機関投資家議決権行使アンケート調査結果速報

A 調査の目的と対象

 日本経済が長期の混迷から抜け出せず株価が低迷するなかで、企業経営のあり方に対する投資家の関心
とともに、機関投資家(以下、機関株主という)の議決権行使に対する資産保有者の関心が高まっている。そ
こで株主オンブズマンは、株主の権利行使を重視する市民団体として、このたび機関株主の諸組織に対して
議決権行使の基準と行使状況についてアンケート調査を実施した(発送5月7日、締め切り6月10日)。

発送先は信託会社、生命保険会社、損害保険会社、共済組合・年金基金の主要連合会の167機関であったが、
うち10機関からは「機関株主に該当しない」「直接株式への投資を行っていない」などの理由で回答できない旨
の連絡があった(ほかにも事前調査の不行き届きで該当しない機関が含まれている可能性がある)。
結局、回答があったのは下記の15社にとどまった。回答率は該当しないという連絡のあった機関を除いて計算す
れば、回答率は約10%になる。共済組合・年金基金の各連合会からは回答はなかった。なお、今回の調査に当
たっては、厚生年基金基金連合会の株主議決権行使基準(2003年2月20日策定)を参考にした。

B 調査結果の概要

T 議決権行使基準について 1 明文化された議決権行使基準をお持ちですか。

   
a もっている(13)  b 現在検討中(0)  c もっていない(2)  d その他(0)

  議決権行使基準の有無についての質問では、もっている13社(87%)、もっていない2社(13%)であった。
  少ない回答数ながら、87%という数字は、機関投資家のあいだでの議決権行使基準の策定と所持が広が
  りはじめていることを示している。

2 質問T-1でaと答えた組織にお尋ねします。議決権行使基準を策定されたのはいつですか。
 その後改訂をしたのであればその年もお書きください。


  策定年    機関数   改訂年   機関数
  1999      6      1999     0
  2000      2      2000     0
  2001      1      2001     0
  2002      2      2002     2
  2003      1      2003     6

 議決権行使基準の策定が始まったのは1999年からである。2002年にはいったん策定した基準の見直しが始
 まり、2002年には、1999に策定した6社のうちの2社が改訂を行なった。2003年には、1999年に策定した6社の
 うち残る4社と、2000年および2001年に策定をした2社の合計6社が改訂を行なった。

3 質問T-1でaと答えた組織にお尋ねします。議決権行使結果の概要をHPなどで発表していますか。

  a 発表している(0)  b 発表していない(12)  c その他(1)  無回答(2)

 議決権行使結果を当該機関のHPで発表しているところは回答機関中にはない。ちなみに、厚生年金基金連
 合会は、過年度の自家運用株主議決権の行使結果についてHPに公開している。

U 取締役会の規模と構成について

4 取締役の規模(人数)は以下のいずれが適正だと考えますか。

  a 10人未満(1)  b 10人〜19人(1) c 20〜29人(0) d 30人以上(0)  e 一概に言えない(13) f その他(0)

 取締役会の規模は執行役員制度の導入にともない減少傾向にあることを踏まえて、取締役会の適正規模につ
 いて質問した。回答は、「10人未満」が1社、「10人〜19人」が1社あったほかは、すべて「一概に言えない」という
 ものであった。

5 商法改正(本年4月1日施行)に伴い委員会等設置会社制度の選択的導入が日程に上っていますが、
  同制度の導入をどのように評価されますか。


  a 肯定的に評価する(10) b 否定的に評価する(0) c どちらともいえない(5) d その他(0)

  委員会等設置会社の導入については、実際に移行する会社がまだ少数にとどまっているなかではあるが、
  10社が「肯定的に評価する」、5社が「どちらともいえない」と答えている。

6 当該企業と利害関係を一切もたず完全な独立性を有する社外取締役の取締役全体における望ましいと
  考えられる比率についてお尋ねします。


  a 過半数(0)  b 3分の1以上(3)  c 複数(4)  d 一概にいえない(7)  e その他(1)

  ここでいう独立社外取締役は日本ではまだ定着しておらず、機関株主の議決権行使においても「過半数」と
  いう認識はまだもたれていない。この回答もそれを反映して、「過半数」0社、「3分の1以上」3社、「 複数」4社、
  「一概にいえない」7社、「その他」1社となっている。

V 役員の選任について

7 当期を含む過去3期連続赤字かつ無配で、株主価値の毀損が明らかな企業の取締役の再任の是非につい
  てお尋ねします。

  a 望ましい(0)  b 望ましくない(8)  c 一概にはいえない(7)  d その他 (0)

  経営が著しく不振な企業の取締役の再任の是非について質問したところ、8社が「望ましくない」と答えている。
  7社が「一概にいえない」と答えているが、これは再任の是非の判断は、在任期間や経営上の地位や責任によっ
  て分かれるということを意味しているのかもしれない。

8 当該企業において法令違反や反社会的行為などの経営に重大な影響を及ぼす不祥事が発生した場合の関与
  責任や義務違反が問われている取締役の再任の是非についてお尋ねします

  a 望ましい(0)  b 望ましくない(14)  c 一概にはいえない(1)  d その他(0) 

  企業不祥事における関与責任や義務違反が問われている取締役の再任については、「望ましくない」という回答
  は14社にのぼり、「一概にはいえない」とするのは1社にすぎない。このことは機関株主が不祥事について厳しい見
  方をするようになってきたことを示している。

9 消費者団体の代表または消費者の視点をもった人が社外取締役に選任されることの評価についてお尋ねします。

  a 肯定的に評価する(4) b 肯定的には評価できない(0) c どちらともいえない(11) d その他(0)

  昨年は雪印乳業において全国消費者団体連絡会の前事務局長であった日和佐信子氏が社外取締役に選任され
  た。今年は日本ハムにおいて消費者分野の活動経験を有する元資生堂お客様コミュニケーションセンター所長の
  早川祥子氏が社外取締役選任される予定である。こうした動きを念頭においた質問に対し、4社が「肯定的に評価す
  る」と答え、11社は「どちらともいえない」と答えている。

W 役員の報酬および退職慰労金について

10 役員の報酬について取締役および監査役の別に一人一人の金額を株主総会の招集通知に添付される営業報告
  書に開示することの是非についてお尋ねします。

  a 望ましい(5)  b 望ましくない(2)  c 一概にはいえない(6) d その他(2)

  株主オンブズマンは、役員の報酬および退職慰労金の個別開示を求めて、今年はソニーとトヨタに株主提案を行っ
  ている。ここでは役員報酬の個別開示の是非について質問したところ、「望ましい」が5社、「一概にはいえない」が6社、
  「その他」が2社で、「望ましくない」という答えは2社にすぎなかった。

11 役員の退職慰労金について退任する取締役および監査役の別に一人一人の金額を株主総会の招集通知に添付
  される営業報告書に開示することの是非についてお尋ねします。

  a 望ましい(6)  b 望ましくない(1)  c 一概にはいえない(6)  d その他(2)

  役員の退職慰労金の個別開示についてのこの質問では、役員報酬に比べ「望ましい」が5社から6社に増え、「望まし
  くない」が2社から1社に減っている。

12 当期を含む過去3期連続赤字かつ無配で株主価値の毀損が明らかな企業の取締役退任者に対する退職慰労金
  の贈呈の是非についてお尋ねします。

  a 望ましい(0)  b 望ましくない(10)  c 一概にはいえない(5)  d その他(0)

  経営が著しく不振な企業の取締役退任者に対する退職慰労金の贈呈の是非について質問したところ、10社が「望ま
  しくない」と答え、残りの5社は「一概にはいえない」と答えている。ここには役員報酬以上に、退職慰労金に厳しい目が
  向けられていることが示されている。

X 株主総会について

13 大多数の3月決算企業が6月末の同一日に株主総会を開催している現状をどのように考えますか。

  a 早急に改める必要がある(8)  b 将来改める必要がある(6)  c 今後も改める必要はない(0)  d その他(1)

  今年も3月期末決算上場企業の約7割が6月末(27日)の集中日に株主総会を開催するが、その現状を「今後も改め
  る必要はない」とするところは1社もなく、「早急に改める必要がある」8社と「将来改める必要がある」6社を合わせると、
  15社中14社が改革の必要を認めている。

14 株主総会の招集通知は開催日から数えて約何週間前に発送されることが望ましいと考えますか。

  a 約5週間以上前(3)  b 約4週間前(10)  c 約3週間前(1)  d 約2週間前(1)  e その他(0)

  株主総会の招集通知の発送時期は現状では「約2週間前」が多いが、この回答では現状肯定の回答は1社しかなく、
  他は「約5週間以上前」3社、「約4週間前」10社、「約3週間前」1社である。

15 株主代表訴訟の賠償金額の制限に関連した定款変更の是非についてお尋ねします。

  a 望ましくない(0) b 社外取締役に限れば肯定しうる(1) c 望ましい(4)  d どちらともいえない(8) e その他(1)

  株主代表訴訟の賠償金額の制限に関連した定款変更はすでに昨年の株主総会において少なくない企業が実施した
  が、この回答では「望ましい」としたところは4社で、他は「社外取締役に限れば肯定しうる」1社、「どちらともいえない」8
  社、「その他」1社であった。

C 調査結果から見えてきるもの

 ここ数年株主オンブズマンが実施してきた調査の回答率は概ね60%から70%の高さにある。それに比べて、本調査の
回答率が約10%にとどまったのは、議決権行使基準を持っている機関株主がまだ比較的少数にとどまっていることを示し
ているのかも知れない。  
しかし、寄せられた回答から見る限り、従来、法人安定株主と同じように白紙委任ですませる傾向の強かった機関株主の
あいだで議決権行使基準の策定が広がっていることがわかる。議決権行使基準をもつということは、包括的委任ではなく、
議案ごとに是々非々で賛成・反対・保留を明確にして投票することを意味している。本調査結果では、仮定のケースとして、
著しく経営が不振な企業や不祥事企業の取締役の再任の是非や、役員の退職慰労金の贈呈の是非について質問したが、
その回答結果は、機関株主が議案によっては反対の意思表示をするようになってきつつあることを示すものである。今後こ
ういう傾向が強まっていくなら、日本企業はこれまでのように集中日開催と白紙委任を特徴とするシャンシャン総会を続けて
いくことはできなくなるだろう。


D 回答機関一覧

あいおい生命保険(株) エイアイジー投信投資顧問株式会社 エスビーアイ・アセット・マネージメント さわかみ投信(株)
シュローダー投信投資顧問(株) セコム損害保険 太陽生命保険株式会社 大同生命保険 第一勧業アセットマネジメント
野村アセットマネジメント フランクリン・テンブルトン・インベストメンツ プラザアセットマネジメント株式会社
三井住友アセットマネージメント UFJパートナーズ投信株式会社 りそなアセットマネジメント


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