004年のソニーおよびトヨタに対する株主提案の結果について

 2004年7月9日
 NPO 株主オンブズマン
 
代表 関西大学教授 森岡孝二


 株主オンブズマンは2004年6月22日のソニー株主総会に向けて役員(取締役および執
行役)報酬の個別開示を求める提案を行いました。総会招集通知には5号議案として盛り込ま
れました。

 投票結果は、賛成165万7401個 反対365万8889個で、31.2%の賛成を得ることができました。
一昨年の27.2%からは4ポイント、昨年の30.2%から1ポイント前進しました。

 取締役会の中には過半数の社外取締役から構成される指名委員会・監査委員会・報酬委員会
を設置し、取締役会が経営を監督する会社を「委員会等設置会社」と言います。ソニーは昨年
の総会で委員会等設置会社に移行しました。今年の総会は移行後、報酬委員会ができた最初の
総会として開かれたものです。昨年、役員報酬の個別開示の株主提案に30%の賛成があり、
報酬委員会はそれを受けて開示に踏み切るものと期待されました。しかし、今回の総会では「
報酬委員会は個人の業績等を考慮して個別に報酬を決定した」という説明はありましたが、な
ぜ個別開示をしないのかについては、「総額開示でよい」という以上の説明はありませんでし
た。

 役員報酬の個別開示の株主提案には、昨年に引き続き、今年も上位10大株主の議決権比率
(持ち株数)の合計を上回る賛成がありました。アメリカでは株主提案に10%を超える賛成
があれば、会社は何らかの政策変更をせざるをえないと言われています。31%の賛成があっ
たということは株主多数の強い要求ーー反対票の多くは本来は棄権ないし保留を意味する白票
であることを考えると、意思表示をした株主の総意ーーであることを示しています。

 役員報酬の個別開示が株主の強い要求であることを示す投票結果を無視できずに、出井会長
(議長)は、「報酬の個別開示を求める株主提案への賛成が年々増えていることは認識してい
る。いづれ開示内容などについて検討する」と答えざるを得ませんでした。

 

 6月23日に開かれたトヨタの株主総会に対しては、増配、役員報酬の個別開示、政治献金
中止の3項目について株主提案を行いました。その結果は以下のとおりでした。
7号議案 増配      賛成  4.36% 反対 81.11% その他(無効) 14.53%
8号議案 報酬開示    賛成  19.60% 反対 78.78%  その他(無効) 1.62%
9号議案 政治献金の中止 賛成  5.44% 反対 91.89% その他(無効) 2.67%

 7号議案は当期配当金を1株当たり60円(1号議案の会社側利益処分案は1株当たり45
円)とする提案です。1号議案と7号議案に同時に賛成した人の投票は無効としてカウントさ
れています。したがって、事実上は、賛成の4.36%と、その他(無効)の14.53%を合計した
18.89%が7号議案に賛成の意思表示をしたことになります。

 8号議案は役員の報酬と退職慰労金の個別開示を求める提案です。これには約20%(19.6%)
の賛成がありました。昨年は15.8%だったので、ほぼ4ポイントの前進です。
トヨタのように外国人持ち株比率が低く持ち合い構造の強い会社で、白票をのぞいて2割の支
持があるということは、この提案が広い共感と賛同を呼んでいることを物語っています。白票
はソニーの場合と同様にトヨタでも株主提案に「反対」としてカウントされています。

 9号議案は、政治献金を行わないことを求める提案です。この提案には5.44%の賛成があり
ました。政治献金の中止要求は、企業のあり方を政党のあり方が絡んだやっかいな政治問題で
あるうえに、1兆円を超えるトヨタの巨大な利益からみると小さな額にみえることから、株主
の理解が得られにくい面があります。しかし、住友銀行に対する2000年の報酬開示提案が
3.1%であったことから考えると、5.4%の賛成は大きな成功です。
 アメリカでは最初の年に賛成が3%を超えると翌年再提案ができることになっています。
この基準からみても初年度としてはいい線をいったと言えるでしょう。

 今年のトヨタの株主総会の出席者は1,515人でした。一昨年が807人、昨年が1,173人であった
ことからいうと、これは特筆すべきことです。この増加のいくぶんかは、昨年の株主オンブズ
マンの総会日程の変更を求める株主提案で今年の総会日程が6日はやまったことや、今年も株
主オンブズマンが株主提案をしていることが生んだ「株主オンブズマン効果」によるものだと
言えなくはありません。

 役員報酬の個別開示問題にもどれば、いまや日本企業が報酬開示で新しい対応を迫られてい
ることは明らかです。株主オンブズマンに送られてきた「グローバル・プロキシー・ウオッチ
」という世界の主要企業に議決行使情報の6月25日号は、ソニーとトヨタの株主提案の投票
結果について次のように報じています。

 「投資家たちは、今週、日本企業の報酬の秘密主義にかってないほど反対した。問題の多い
ソニーでは火曜日に株主総会があり、投票の31%以上が、経営陣に公然と反対して、執行役と
取締役の個別報酬の開示を要求する株主提案を後押しした。翌日は好調なトヨタで類似の提案
に20%の支持があった。どちらの議案も、大阪に拠点をおく小額株主を代表する株主オンブズ
マンが提案したものである。いづれの賛成も2003年の数字より増えている。しかしKOの
挑戦を支持するISSの影響もあって、賛成投票をしたのは主に外国人投資家である。過去5
年の間に、オーストラリア、フランス、南アフリカ、香港などの市場が、アメリカやイギリス
に合流して、報酬の透明性を義務づけた。日本は拒んでいる。外国人保有比率の高い日興コー
ディアルと東京エレクトロン、それに小さは改革者のPeopleだけが、現在自発的に個別
報酬を開示している。投票後、ソニーの出井伸之会長は、”この問題をさらに検討する”と述
べた。彼は逃げられないことを悟るかもしれない」。

 

 今年はソニー、トヨタ以外にもみずほその他数社で役員報酬の個別開示を求める株主提案が
あり、それぞれ高い支持を集めた。経営者は、「経営の透明性を求める株主の声が一段と強ま
っている」(読売新聞6月28日)ことを重く受止め、いまこそ役員報酬の個別開示に踏み切
るべきである。


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