁護士が来られ、森岡と二人だけでしたが、ゆっくり
意見交換をすることができました。そこでも話題になったように、アジアは日韓両国だけでなく、中
国や台湾や東南アジア諸国を含め、多くの国がコーポレート・ガバナンスの改革で共通の課題を抱え
ています。グローバル企業のNGOによる監視という点でもアジア各国の市民団体が共同する必要性が
高まっています。今後は株主オンブズマンにとってもアジア的視野での活動が求められてくるでしょ
う。

最後に、
今回の交流の場を与えていただいた朴元淳(Park Won Soon)弁護士、
通訳をしてくださった韓国放送通信大学経済学科・金基元(Kim Ky Won)教授、
PEC事務局長のハンサン大学経済学科・金尚祚(Kim Sang Jo)教授、
PEC副事務局長の延世大学国際大学院・金ラ基(Kim Joon Ki)教授、
CGCG(Center for Good Corporate Gavernance)およびPEC副事務局長の金柱永(Kim Joo young)弁護士、
参与連帯経済改革センター担当のPark Kun Yongさん、
ほかに同席いただいた事務局員、参与連帯広報担当者、ハンギョレ新聞記者の方々に
この場を借りてお礼申し上げます。


8月3日のハンギョレ新聞の経済欄では前日の交流の様子が写真入りで大きく報道されていました。

 

                                           (文責:森岡孝二)