日本ハムの回答書に対する株主オンブズマンの意見   2002年9月17日  

      株主オンブズマン
      代表 関西大学教授 森岡 孝二

 株主オンブズマンは8月27日、牛肉偽装事件を起こした日本ハム株式会社に対して株主の立場から以下の3点の申し入れを行いました。

(1) 取締役会の経営監視機能を高めるために、消費者団体、日本弁護士連合会等の外部団体の推薦を受けた真の社外取締役を次期株主総会で選任する前提で、社外取締役的地位の役員待遇の適任者を少なくとも2名以上早急に招聘する。

(2) 真相解明のために外部の独立した弁護士、学者、消費者等の委員で構成する調査委員会を設置し、企業体質や社内風土を含む根本的原因を調査し、その結果を公表する。

(3) 違法行為の再発を防止するために、外部の独立した委員を中心とするコンプライアンス体制を確立し、真に実効性のある「スピークアップ制度」 (内部告発の推奨・保護制度)を導入する。

 この要請に対し、9月12日、専務取締役の福井人巳氏、取締役・改革推進 本部長の梅本洋右氏らの同席のもとで、代表取締役社長・藤井良清氏の名において別掲のような回答が示されました。その骨子は、主要な組織改革としては次の3点に集約されるかと思います。

・外部委員を中心とする「企業倫理委員会」の設置、
・消費者の視点を持った女性の顧問(社外取締役候補)としての登用
・顧問契約を結んでいる弁護士事務所を窓口とした内部告発の受付け

 これらは、内容のうえでは、日本ハムが8月27日の株主オンブズマンの申 し入れ以降、私たちの要求を焼き直して発表してきた「再発防止策」と「経営方針」を並べ直しただけのものです。

設置された企業倫理委員会の委員は次のとおりです。   
高巌氏(麗澤大学国際経済学部教授)、
犬伏由利子氏(消費科学連合会副会長)、
海原旦氏(公認会計士)、
下村満子氏(ジャーナリスト)、   
本井文夫氏(弁護士)、
秋山光平氏(全日本ハム労働組合委員長)

 これらのメンバーのうちには会社と業務上の関係があった公認会計士が含まれています。1年間の時限組織とされている点でも問題があります。それ以上に問題は、「企業倫理委員会」は、会社の説明では「過去のことには立 ち入らず、今後のあり方を検討していく」ものとされていることです。企業論理を確立し、法令遵守を徹底させるためにこのような委員会を設けること は必要ですが、だからといって、再発防止のための真相解明は必要でないと いうことにはなりません。

 この点にかぎらず、日本ハムの9月12日の回答の最大の問題は、事件の真相解明あるいは原因究明が完全に回避されている点にあります。回答文では最後に、「今回の事件は、司法による究明も予想されることから、これに関 してのコメントは差し控えさせていただきますが、再発防止の観点から、本件の原因究明は極めて重要であると認識しております。当社としましても、今回拡充しました監査部による日本フードに対する特別監査に関しても業務監査と遵法監査を中心として実施しているところであり、その結果を企業風土の見直し・抜本的改革にも生かしていきたいと考えております」と述べて います。

 この文章の真意は、警察等による原因究明は極めて重要であると認識して いるが、会社としては日本フードに対する特別監査以上のことはするつもり はない、という点にあります。これでは企業風土の見直しも、抜本的改革も できるはずはありません。

 今回の事件では、専務や副社長は2月の時点で偽装の事実を知りながら、社長は8月の初めまで知らなかったという通常の経営体制ではあり得ないこ とが起こり、そのために会社は危機管理を誤り、取り返しのつかない損害と 信用失墜を招きました。

 しかし、これまでの会社発表では、2月から8月までの間に会社の役員が取った行動はほとんど説明されていません。とりわけ証拠隠滅と疑われる行為をしながら、これについての事実経過とその原因、風土はまったく明らか にされていません。日本ハムのトップ、ハム・ソーセージ組合、農水省の関係にもメスを入れる必要があります。このままでは、子会社の日本フーにお ける部下の行為が警察によって解明されても、本社トップの行為は闇に葬られる可能性が大きいと言わざるをえません。

 残念なことながら、日本ハム経営陣は、真相解明や原因究明をしないでも 事態を乗り切ることができると考えているふしがあります。その点で、経営陣は自らの置かれた状況を理解していおらず、過去を不問にしたままでは消 費者の信頼回復はありえず、株主も社会も納得しないということが判ってい ないように思います。

 そういう認識から、9月12日の交渉では、私たちは真相解明の問題を中心に次の3点について会社の再考を強く求めました。

1)これまで発表された社内調査はきわめて不十分で、株主および消費者への説明責任が果たされていない。外部メンバーで構成されたしかるべき委員会で事件の全容(原因・責任)について調査することが強く求められている。 それができなければ株主としては、別の場で真相を糺さざるをえない。

2)社外取締役(その候補)の選任にあたっては、消費者団体等からの推薦な どの方法で真の独立性を確保することが決定的に重要である。会社の意に添った人ではなく、会社に厳しい意見を持っている人で、かつ大方の納得の得 られる人を選ぶべきである。

3)スピークアップ(内部告発)の受付窓口を会社の顧問先の法律事務所にして社員に周知するというのは、ないよりはよいが、顧問先では抑制が働きやすい(今回のように上層部が関与している場合は、社員は顧問先には通報しないだろう)。したがって、これを正式なものとせず、すみやかに弁護士会の推薦等の方法によって顧問先でない法律事務所に変える必要がある。今回の事件の性質と日本ハムが直面している状況からみて、設置されるべきは、 食品業界の模範となる先進的なスピークアップ制度でなければならない。

 以上の私たちの認識と、別掲の日本ハム側の回答について、株主の方々や消費者のみなさんはどのようにお考えになりますか。みなさんのご意見をメ ール、ファックスでお寄せください。


 

  日本ハムからの回答書

                                   


                                                        

    平成14年9月12日
株主オンブズマン    
代表者 森岡孝二様    
              
    日本ハム株式会社
    代表取締役社長 藤井良清

  先に申し入れのありました件に関連し、当社の遵法経営の確立に向けた取 り組みについて基本的な考え方を下記のとおりお知らせ申し上げます。

               記

T 企業風土の見直しと抜本的改革への決意  

1.今回の偽装事件発生の根幹には、業績至上主義による遵法意識の希薄 化と、事業本部制の過度の分権化による、他部門や社外に対する閉鎖体質と いう、グループ内に生じてしまった負の企業風土があったものと深く反省し ています。改めて今回の事件によって、株主の皆様、消費者の皆様、お取引 先様、関係者各位に多大なご迷惑をおかけし、また、信頼を損ねましたこと に対し、深くお詫び申し上げます。  

2.この企業風土を抜本的に改革し、失った信頼を再び取り戻すとともに、 二度とこのような事件を起こさないために、グループの根幹をなす企業理念 である、”食べる喜び”を基本のテーマとして社会に貢献することはもちろ んのこと、グループ全事業部門を横断的に、第三者の視点を加えた形で監査・ 監督する業務チェック体制の確立や、経営トップに迅速に報告が行き、適切 な措置を講ずることができる体制の構築によって、遵法精神に基づいた透明 性のある経営の実現を目指します。

U 遵法経営実現のための組織改革

1.社外の声を取り入れるための制度
(1) 『企業倫理委員会』の設置  
@ 目  的    
社外有識者の意見を積極的に取り入れることにより、遵法意識の徹底を 図るとともに、より透明性の高いグループ経営を実現するための提言、助言を得ることを目的とします。  
A 行動計画                                       
本委員会を社長直轄とし、「取締役会」に提言を行うとともに、新設する「改革推進本部」に対して助言を行います。

・本委員会はさる9月10日に第1回会合を開催しました。  
・本委員会の委員は次のとおりです。  
高 巌氏(大学教授)、
本井文夫氏(弁護士)、
海原旦氏(公認会計士)、            
下村満子氏(ジャーナリスト)、
犬伏由利子氏(消費科学連合会副会長)、   
秋山光平氏(労働組合委員長)  
・事務局は「改革推進本部」に置きます。  
・提言を受けた「取締役会」は、これを誠実に取扱い、対処します。

(2) 社外取締役の選任、執行役員制度の導入の検討   
グループ各事業部門を横断する、透明性の高いグループ経営の実現に資するため、  
@ 消費者の視点を持った女性を顧問(社外取締役候補)に迎えることを検討し、決定します。(10月中に決定)  
A 権限委譲の明確化と意思決定の迅速化を図るため、取締役数の減員、執行役員制度の導入の検討を行います。(年内)

(3) 一般消費者からの意見・提言受付窓口の設置   
消費者視点からの事業活動及び経営全般に対する意見及び提言を受け、グループ経営に活かすため、  
@商品に関わるお客様対応窓口として、既にある「お客様サービス室」の フリーダイヤルとは別に、意見・提言の受付窓口として、新たに専用の ホームページを開設しました。
[アドレスhttp://www.nipponham.co.jp]   (9月9日設置)
Aこの開設及びアクセスについて広報活動を行っております。(9月9日より)

2.社内からの改革を推進するための制度

(1)「改革推進本部」の新設   
グループの企業風土及び経営体制の刷新を目的とし、「企業倫理委員会」 が取締役会 に提出する提言を含め、経営改革を取りまとめます。
 
@社長直轄組織として「改革推進本部」(本部長:梅本洋右取締役)を設 置し、その下に「監査部」(拡充)と「経営改革室」(新設)を設けました。 (9月1日)[別紙「職務分掌」参照]             
A日本ハム及びグループ会社の横断的業務チェック体制の計画、立案を行い、体制を確立いたします。   ′  
B外部からコンプライアンスの専門家を顧問として招聘し、日本ハム及びグループ会社に対する遵法経営に関する基準作成、監督及び指導を行いま。(9月より)  
C「企業倫理委員会」事務局の機能を担います。(9月より)

(2) 「品質保証部」の新設              
グループ全事業部門を横断した品質保証体制を確立し、消費者本位の「品質保証」、「商品の安全性の確保」のための体制を強化します。

@品質保証部を新設し、その下に「お客様サービス室」を設置しました。(9月1日)  
A日本ハム及びグループ会社に対する、絶対的権限を持った品質保証、監査検査を遂行します。  
B安全性と表示適正化に対する関連法規の情報収集、分析及び社内基準との適合性チェックを実施します。  
C日本ハム及びグループ会社の製造、物流、販売における品質保証に関する監視を強化します。  
D 関係官庁・団体との窓口活動などにより、グループの品質保証体制の透明性を高めます。

(3)従業員からのコンプライアンス受付窓口の設置   
グループ全従業員からの告発、生の声、意見、提言等を経営トップに確実に届け、適切な対応を図るため、企業倫理委員会の正式な提言がでるまで、当面の受付窓口として次のとおり設置しました。  

@コンプライアンス担当窓口として、法律事務所と契約し、設置しました。これによって、情報の提供者が不利益を受けないようにいたしております。 (9月1日設置)  
A届けられた情報は速やかに社長に報告され、必要なものについては、事実関係を調査し、法律事務所と協議し、対応します。  
B本窓口の設置について、社長名で社内通知を行うとともに、朝礼で本受付窓口の設置について周知・徹底を図りました。(8月29日)

3.「日本ハムグループ行動規範」の改訂、細則策定及び周知・徹底
 
 業績至上主義の企業風土を抜本的に改革し、遵法意識の高揚と定着を図るため、
・『いま「誠実」から再スタート』のキャンペーン実施しております。
・「日本ハムグループ行動規範」を改訂するとともに、より具体的で解りやすい細則を策定 いたします。(9月末日までに改訂を行い、細則を策定する。)
・社員教育を通じ周知・徹底を図ってまいります。(9月下旬 第2回企業倫理委員会で審 議9月下旬〜10月初旬 修正及び周知・徹底と教育キャンペ ーン開始。10月中旬以  降、監査部によるコンプライアンス・モニタリングを実施。)

 以上の一連の取組みの状況については、農林水産省に1カ月毎にその進捗を報告することになっているのに加え、適宜、報道関係各位へも情報開示する予 定です。
 なお、今回の事件は、司法による究明も予想されることから、これに関してのコメントは差し控えさせていただきますが、再発防止の観点から、本件の原 因究明は極めて重要であると認識しております。当社としましても、今回拡充 しました監査部による日本フードに対する特別監査に関しても業務監査と遵法 監査を中心として実施しているところであり、その結果を企業風土の見直し・ 抜本的改革にも生かしていきたいと考えております。  
 さる9月2日に私が記者会見で明らかにしましたように、社をあげて全力で 取り組む強い決意と覚悟を内外に言明しております。どうぞ私どもの努力を見 守っていただければと存じます。  
 最後に、数々の貴重なご指摘、ご意見に心から感謝申し上げます。                                              以上


 

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