株主総会に向けて株主の権利を行使しよう

――出席しよう・質問しよう・採点しよう―


 

はじめに

 

株主総会に際して、ほとんどの会社は「想定問答集」を用意する。それは株主の質問への対応を誤ると、説明義務違反として決議取消という事態にもなりかねないからである。

 会社の想定問答集に対抗してというわけではないが、株主の側も株主総会に際しては会社にどういう質問をするかをあらかじめ考えておくのがよい。株価や配当に関心をもつだけでなく、自分が所有者である会社がどのような経営を行っているのかについて広く注意を払い、株主総会に進んで参加し、積極的に質問をしていく株主が増えていかなければ、開かれた株主総会は実現されない。

 

まず付属明細書を入手することが重要

商法付属明細書の作成は、商法第281条によって義務付けられている。この付属明細書は商法282条2項2号によって会社に請求することが出来る。
付属明細書に記載されている内容な次のとおり。(一部省略)

@会社方針の変更理由
A資本金などの増減
B社債、借入金の増減
C固定資産の取得、処分、減価償却の明細
D保証債務の明細
E引当金の明細
F支配株主に対する債権・債務の明細

G子会社が有する親会社の株式数
H子会社に対する出資・債権の明細
I取締役、監査役及び支配株主との取引明細
J取締役、監査役に支払った報酬その他職務遂行の対価である財産上の利益額
K担保として取得している自己株主及び親会社の株式の明細
L取締役、監査役の兼務の状況
M販売費及び管理費の明細

 

付属明細書を入手することで上記@〜Mの内容が分かり、
イ)取締役、監査役の人数と当期支払い総額から、平均報酬金額が判明する。また、役員の兼務状況から、どの程度本業に専念できるか、否か注目できる。

ロ)その他、会社の資本金、社債、借入金、引当金などの増減及び固定資産の償却明細などから、会社の財務状況が傾向的にわかり、特に引当金の内、貸倒引当金は十分計上されているかどうか確認もできる。

ハ)保証債務などは、リスク要因としてその内容が確認できる。

ニ)近年、関係会社特に50%以上の株式を保有する子会社に冠する情報FからHは、ふ必要な子会社の存在の有無を問うことも必要である。

 

 

書面質問と会場質問

株主は議決権を有するのはもちろん、質問する権利を持っており、経営者はそれに答えなければならない。質問に対する無視や言い逃れを許さないためには、事前に書面で質問事項を送っておくとよい。商法第23732項には、「取締役・監査役の説明義務」が定められており、株主が総会日より前に書面により説明を求むべき事項を通知したときは、取締役および監査役は、調査を要することを理由に回答を拒むことはできない、とされている。

 書面質問はむつかしく考える必要はない。株主の氏名、住所を記し、思いつく質問項目を箇条書きにして、手紙、FAX、またはメールで会社の総務部に送るだけでよい。

 書面質問を株主総会に先だって送っておけば、総会当日、質疑応答に入る時点で、どういう質問が出ているかを会社側が要約的に説明するケースが多い。この場合も、発言を求め、席の近くのマイクまで行って、口頭であらためて質問をする。その場合、会社は質問者がどれくらいの数の質問を用意しているかを知っているので、あわてずにゆっくり質問することができる。

 質問がいくつもあるときは、「一括回答ではなく、一問一答でお願いしたい」と断って、各質問について順次回答を求める。回答が納得行かない場合は、再度質問することもできる。

 もちろん、事前に書面質問をしていなくとも、会場で臆せず挙手をして発言をすることが望ましい。株主総会の発言の8割は書面質問を出していない会場発言である。発言は「質問」のかたちをとるほうがよいとされているが、質問とはいえない意見や要望でも発言を封じられることはまずない。ただし、「ご意見として承っておきます」という決まり文句で軽く受け流されることはありうる。

いずれにせよ、株主が活発に質問(発言)して総会を活性化させることなしには、株主総会を株主と経営者の対話の場にふさわしいものにすることはできない。株主の活発な質問は、議決権の積極的行使とともに、必ずや経営者の違法・不正行為や誤った経営判断に対する大きな抑止力となり、ひいては企業活動の健全化とよりよい市民社会の形成の一助となるはずである。

 

質問事項の参考例

 

株主総会において株主は、会社の業績、ガバナンス、企業財務、投資計画、研究開発、M&A、役員選任、役員報酬、配当、株価、リストラ、環境、地域福祉、消費者対応、コンプライアンス、企業倫理、雇用、労働条件、その他、企業経営と企業統治に関する事項であれば、どんなことでも質問することができる。

ここでは企業の社会的責任を重視する本会の立場から7つの柱に分けて合計50項目の質問例をあげておく。もちろん企業それぞれの事業内容によって質問事項がかみ合わない場合もあるが、あくまで一般的なケースと考えて活用していただければ幸いである。

 

T 株主総会の運営と株主への配慮に関して

 

1 株主総会の開催日を集中日から外し、土日を含め一般株主が出席しやすい日に変更できないか。また開催時刻も一般株主のもっと出席しやすい時刻に変更できないか。

2 株主からの質問に対する回答は、一括回答ではなく、一問一答で行うべきではないか。

3 株主総会招集通知については、発送時期を早める、内容を分かりやすくするなどして、株主の議決権行使を行いやすくするべきではないか。

4 海外の株主に対して、英文の招集通知を添付するなどの配慮を行うべきではないか。

5 個別の議案に対しての賛成票・反対票・棄権票の票数を具体的に示すべきではないか。

6 株主総会終了後に株主と経営者との懇談会や、地方の株主を対象とした経営説明会を開く用意はあるか。

 

U コーポレートガバナンスに関して

 

7 取締役、監査役の報酬および退職慰労金については、個別の金額を開示するべきではないか。

8 役員報酬や退職慰労金は功績によって支給されるものであり、ただ社長らに一任するのではなく、広く株主の声を聞いた上で議決するべきではないか。

9 社外から取締役や監査役を迎えるにあたってはどのような基準で選んでいるのか。会社と、利害関係がある(あった)候補がいるのはどういうなのか。

10 相談役や顧問がいるとするならば、どのような基準によって選ばれたのか。また勤務内容や報酬について説明してほしい。

11  役員の定年制は実施されているか。それは厳格に守られているか。

12 投資先や出資先企業に対する株主総会の議決権行使の基準と、前年度議決権行使の結

果を示してほしい。

13 景気低迷や国際競争の激化など、企業を取り巻く環境は非常に厳しくなっている。そ

ういうなかで経営者としてどのような姿勢で経営に携わっているのか。

14       株主への配当についてどうのように考えているか。当期利益の30%程度は配当に充てるべきではないか。

15       関係会社やグループ企業への増資引受けや融資はどのような基準で行うっているのか。仮に行うとするならば、その根拠や計画を明示されたい。      

16 官僚からの天下りを迎え入れているか。いるならば人数と報酬を開示してほしい。

 

V 企業の情報開示に関して

 

17  製品のリコールや安全性の情報に関して迅速に開示しているか。

18       消費者からのクレームや要望について、相談窓口の設置や対応マニュアルの策定は行っているか。

19       公正取引委員会から審決や告発を受けたことがあるか。あるならば具体例を示してほしい。

20       会社が原告または被告となっている法的係争にはどのようなものがあるか。あるならその結果や具体的情報を開示してほしい。

21       政治献金を行っているか。行っているならばその相手先と献金日時、献金理由を開示

してほしい。

22       情報開示について、法令に定められた開示規定以上の情報についても積極的に開示し

ているか。

23 情報開示について専門の部署の設置や担当役員の配置を行っているか。

24 インターネット・ホームページによる情報開示への取り組みを具体的に示してほしい。

 

W 企業倫理とコンプライアンスに関して

 

25       企業倫理のガイドライン(自主行動基準)を細目にわたって策定しているか。またそれを一般に公開しているか。

26 コンプライアンス(倫理遵守や法令遵守)に関して専門的機関を設けているか。

27 SRI(Socially Responsible Investment, 社会的責任投資)の動きが強まるなかで、それに対する取り組みや配慮を行っているか。具体的に示してほしい。

28 公益通報が社会的に大きな役割を果たす中で、通報者の保護を行う制度(ヘルプライン)を設けているか。その制度は役員やトップの違法・不正行為に対処できる仕組みを備えているか。

29 ECS2000(倫理法令遵守マネジメント規格)の活用を行っているか。

30 総会屋や反社会的勢力との絶縁についてどのような取り組みをしているか。

 

X 雇用の問題について

 

31 全従業員に対する正社員の比率を開示してほしい。

32       女性管理職の比率と、女性の雇用条件改善、男女平等に向けての具体的取り組みを開示してほしい。

33       常用労働者に占める障害者の割合と、障害者雇用率の達成状況、雇用納付金または雇

用調整金の額を開示してほしい。

34       社内におけるセクシャルハラスメントやパワーハラスメントの防止と相談のための取り組みを示してほしい。

35       出産・育児・介護などの長期休暇制度の現状とその活用状況について具体的に示して

ほしい。

36       社内における過労死や過労自殺の防止のための取り組みを示してほしい。

 

Y 社会や環境への配慮に関して

 

37       環境に対する経営のガイドラインやリサイクル・省エネなどへの取り組みを示してほ

しい。

38 環境保護商品・エコマーク商品の開発や導入についての取り組みを示してほしい。

39 開発途上国での工場開設等に際して、労働条件はどのようになっているか。またそれ

ILO基準や日本の労働基準に準拠しているか。

40 ISO14001シリーズなどの規格を取得しているか。規格取得の状況を示してほしい。

41       セリーズ(CERES、環境に責任を持つ経済のための連合)原則を採択する用意はあ

るか。

42 環境にやさしい企業としてどんな取り組みをしているか。具体的に示してほしい。

42       地域社会への貢献や社会支援活動、メセナ活動としてどのような取り組みをしている

か。具体的に示してほしい。

43       海外向け投資のなかで人権抑圧国に対するものはあるか。もしあるならば相手国と金

額、今後の対応について示してほしい。

 

Z 決算と会計監査に関して

 

45 不良資産となっているものにはどのようなものがあるか。具体的に示してほしい。

46 企業が税務申告で使途を秘匿した金額と、税務調査で判明した使途を株主総会に開示するべきではないか。

47 寄附金など無償の利益供与はどのようなものがどの程度あるか。

48 監査法人からの指摘事項を説明してほしい。

49       税務当局から更正の通知を受けたり追徴課税されたりしたケースはあるか。また公正取引委員会から課徴金を命じられたことがあるか。あるならばそれぞれの内容や金額を開示してほしい。

50       経常利益に占める社会貢献活動費目の割合を示してほしい。またその目標などを定めているか。

 

<参考文献>株主オンブズマン編『会社は変えられる』2002年、岩波ブックレット

 

 

 

 

株主オンブズマンの株主総会改革提言

 

(1)   シャンシャン総会との決別 総会は短いほどよいという考えを捨て、営業報告を丁寧に行い、質問には誠実に答弁する。

(2)   総会開催日の分散 一斉集中を避け、一般株主が参加できるように開催日を分散する。土日や午後に開いてもよい。

(3)   社員株主によるリハーサルの禁止 一般株主の質問などを封じることになる経営陣と社員株主による議事進行準備のためのリハーサルはやめる。

(4)   社員株主の横暴自粛 社員株主の優先入場と「異議ナシ」「了解」などの一斉唱和による議事進行をやめる。

(5)   総会屋との絶縁 総会屋との腐れ縁を絶ち、総会屋に一般株主の発言を抑えて、会社側の議事進行に協力させる悪習をなくす。

(6)   総会のマスコミ公開 開かれた株主総会を実現するために議場内に記者席を設け、総会をマスコミに公開する。

(7)   社長=議長制の廃止 社長が議長の弊害を除くために、議長は社長以外の公平な議事運営ができる人を選ぶ。

(8)   議決権代理行使の規制緩和 議決権代理行使の規制を緩和し、弁護士や公認会計士の株主総会への代理出席を認める。

(9)   書面投票制度の改善 議決権行使葉書の白票を賛成とみなさず、賛否を表明していない投票は保留(棄権)として数える。

(10)          使途秘匿金の開示 企業が税務申告で使途を秘匿した金額と、税務調査で判明した使途を株主総会に開示する。

(11)          役員報酬と退職慰労金の開示 役員の報酬と退職慰労金はお手盛りで決めず、株主総会で金額を明示して決める。

1997年5月発表、98年訂正追加)


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