熊谷組政治献金裁判の判決の評価と控訴について

2003(平成15)年2月19日

                                株主オンブズマン
                     代  表  森  岡  孝  二
                                    事務局長    阪  口  徳  雄
                原告弁護団
                                    代  表    松  丸     正

1.原判決は、被告松本良夫に対し、1999年の16,325,000円、2000年の
   12,290,000円、合計28,615,000円を支払う旨命じた。判決の要旨は
   下記のとおりであった。
  評価している点は、次のとおりである。
   @ 政治資金の寄付は対価を伴わない寄付の性質上、直接に会社の営利の目的に資する
         ことはない。
     のみならず、被告らが主張する自由主義体制の維持ないし発展にについても、現在
         の政治状況においては自由主義体制を採用するとの点で主要な政党が一致している
         から、政治資金の寄付が自由主義体制経済体制の維持ないし発展に結びつくとも認
         められない。そうすると、結局、会社の利益獲得に対する効果は極めて間接的で希
         薄なものに過ぎず、会社にとって政治資金を寄付する高度の必要性、有用性がある
         とは通常考えられない。
   A 政治資金の寄付の相手方は政党、その他の政治団体であるから一般の社会貢献活動
         への寄付とは異なり、社会への貢献、会社の社会的責任の追行とも係わりがなく、
         会社に対する社会の評価を直接、間接に維持し高める効果も有しない。従って政治
         資金の寄付は通常、会社の定款所定の目的に実現とも関連性は希薄である
   B 政治資金規正法26条の3の法の趣旨に照らせば、少なくとも会社に欠損が生じて
         以降の政治資金の寄付に関しては3事業年度の継続と言う法の禁止要件に該当しな
         いときであっても、会社においてその可否、範囲、数額、時期などにつき厳格な審
         査を行い、欠損の解消にどの程度の影響があるか、株主への配当に優先して寄付を
         行う必要性があるかを慎重に判断する事が求められていると言わねばならない。寄
         付額が法の定める上限に達しない限り、そのような判断をへる事なく寄付する事が
         許されると解すべきではない。
   C 以上の事実を一切考慮せず、いずれも日建連から金額を明示して示されたガイドラ
         イン、または国民政治協会の要請通りの金額をそのまま承認して、本件政治資金の
         寄付を実施した。
   D 従って平成10年4月1日以降の本件政治資金の寄付については会社においてその
         可否、範囲、数額、時期などにつき厳格な審査を行い、欠損の解消にどの程度の影
         響があるか、株主への配当に優先して寄付を行う必要性があるかを慎重に判断する
         事なく実施したものでその判断過程はずさんであって取締役の裁量を逸脱したもの
         と言わざるを得ず、善管注意義務違反の行為と言うべきである。
    私達は、上記@Aの理由は、最高裁八幡政治献金事件の政治献金の有用性を否定したもの
    として評価した。また、BCDの理由は、新しい判旨としても評価した。

2.原告が本判決の上記の点は評価しつつも、しかし1996年(28,174,000円)、
   1997年(21,672,000円)、1998年(20,672,000円)について
   は、公職選挙法199条1項違反がある点については「証拠」がないとして棄却された部分
   について本日控訴(2月19日)した。
   詳細な控訴理由は後日提出する予定であるが、その骨子は以下のとおりとなろう。
(1)@ 議会制民主主義下における政党は、最終的には選挙における多数の獲得を目標にし
         て全ての活動を展開している。選挙を離れて政党の活動はあり得ない。
     従って、政党に寄附する以上、その政党が選挙において少しでも多くの国民の支持
         を獲得することを願って寄附しているものである。選挙を離れての寄附は論理上あ
         り得ない。選挙に関しての寄附は選挙に関する事項を動機として寄附(約束も含む)
         することであるから、極めて広い意味とされている。
     従って、本件政治献金も自民党が我が国の政治状況の中で強くなることを願っての
         寄附である以上、自民党が選挙において一票でも多くの国民の支持を獲得すること
         を目的としているものである。
   A 企業献金の大半は、自民党の国会議員一人一人への組織活動費に費消されている。
         国会議員一人一人に配布する組織活動費等も結局のところ、同党の国会議員を財政
         的に支える為であるから国会議員の地盤等を維持存続させる為に費消されている以
         上、選挙に関しての支出となる。
     また、一斉選挙のない年の寄附でも、寄附を受けた一部が翌年に繰り越されている
         ことからみても、自民党の金の支出は、広い意味での選挙に関する寄附である。
     従って、本件献金は全て選挙に関する事項を動機としての寄附はあると解される。
         自民党を強化する為に寄附する以上、選挙活動に使われることは公知の事実である
         からである。
   B 選挙に関する寄附と政治活動に関する寄附とは区別が出来ない以上、選挙に関する
         寄附と解すべきである。
     南九州税理士会最高裁事件は、税理士会の活動の目的で寄附をしたとしても、政治
         団体は広範な活動を言うのであるから、その目的にのみ費消されるものでないと認
         定した。
       熊谷組が自民党の政治活動の為に寄附したとしても、同党は選挙活動も行っている
         のであるから、「政治活動のみ」に限定して費消されるとは限らない。その点で、
         選挙が密接した時機に行われる以上、その区別が困難であり選挙が日常的に実施さ
         れている以上、公職選挙法199条に違反する。
(2)本件寄附が公職選挙法199条に違反しなくとも、政治献金をする高度の必要性、有用
     性がなく、また社会貢献活動とも異なる寄附であるのに公職選挙法に違反する危険性、
     可能性についてほとんど検討することなく漫然と日建連からのガイドラインに従って本
     件寄附を実施したことは、取締役の善管注意義務にも違反する。

3.よって、2月19日、名古屋高等裁判所金沢支部に控訴の申立を行った。
    今後とも本裁判の支援をお願いする次第である。
                                                             以 上

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