多発する企業不祥事に思う       佐高 信


 1 はじめに−−「暗黒企業」を開く

 このところ総会屋のことが問題になっています。総会屋は良い奴だとはとてもいえないのですが、問題は総会屋という悪い奴が会社に食い込んでいるということではなくて、会社あるいは社長や会長が、総会屋を飼育してきたということなんですね。『シャワッチ』の一号を拝見して、そういう会社というものの悪辣さを抉る点で、ドロドロ感が足りないなあという感じがいたしました。編集長の池田さんの人柄を反映しているのかどうか知りませんが、なかなか綺麗である、上品である。しかし、野菜でも泥が落ちたものより泥付きのほうがいいっていう場合もあります(笑い)。

私は雑誌をやっていた時代に、そういう泥付きのきわどい本を一生懸命捜してまして、『暗黒企業』なんていう本を、あまり大きくない、一生懸命捜さないと出てこないような本屋で手に入れたことがあります。さまざまな株主総会を実際に録音して売ってるんですね。株主総会をこっそり録音して、それを総務の人に売りつけるわけです。総務の方は高い金で買う。そういう株主総会そのものが入っている凄まじく泥付きの本というのがあるんですよ。

 そういう本が私の本棚に五、六冊ありまして、小池隆一という名前が出てきたときに、あまり聞いたことねえなあなんて思いながら、このまえその『暗黒企業』という本を開いたんですね。そしたらなんと一九七六年六月の全日空の株主総会で小池がしゃべった部分が出てきた。

2 一九七六年の全日空の株主総会

 一九七六年というと今から二一年前、小池隆一は三〇歳そこそこですね。私はその年の全日空の株主総会のことを『週刊読売』のコラムで紹介したんですけれども、この一九七六年というのは、いうまでもなく若狭が逮捕された年です。夏に逮捕される。その直前の六月末の株主総会、議長は社長の若狭ですね。

 それぞれの会社の株主総会には幹事総会屋というのがおりましてね。上森子鉄という人が全日空のいわば幹事総会屋だったわけです。彼は『キネマ旬報』という映画雑誌のオーナーでした。ついでにいえば木島力也は『現代の眼』を出していた。それから小川薫というのはピンクレディーのオーナーだったんですよね。だから総会屋というのはカネをもっていて、何か副業を、どっちが副業か主業か知りませんけれど、やっている人が多い。その上森子鉄に小池は取り入ったわけです。小池は上森の名代みたいにして、たぶんその年の全日空の株主総会を仕切ったんだろうと思います。

 ほんとうはロッキード事件が発覚して、ロッキード事件を起こした若狭が退けば話はそれで終わりだったのに、やっぱり退きたくなかったわけですよね。それで自分が続投したいが、株主総会を簡単には乗り切れない。そういうときに小池に野党総会屋を抑えさせるわけですね。実際それでもなお反対する奴なんかは暴力を使ってぼこぼこにやったりする。今は監視が行き届いてきましたのでそういうことはなくなりましたが、彼らは暴力団とタッグマッチ組んで、ほとんど総会屋と暴力団の区別がつかなくなってますから、実際にパイプ椅子かなにかでぼーんと頭を殴ったり、凄まじいことが行われるわけです。こういう時期の総会で、若狭は議長としてこういうふうに述べている。

 「ロッキード問題に関しては、私自身が偽証容疑で告発されているばかりでなく、幹部三名が逮捕されるというかつてない重大な事態になりました。株主各位には多大なご心配をかけ、まことに申し訳ございません」。「現在社内にあってはかつてない強い団結で経営陣と社員が一丸となって安全運行と業務向上に努めております。なおいっそうのご支援をお願いしたい」。というふうなことを言うわけです。そしたら、「了解」「了解」とかカネもらってる人たちが言うわけ。決算案のところになったら、「進行させていただきます」と小池が立ち上がる。小池が立ち上がってこういう演説をするんですね。

 「いうまでもなく当社はロッキード事件の渦中にあり、沢雄次専務、植木業務部長、青木経理部長の三人が逮捕されている。さらに若狭社長あるいは渡辺副社長も偽証の疑いが濃いということで会社ぐるみ灰色の疑いをかけられ、また一方では粉飾決算ではないかということで大蔵省が調査したということも聞いている。もちろん私はこの席でシロだとかクロだとか言うつもりは毛頭ない。正直に申し上げて、当社はシロである、株主として信じている、信頼しているというと嘘になる。明日にでも若狭社長あるいは渡辺副社長が逮捕されるのではないかという不安な気持ちを抑えることはできない。だからといって、現在、警察・検察庁は国会で真相を究明中であり、いずれ白黒がはっきりするものを、この席でただいたずらに追及することが果たして当社百年の大計にプラスになるかどうかよく考える必要があるのではないか」。ここらへんが与党総会屋と呼ばれる人の常套文句なんです(笑い)。

 「ここで間違った責任追及をして将来に大きな汚点を残すよりも、むしろ現時点では若狭社長以下全役職員に、あらためて当社は航空会社であり、人命を預かっていることを認識し、安全運行がまず第一であるこことを肝に銘じて、ただただこれのみに責任を全うしていただくよう株主としてお願いする。株主から心配のあまりいろいろな意見や忠告があろうかと思うが、事件を追及してみたところで、警察・検察庁で目下取り調べ中のことであり若狭社長としても答えられないだろう。またここで責任を追及することによっていたずらに株主総会を長引かせ、変な誤解や疑惑を招くよりも、決算案については満場一致で可決決定し、もしご意見があるなら後ほどということで」と言っているんですね(笑い)。

 ここで盛大な拍手が起こり、若狭が「助かった、予定通り」という感じで提案通り承認可決されましたというふうに逃げ込む。つまりそういう役回りをする人間を飼ってきたわけですね。だから会社がつけ込まれる隙を持っていて、悪い奴がつけ込んだというんじゃなくて、会社が飼ってきたんですよね、あの人たちを。この場合でも、全日空のためにと言うけど、若狭のためでしょう。そこのすり替えも見事に行われるわけですね。 ついでにいうと、私は例の「自由主義史観」というのは「総会屋史観」だと思ってるんです。小池と同じように、いたずらな責任追及はやめろと言うでしょ、あれは。だから「総会屋史観」と名付けてコラムを今度、『週刊金曜日』にでも書こうかなと思ってるんですけどね(笑い)。

3 企業のヤクザ化とヤクザの企業化

 今から六年前、私は『サンデー毎日』に、企業のヤクザ化とヤクザの企業化が凄まじい勢いで同時進行しているという文章を書いたことがあります。それを書くきっかけとなったのが、野村証券の稲川会前会長石井進への損失補填、利益供与でした。そういう企業のヤクザ化とヤクザの企業化のなかでも、銀行のヤクザ化とヤクザの銀行化が凄まじい勢いで同時進行したんだろうと思います。

 そのスタートとなったのはいうまでもなく、住友銀行による平和相互銀行の吸収合併事件であるわけです。平和相互銀行というのは、関西の人にはあまり馴染みがないでしょうけれども、東京を中心として非常に支店が多い。この銀行は、別名「闇の世界の貯金箱」と呼ばれた銀行だった。つまり、いわば船底の牡蛎のように、凄まじくびっしりと闇の世界の人間が貼り付いていた。それで、それがばれたときの手当というか、用心のために岸信介、福田赳夫、田中角栄、中曽根康弘、以下いわゆる大物といわれる政治家に多額の政治献金をしていた。

 それを住友のドンである磯田一郎が、いわば関西のトップから全国区のトップの銀行になろうという野望の下に平相の吸収合併をはかった。ときの大蔵大臣が竹下登。私はこの人のことを日本のオンブオバケと言っていますけれども(笑い)、なかなか成仏しないわけですね。その竹下が住友に非常に有利な形で平和相互銀行の吸収合併をさせるわけです。その過程で囁かれたのが金屏風疑惑ですね。

 一応図式的に話しますと、会長が磯田一郎で、頭取が小松康という人だった。まあ小松でなくともまともな銀行家なら、その平相の吸収合併には二の足も三の足も踏むんですよ。だから小松は反対するわけですね。しかし、力が全然違うから一蹴されて、小松は少しは闇の世界との関係を整理しようというふうに考えたわけです。それで少し闇の世界との関係を切り始めたときに起こったのが、住友銀行東京本店糞尿譚事件。きれいな東京本店に糞尿譚がばらまかれるわけです。これは闇の世界からの、「俺たちとの関係を切ろうってのかよう」という脅しだったわけですね。そしたら磯田はびっくりして、闇の世界との関係を切らずに頭取の小松の首を切ったわけです。任期前、前代未聞です。そのときは目が悪くて耐えられないとか何とかいう理屈をつけましたけれども。任期前に突然小松の首を切った。ということは、闇の世界に対して「あなた方との関係はこれからも続けますよ」と言ったに違いないんです。だから糞尿弾は二発は投げられなかったわけです。

 それで住友銀行はがっちりと闇の世界に食い込まれて、闇の世界と二人三脚を組んで、凄まじいバブル経済の道を突っ走って行くわけです。これはつまり住友銀行がヤクザ銀行になったということなんです。それで地上げなりなんなりとやる。まさに関西の名門商社だった伊藤萬を住友銀行不動産部、住銀不動産にして、凄まじい地上げのやりたい放題に走っていくわけですね。伊藤萬の常務の伊藤寿永光がまさに闇の人間だった。住友のそういういわばヤクザ商法というのが括弧付きの成功を収めたのを見て、富士銀行が追いかけ、三和銀行が追いかけ、日本興業銀行がそのあとを追いかけ、すべての銀行が住友銀行化、つまりヤクザ銀行化していったわけです。これがバブルなんですね。バブルというのはつまりヤクザ経済ということであるわけです。

 そのバブルが崩壊したということで、ヤクザの闇の世界からもお金を取り立てなきゃならなくなった。そのときに起こったのが住友銀行名古屋支店長射殺事件ですね。その前に阪和銀行の副頭取が殺される事件があった。それで銀行の頭取たちは一斉に、取立止めという話になるわけです。で不良債権をどこから取り立てるか。政治献金をしている政治家を動かして、税金から出させようというのが住専問題だったということになるわけです。

4 銀行トップのレベルの低さ

 去年、シティ・バンクが「金融御意見川柳」というのを募集しましてね、審査員をやれっていう話を持ってきたんです。日本の銀行が私にそんなことを言ってくることは絶対にない。ほとんど指名手配みたいなものですから(笑い)。ただ私もシティ・バンクに気の毒だから、知らないで言ってきたんじゃ悪いと思って、私なんかにさせると大蔵省に睨まれますよと言ったんです。そしたら、外国銀行は睨まれるほど保護されてないって言うんですよ(笑い)。大丈夫ですといって、私と山藤章二さんと木元教子さんで川柳を選んだ。やっぱり国民はちゃんとわかってるんですね。

 そのときに私たちが第一席に選んだのが「国民を無理矢理連帯保証人」。だからちゃんとわかってるわけ。あるいは、第一席ではなかったけれども、「このごろは金利も頭もアメリカン」という句ね、ちょっと差し障りがあるかもしれないけど(笑い)。「金融界あなたの常識非常識」。第一勧銀ではぴったしですよね。あるいは「通帳のシミかと見れば金利なり」という。「虎の子の亡命先を考える」っていうのもありました。あるいは「あの銀行昔の名前はなんだっけ」というのもありましたね(笑い)。やっぱりちゃんとわかってるんですよね。

 日本の銀行のトップのレベルの低さというのは凄まじいものがある。今まさにそれが白日の下にさらされているわけです。私、横文字はあんまり達者じゃないから非常に困るんですけど、最近私のところにも外国のメディアから取材が来るわけですね。フィナンシャルタイムズとかニューヨークタイムズとかいろいろくる。事務所の電話を取ったらペラペラペラペラ横文字が耳に入ってきて、私は「ジャストモーメント」とか「たくさんモーメント」とか言うわけです(笑い)

 最近いちばん困った質問は、大和銀行ニューヨーク支店の事件が起こったときです。あのときの副頭取の海保孝、今は頭取やってるみたいですけれども。あの人がなんと言ったかというと「うちは被害者だ」と。自分のところの社員が起こした事件に、うちは被害者だっていうアホな話があるか。外国のメディアがびっくりして、Why?、なぜ、って言ってくるわけですよね。答えがわからないから困ったんじゃなくて、答えはわかりすぎてるけど、言いたくないから困ったわけ。答えはひとつ、パーだから、それしかないんですよね(笑い)。Stupid でしょ、ほんとに。それしかない。自分のところの社員が起こした事件にそういう発言をしてどう受け取られるかっていう考える頭がないわけ。そういう人が頭取をやってて勤まるのが日本の銀行のトップなんです。それはいうまでもなく、大蔵省のいうとおりやっていれば誰でもできるから。変に自分の意志もってたらまずいわけです。かかしの方がいいということなんです。だから、限りなくパーになるんですね。海保という人に私なんの個人的恨みもないけど、そういう人がまだ頭取やってる。

 東京協和信用組合と安全信用組合。いわゆる東京二信組の問題で日本長期信用銀行の頭取の堀江鉄弥っていう人がやっぱり国会に呼ばれたんですね。東京協和の高橋治則という理事長は、ワルはワルなりに一応そらで答えてるわけ。ところが長銀の堀江鉄弥という人は、自分が国会に呼ばれるまでに時間もあった。あるいは長銀にとって高橋治則の絡んだイ・アイ・イ・インタナショナルのプロジェクトは荒稼ぎしたプロジェクトなんですよね。それなのに国会に呼ばれて秘書が作った原稿を棒読みしたんですよね。質問と合わない場面もあった。あんまりにひどいんで、自民党の予算委員長がなにか注意した。原稿を下に置いたらなんにも答えられないわけですよ。東京の本郷の大学を出た人らしいけども、答えられない。それがテレビで全国に中継された。

 それを見たTBSのニュース23の若いディレクターが電話をよこして、「佐高さん、ひどいもんですね、あれが天下の長銀の頭取ですか」と言うわけですよ。だから私も余計なことをひとこと言っちゃってね。「おまえんとこの社長だって似たようなもんだぞ」と(笑い)。そしたらまもなくTBSのオウム事件が発覚するわけですよ。予想が当たっちゃったんです。ほんとにレベルがひどすぎるんです。

 あるいは富士銀行の当時の頭取、いま会長になってる橋本徹、当時全国銀行協会連合会の会長だったけど、あれが国会に呼ばれて何と言ったか。住専の税金拠出に国民の八割が反対している、それが問題になって揉めてるときにですよ、国会に呼ばれて橋本は、これから役員賞与の返上を考えますと言ったんです。ちょっとまて、お前まだボーナスを取ってんのかっていう話でしょ。取ってたんですよ、あのとき。そういう感覚ね。ディスクロージャーとか何とか言うけど、自分たちの取ってる月給も言わないわけでしょ。

 週刊誌情報によると、大手都市銀行の頭取で年俸一億、退職金五億とか言われてます。さっきの長銀の堀江鉄弥の前の頭取の杉浦敏介、この人が今度退職金二五億円もらうっていうんですよ。長銀のほうはこれをひた隠しにしてきたんですね。それがどっかの雑誌に出て今大変な問題になってる。バカか、自分たちが起こしたことの責任も考えずに。そういうのしか銀行の頭取になってないんですよね。だから私はかつてテレビで、政治家にモラルを求めるのはゴキブリにモラルを求めるに等しいと発言して物議を醸して、羽田孜が怒ってTBSに電話して抗議したんですけど。私は羽田孜を悪い人だとは思いませんよ。羽田孜がいい人であることに私も異議はない。ただ、その上に「どうでも」を付けたい(笑い)。しかし今は政治家にモラルを求めるのはゴキブリにモラルを求めるに等しいとは言わない。今は、銀行および銀行の頭取にモラルを求めるのはゴキブリにモラルを求めるのに等しい。むしろゴキブリがかわいそうだというぐらいの話なんです(笑い)。頭取だけじゃない、すでに銀行員だってモラルをなくしてなきゃ勤まらないですよ、バブルなんて。モラルなんて残してたら置いて行かれる。そこにモラルなんて言ったら無い物ねだりの話なんですよね。

 いい人ってのは、自分と等身大で相手を考えるという欠陥がある。しかし、悪い奴はどこまでも悪いんですよ。必ずなにかいいところがあるはずだなんてそんなバカな話はない。悪い奴は徹底して悪い(笑い)。そいいう悪に対する想像力が、いい人には欠如してるんですね(笑い)。私の亡くなった叔母が言ってましたけど、戦争のこと話すと、「そんな悪いこともう起こらねえ」と。そんなことはない、いくらでも起こるんですよね。私は、例の住専、税金拠出の六八五〇億円ってのは、頭取たちに個人負担させろって言ったんですよ。まあ頭取だけじゃなくて農協のボスなんかも含めで、歴代の銀行局長なんかも含めで、ああいう人たちに個人負担させろ、私財を提供させろということを朝日に書いたんですね。そしたら「過激なご意見ですね」でおしまいになる。過激でもなんでもない。昭和二年の金融恐慌のとき、東京渡辺銀行のことを『失言恐慌』と題して書きましたけど、やはりオーナー家は財産全部出してすってんてんになってますよ。あのとき以上のことを銀行はバブルでやったわけですね。それなのに頭取たちはなんにも責任を感じてない。六八五〇億円にかわるものを出せと言ったら、株主代表訴訟に引っかかるからとごたくをならべた。だったら個人的に先に出すなら何にも引っかからないじゃないかというふうに言ったんですけれども、まあ過激なご意見ですねでおしまいだった。

 去年の一月、北海道経済同友会の総会に呼ばれたんですね。その講演会の場所が北海道拓殖銀行の本店会議室でした。目の前に拓殖銀行の頭取とか北海道銀行の頭取とか並んでるわけですよ。生来私も気が小さい方ですから(笑い)、少なからずプレッシャー感じたけれども、場所によって言うこと変えちゃいかん(笑い)ということで、頭取たちは私財を提供せよということを言ったわけですね。そしたら新聞記者もたくさん来てたんです、総会ということで。読売のある記者が聞き違えて、「佐高氏、頭取に死罪を適用せよと主張」と書いてあるんです(爆笑)。私は「私の財」、「私財」を提供しろと言ったんです。命まで取ろうとは言ってません(笑い)。あとで事務局があわてて訂正を申し入れてましたけども。私はどこか、訂正を申し入れる気にはならなかった(笑い)。そう受け取られ兼ねない雰囲気でしゃべったのかもしれない。

5 一斉株主総会とディスクロージャー

 外国のメディアから取材されると返答に窮することはほかにもあります。日本は六月二七日に一斉株主総会なんてとんでもないことをやります。要するに六月末の同一日に一斉に株主総会をするということは株主総会をしてないということなんです。今年も、野村でも一勧でもあれだけ問題になってもまだ二七日にやるでしょ。あの日に三月期決算の九割を越える企業がやるわけですが。あれは全部自分のところは総会屋と関係がありますと言っていることですよ。

 この間、テレビ東京の座談会で、松下電工の三好俊夫という会長といっしょだったんですね。私は松下というのは嫌いな企業の第一位です。うちには松下の製品はありませんからね。本当は日立も東芝も拒否したいんだけどそうすると暗闇の中で暮らさなきゃならないんで(笑い)、とりあえず松下にしぼっている。電工の三好っていうのはちょっと違うんですね。私、それをわかっていながらもつっかかっていろいろ言いましたけど、三好という人は二七日に株主総会やらないって言うんですよね、別の日に五時間でも何時間でもかけてやるって言うわけですね。ほかの企業もそれができるわけですよ。やればできる話なんです。いっしょに出てた東海総研の水谷、東海銀行の常務だったんですけど、それは難しいと言う。東海銀行は絶対カネを出してると思いますね。

 今度の第一勧銀の場合でも、小池隆一に貸したカネの焦げ付いたのが七〇何億円というわけでしょ。だったら羽倉とか藤森とか宮崎とかの頭取・会長経験者、いちばん最初に退任することに決まった七人いるんですよ。あいつらに一人一〇億円ずつ負担させればいい。少なくともその分はね。悪うございましたと辞めて済む問題じゃないんであって、そういうふうな議論が起こってこなければならない。まあ株主代表訴訟が起これば、会社に損害賠償せよということになるでしょうけど。

 銀行のディスクロージャーというのは凄まじくひどい。住専のときにもいろいろ話しましたけど、西の住友、東の富士ってのが行儀の悪い銀行の双璧ですからね、その二つの銀行の、今から六年前の一九九一年版のディスクロージャー冊子を取り寄せたことがあるんです。皆さん方も是非銀行に行って、ディスクロージャー冊子をよこせ、預金者だ、と言ってごらんなさい。なくてもいいんですよ、預金が。そのくらいの嘘はつかなきゃだめ(笑い)。あいつら嘘ついてるんだからね。私はあの「清く正しく美しく」というのは嫌いです。宝塚的お上品主義ではだめ。向こうは凄まじく悪辣なんですからね。そいつらに清く正しく美しくでは、狼の前に自分から身を投げ出すようなもの。「フェアプレーは時期尚早」と魯迅は言ってるんですよね。

 そのディスクロージャー冊子のことですが、なぜ九一年版かというと、九〇年に住友で伊藤萬事件、富士で巨額不正融資事件が起こってる。それをどう書いてるのかということに興味があって調べたわけですね。たいしたものじゃない、カラーで、学生向けの会社案内に毛の生えたようなやつですよ。表紙を開くと、頭取とか会長のニタッと笑った、ニコッと言うんですか、そんな写真が出てきます。そんなに厚くない冊子を最初から最後まで見たけども、九一年版の住友のそれには伊藤萬のイの字もありません。それどころか、冒頭「当行は明治二八年の創業以来堅実経営に徹してきた」と書いてある。伊藤萬事件の次の年ですよ。なめんなよという話でしょ。堅実経営に徹してお前のところは伊藤萬事件を起こしたのかっていう話になるわけですね。それで当期のトピックスという欄があって、その欄には「銀行のテレビコマーシャルが解禁されて当行はイメージキャラクターに浅野ゆう子を起用した」と書いてある。伊藤萬のイの字もなくて浅野ゆう子。富士銀行はどうかというと、女子行員のユニフォームを一新したと書いてありますよ。これが日本の銀行のディスクロージャーなんです。まさにこれはクロージャーなんですね。

 聞くところによると、アメリカの銀行ではマイナス情報をちゃんと書くんですね。政治献金を誰にどれだけだしてるとか、こういう問題で訴えられてるとか、つまりマイナス情報を書かなきゃそれはディスクロージャーにならないわけですよ。富士銀行だったら、何年か前、女子行員の過労死事件で訴えられてたわけですから、そういうのを書かないとディスクロージャーにならない。

6 おわりに−−会社国家を民主国家に

話が飛びますが、泥をすくうためには自分の体のどこか汚れる場合はあるんですね。ただ、泥の中に入ってしまってミイラ取りがミイラになったら、これは大変なことになる。

九州に私の尊敬する松下竜一さんという、九州電力の火力発電所阻止ですか、原発なんかにも反対してる作家がいますけど、あの人が九州電力に対して訴訟をやったんですね。株主総会に出ると総会屋がやってくるそうです。協力を申し出てね。森岡さんところにも来てるのかもしれませんけれども(笑い)。彼らの掴んでくる情報は、カネが目当てですから、蛇の道は蛇で本当に凄いのを拾ってくるわけですよ。その辺をミイラ取りにならないようにして情報だけパッとたぐるとかいうふうなこともあるいは考えられてもいいかもしれない。あんまりやばいことはやらないほうがいいという意見もあるでしょうけども。

 『シャワッチ』ですが、まあほんとうに、大事な時期に大事な雑誌が出たなあと思いますね。日本の会社がまともになるのに何年かかるかわかりませんけれども、あるいは何年かかってもまともにならないかもしれないけれども、しかし、いつも言うことですが、マイナス一〇がマイナス八になるのもやはり進歩ですから。そういうことを考えながら、少しは会社国家日本、官僚国家日本を民主国家日本にするために私も努力していきたいと思います。


(一九九七年六月一三日エル大阪で行われた佐高信氏の講演を『シャワッチ』編集部の文責でまとめました)


佐高信氏講演 (file.1107)終わり
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