ソニー名誉会長の大賀典雄氏に対する退職慰労金の支給について

                    株主オンブズマン代表
                    関西大学教授 森岡孝二

新聞報道で話題になっているようにソニーは、元社長で今年1月末に取締
役を退任した大賀典雄名誉会長(73)に、16億円の退職慰労金を支払
うべく、6月20日に開く株主総会に提案することになった。

これまでは退任取締役の退職慰労金の支給金額については、たいてい総会
で取締役会一任をとりつけ、株主の目の届かないところで決められていた。
今回のように具体的金額を示して総会に提案されることは異例のことであ
る。この背景には株主オンブズマンが昨年、ソニーの株主総会に役員の報
酬および退職慰労金の個別開示を求めて株主提案を行い、議決権行使総株
数の27.2%もの高い支持を受けたという事情がある。

昨年度、この提案を行ったのに対して、ソニー取締役会は、役員報酬等の
個別開示は拒んだが、過年度1年間に役員に支払った報酬および退職慰労
金の額を取締役と監査役の別に、総会招集通知の営業報告書に開示するこ
とに踏み切った。

これによって昨年度明らかにされた一昨年度の取締役の報酬総額は支給人
員13名で10億8000万円、退職慰労金は支給人員1名で2億円であ
った。また、本年度明らかにされた昨年度の取締役の報酬総額は、支給人
員13名で7億3700万円、退職慰労金は支給人員2名で300万円で
あった。

今回の大賀名誉会長の退職慰労金の開示は、前記のようなすでに支給され
た額の開示とは違って、株主総会に出される退職慰労金の贈呈に関する議
案(5号議案)のなかに金額を明記したものである。退任監査役に対する
退職慰労金については、取締役会(報酬委員会)一任を求めている点で従
前と大きく異なるところはない。

今回の退任取締役の退職慰労金の取扱いは、われわれの株主提案が要求す
る個別開示の趣旨に沿うものとして積極的に評価できる。今後はこれを押
し広げて、社長・会長経験者の退職慰労金にとどまらず、他の取締役の報
酬および退職慰労金についても個別開示に踏み切ることを期待する。

大賀典雄氏は1972年に常務取締役に就任し、その後、専務取締役、副
社長、社長、会長を歴任し、会長退任後も2003年1月まで取締役を務
めてきた。この経歴とソニーの現在の営業実績からみて、16億円を高す
ぎるとみるか、妥当とみるか、低すぎるとみるかは評価の分かれるところ
であろう。これを妥当な額として認めるとしても、できればその一部を芸
術や文化など社会的に有用な社会貢献に還元してほしいと考える株主もい
るかもしれない。

いずれにせよ、一般株主から見た場合、大賀氏の退職慰労金が高いか低い
かについて株主に具体的な判断材料が与えられたことに、ソニーの今回の
退職慰労金贈呈議案における金額開示の最大の意義がある。


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