今年の株主総会を振り返って           
2003/07/07

                         株主オンブズマン代表
                        関西大学教授 森岡孝二 


役員の報酬開示に高い関心と支持

株主総会シーズンが終了した。今年の総会の特徴をいくつかあげると、東証上場の集中日開催企業の数は1997年をピークに6年連続の減少となり7割を切るにいたった。主だった企業の総会では個人株主の出席者が増えるとともに、質問をする株主もめだって増えた。機関投資家のあいだでは議決権行使基準を独自に持ち、個々の議案毎に賛否をはっきり表明する動きが広がった。

多くの企業の総会で株主の関心が集まったのは、とりわけ取締役の報酬および退職慰労金の金額の問題であった。このことは、株価の低迷が続くなかで株主の会社をみる目が厳しくなり、株主が経営にたいしてこれまでになく透明性を求めていることを示している。

ソニーに対する株主提案で大きな前進

今年、株主オンブズマンは、ソニーとトヨタ自動車に対して、役員報酬と退職慰労金の個別開示を求める株主提案を行った。ソニーでは、大賀元社長に支給する退職慰労金は一六億円であることが明らかにされ、大賀氏のほかには退職取締役がいなかったために、退職慰労金の個別開示は期せずして実現されたかたちになった。それだけに取締役の報酬の個別開示に昨年以上に関心が集まることになった。

ソニーの場合、株主提案の投票結果は、議決権行使総株数の30.2%もの賛成を得ることができた。これは上位一〇大株主の持株比率の合計28.3%をも上回るものである。昨年は27.2%の賛成であったから、3%の前進(賛成票は昨年の138万1943個から今年の154万4235個へ12%の増加)である。個人株主の投票の多くが白紙であり、白紙は会社提案では「賛成」、株主提案では「反対」扱いとなることを考えると、これはきわめて高い賛成を意味する。この度、ソニーは委員会等設置会社に移行し、報酬委員会も発足した。これを機会に、150万個を超える賛成株数を力として、報酬の個別開示に踏み切るよう強く求めていきたい。

今年のソニーの総会ではソニー初の女性取締役が選任された。これは株主オンブズマンが昨年、男女共同参画社会基本法の見地から株主提案して総会議案となり、17.5%の賛成を得て、今年も継続提案していたところ、会社議案として実現されたものである。社外取締役に就任したのは橘・フクシマ・咲江氏(コーン・フェリー・インタナショナル日本担当代表取締役)である。『エコノミスト』の7月15日号は、議決権行使助言サービスを行っているISSの若月上代表『橘氏の就任は株主オンブズマンの大きな成果』と高く評価している」と伝えている。

トヨタに対する提案にも高い支持

トヨタの場合、役員報酬および退職慰労金の個別開示を求める提案には、15.3%の賛成があった。ソニーと異なるトヨタの強固な持ち合い構造を考慮に入れると、これもきわめて高い支持を意味する。これにより、トヨタは何らかの対応を迫られるだろう。株主オンブズマンの提案ではないが、同様の報酬開示の株主提案はみずほでもあり、12%の賛成を得たと報じられている。この動きは来年はさらに強まるものと予想される。 

なお、トヨタに対しては、報酬の個別開示の提案にとどまらず、株主総会を土日を含め株主が参加しやすい日に開催することを求める提案と、増配を求める提案を行った。

総会開催日の変更に関する提案については、12.8%の賛成を得た。トヨタは集中日を1日前倒して開催しているが、これは集中日を真に回避したものとはいえない。商事法務の調査では、昨年は、上場公開企業で、以下の22社が土日に株主総会を開催した。このことは土日開催を含め来年も総会開催日の分散が大きな流れになってきつつあることを示すものである。トヨタには日本を代表する企業として、大胆な踏み出しが期待されている。

6/ 8(土) KOA
6/15(土) 堀場製作所、コロワイド
6/16(日) ファンケル、松井証券
6/22(土) THK、太平洋工業、パオ、マルシェ、日本電産トーソク、ニッシン、三洋信販、いちよし証券、      サカイ引越センター、キムラユニティー、スクウェア、ナムコ、サンドラッグ
6/23(日) エイベックス、福井銀行、ホリプロ、ナック

増配に関する私たちの株主提案は、当期の一株あたり株主配当金を50円(配当性向約30%)にする9号議案として提示された。増配については、会社(取締役)側も第1号議案において、当期の株主配当金を36円(配当性向19.8%)とする利益処分案を出していた。投票の結果は4.75%の賛成であった。株主の支持しやすい増配要求に対するこの賛成率の低さは、投票の次のような取扱いによるものと考えられる。 1)1号議案に白紙、9号議案に賛成の投票−−この場合は1号議案に賛成とみなし、9号議案に反対とみなす(白紙は会社議案に賛成、株主議案に反対として 扱うことになっているため)。 2)1号議案に賛成、9号議案にも賛成の投票−−この場合は無効として扱う? 3)1号議案に反対、9号議案に賛成の投票−−この場合にのみ9号議案に賛成とみなす。 これが事実だとすればきわめて不公平、不合理な扱いである。調査の上、場合によっては問題にすることもありえる。

こういう問題はのこるが、増配提案を含め、私たちのトヨタに対する株主提案は、それなりの成果を上げた。その点を日経産業新聞は、「結局、3案とも反対多数で否決されたが、オンブズマン側の努力は徒労ではない。報酬、賞与、退職慰労金については役員全員の総額ながら初めて開示に踏み切り、配当も8円増の36円とライバルのホンダの32円を大幅に上回る『高額回答』だった」(6月27日)と伝えている。

株主オンブズマンでは、今後、株主提案については、経営の透明性と企業の社会的責任を中心に、ネットワークをつくり、全国的運動として広げていきたいと考えている。


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