株主オンブズマン通信 第1号  (file.1123)  1996/4/4


 2月8日の株主オンブズマンの設立総会から早2か月になります。旗揚げが住専問題が沸騰する時期と重なり、初仕事として「銀行・住専110番」に取り組んだことから、わたしたちの組織と活動がマスコミで大きく報じられ、一挙に世間に知られるようになりました。しかし、「走りながら考える」「歩いているうちに道ができる」という大阪の市民運動の腰の軽さを地で行くようなあわただしいスタートであっただけに、会員のかたがたに会報を通じて会の活動をお知らせするという初歩的なこともできずにきました。6月の日住金の株主総会までは住専問題への対応に追われ、腰を落ちつけて組織固めをするのはいましばらく先になりそうですが、とりあえず発足2か月の時点で、会報として「株主オンブズマン通信」第1号をみなさまにお届けすることにいたします。

今までの主な活動(1月24日〜3月4日)

1月24日 会社設立登記

2月8日 設立総会   代表に森岡孝二(関西大学教授)、熊野実夫(公認会計士)、木村陽吉(市民代表)の3      氏を選出
2月10日 第1回「銀行・住専株主110番」実施
2月 日 インターネットに「株主オンブズマンのページ」開設
      アドレス http://www.tuat.ac.jp"halla/OMUBUDSPERSON/index-j.html
2月21日 拡大専門家会議
2月22日 住専処理の情報開示を求め日住金に通告書を送付
2月28日 東京地検に住専上場2社(日住金および第1住金)を証券取引法違反容疑で告発状を提出

3月8日 専門家会議 
3月9日 「朝日」「毎日」、株主オンブズマンの調査をもとに、日住金株の金融機関による1992年以降の大量売     却・売り抜け(インサイダー取引疑惑)を朝刊一面トップで報道
3月9日 第2回「銀行・住専株主110番」実施
3月13日 森岡代表の投稿「企業経営に今こそ厳正なルールを」「朝日」論壇に掲載3月3月15日 『商事法務』3      月号のトピックス欄に「株主オンブズマンと代表訴訟の新展開が載る
3月17日 専門家会議
3月18日 東京地裁に日住金取締役会議議事録閲覧等許可申請
3月19日 「住専処理 怒りの市民法廷」が開かれる
3月21日 日住金へ株主名簿謄写申請書を送付
3月25日 『取締役の法務』3月号に「株主オンブズマンの活動方針」が載る
3月29日 拡大専門家会議、株主金株主の会(仮称)結成

4月1日 NHK「きんき」、株主オンブズマン発の「住専個人株主の反乱」放送
4月2日 NHK「おはよう日本」、株主オンブズマン発の「住専個人株主の反乱」放送

株主オンブズマンの活動紹介−−インターネット画面から
*株主オンブズマンへのご案内

 <設立の経緯>

近年、市民の常識では納得できない国や自治体や企業の不祥事があいつぐなかで、市民の立場から行政や企業活動を監視する運動が広がり、大阪の「市民オンブズマン」のように、弁護士が中心になった監視組織も生まれてきました。

企業活動の監視については、1993年の商法改正によって株主代表訴訟の手数料が一律8200円になったことから、いくつかの代表訴訟が起こされ、ハザマ役員の自治体首長への賄賂事件での勝訴判決(94.12)や、関電、大ガス、大林組3社に対する大阪知事候補への政治献金差止訴訟での、献金しない旨の和解(95.7)などの成果があがっています。

このたび活動を開始した「株主オンブズマン」は、これまで市民オンブズマン型の株主代表訴訟にかかわってきた弁護士を中心に、趣旨に賛同する株主や専門家や支援者の協力をえて、設立されました。組織母体を有限会社にしたのは、市民株主の登録や財政活動の法的責任主体をはっきりさせるためであって、実際には、市民運動型の公益目的をもつ非営利のボランティア組織であります。

 <目的と活動>

本法人は次のことを目的として活動します。

(1)株主および市民の立場から、企業に関する監視・調査・研究を通して、企業の健全な  活動を推奨し、違法・不正な行為を是正する。

(2)企業経営の透明性を確保し、違法性をチェックするために、必要な情報の開示を求める。

(3)企業経営に法違反があるか、著しく合理性を欠く場合には、株主の協力をえて取締役な ど会社役員の責任を明確にする。

(4)講演会、シンポジウム、出版活動等の企画実行。

(5)株主代表訴訟をはじめ、株主の企業内における地位向上に関する提言活動。

 <組織と会員>

 本法人は、株式登録会員、専門家会員、ボランティア会員を置く。

 本法人の趣旨に賛同する株主は個人、法人を問わず、株式登録会員になることができる。但し、暴力団、総会屋、事件屋的株主は会員にはなれない。

 本法人の趣旨に賛同する弁護士、公認会計士、税理士、学者等は誰でも専門家会員になることができる。

 本法人の趣旨に賛同する市民はボランティア会員として、本法人の企画、活動等に協力し、かつ参加することができる。

<当面の活動>

本法人は96年2月8日に設立総会を行い、最初の仕事として、焦眉の住専問題に取り組むことになり、2月10日に「銀行・住専110番」を実施しました。当日は116件、その後を合わせると、200件を超す相談・問い合わせ・申し込みがあり、株式登録は、設立総会までに登録された件数を合わせると全業種で100銘柄を超え、住専の上場2社だけで15名の株主の方から株式登録の申し込みがありました。21日には住専の大弁護団を発足させ、商法に定められた株主の権利を行使して、取締役会の議事録を裁判所を通して閲覧・コピーさせる訴えを起こす予定です。ここ数年分の議事録を見れば、住専経営の実態をかなり詳細に明らかにできるものと期待されます。

 株主オンブズマンとしては、住専問題にとどまらず今後広く株主と市民の立場から企業活動を監視する活動をすすめることにしています。そのために、株式登録会員のほかに、専門家会員(学者、弁護士、公認会計士、税理士など)とボランティア会員をおいて、企業監視の幅広いネットワークをつくろうと呼びかけています。ご希望の方には事務所から関係文書をお送りしますので表記の電話またはFAXでご連絡下さい。

 

*拡大専門家会議開かれる

 2月21日「株主オンブズマン専門家会議」が約20名の専門家会員の参加の下に開かれました。この会議では、これまでの活動について事務局から報告があった後、当面の活動について次の諸点が討議され確認されました。

@住専・銀行に限らず全上場会社について広く株式登録会員を募ると同時に、住専等の情 報をお寄せいただくために、2度目の110番を3月9日10:00〜15:00に行う。

A一両日中に日住金に情報開示請求を行い、7日以内に開示が得られない場合は、商法の 定めにしたがって、ただちにここ数年の取締役会の議事録請求訴訟を起こす。

B近日中に東京地方検察庁に対し、市民数名の告発人を支援して、日住金および第一住金 を証券取引法違反で告発する。

Cこれらの結果をふまえて3月19日午後6時より市民集会を開く。

*住専上場2社を証券取引法違反の罪で東京地検

2月23日、大阪と東京の市民グループが株主オンブズマンの支援のもとに、住専2社を証券取引法違反の疑い東京地検に告発しました。日住金は、平成7年3月決算の有価証券報告書において、回収不能債権が8022億円あったにもかかわらず、回収不能見込額を示す貸し倒れ引当金を789億円しか計上せず、第一住金は、回収不能債権が5839億円あったにもかかわらず、貸し倒れ引当金を696億円しか計上せず、債務超過のところをいずれも虚偽記載および粉飾決算をしていました。今回の告発は直接には住専2社の現社長2名にたいしてなされたものですが、検察庁当局はこの告発を受けて、歴代の代表取締役、賛成決議の取締役、経理を承認した監査役、公認会計士等の責任も追及できるはずです。

追記:3月29日の読売新聞ニュース速報によれば、すでに東京地検特捜部は上記の住専2社から帳簿など経理関係資料を入手して乱脈経理の実体の追及に乗り出したようです。

 

*金融機関がインサイダー取引の疑い?

日住金の有価証券報告書を細かく見れば、金融機関は91年度まで株式数の7,8割を所有していましたが、先頃ようやく報告書が公開された大蔵省の第一次立入調査と時期を合わせるように、株を手放し始め、94年度ではほとんど5割にまでシェアを下げています。かわりに91年度までは1割足らずの株式数しか所有していなかった個人株主が94年度には全体の3分の1強の株を所有するに至っています。金融機関が日住金の株を大量に売却し始めたのは94年4月からですが、この時期は93年12月に大蔵省が調査に入り、不良債権が6627億円(29.1%)もあることが明らかになり、第一次再建のために、母体行、一般行が動き始めたときでもあります。母体行は親会社としてこの後も日住金の株を抱えていますが、他の金融機関はその後の1年間に2000万株も持ち株を減らしているのです。大量の売りで下落し始めた株を買ったのは個人株主(大衆投資家)ですが、その株はその後さらに下がり、今では最高時のほとんど100分の1になっています。こうした経過と背景からみると、金融機関がインサイダーとして知り得た情報をもとに売り抜けし、紙屑になる運命の株を個人株主がつかまされた疑いがあります。今後早急に本社(東京)で株主名簿を閲覧して、いかなる金融機関がこの間に売り逃げしているのかを調べ、場合によってはインサイダー取引として告発することも考えています。

 

*日住金株のインサイダー取引疑惑報道

3月9日の朝日新聞と毎日新聞は朝刊一面トップで株主オンブズマンが提供した資料にもとづいて、大蔵省の日住金に対する立ち入り調査のあった92年に金融機関による日住金株の売り抜けがあったことを報じ、インサイダー取引の疑惑ありと指摘しています。同年に日住金の株の売買高が最も多く株価が最も動いたのは8月です。同月の14日には最安値の97円まで下げ、20日には1千万株を超える大商いとなり25日には最高値の480円をつけています。個人株主が後に紙屑となる株を抱かされたのはこの時期のことだと思われます。

 

*第2回「銀行・住専株主110番」の結果報告

 3月9日、AM10:00〜PM3:00で行われた株主オンブズマンのよる第2回「銀行・住専110番」には、合計110件の相談がありました。内訳は、住専株主28件(日住金25件、第1住金4件、1件は重複)、株式数は日住金17万2000株、第1住金1万1300件です。株主の多くは、野村などの証券マンに、「大蔵省がついており、銀行が支援しているので大丈夫だ」「再建計画がたしかだから心配ない」と言われて買い、かみ屑になった。不良債権や破産状態を隠してこんなことになったのは許せない、と語っています。

今回の相談では、暴落した日住金の株を7万株もっているうえに、日住金から3000万円の住宅ローンを借りているという人から、「私はしっかり返しているが、不動産関係の借り手企業が借り手責任を果たさないのは不公平だ」、という怒りも寄せられました。また六甲アイランドの仮設住宅に住む震災被災者からは、第1住金の株で大きな損失をだしたという訴えがありました。

今後、株主オンブズマンでは日住金の株主団をつくり、株主権を行使して、日住金の個人株主の名簿を調べ、株主団から個人株主へ呼びかけをし、帳簿閲覧などを行っていき、株主の立場から政府の住専処理策に風穴をあけていこうと考えています。

 

*日住金の取締役会議事録の閲覧許可申請

 株主オンブズマンは、3月18日、日住金の取締役会議事録の閲覧・謄写の許可を東京地方裁判所に申して立てました。これは同社の株主9人の依頼を受けて行われたもので、今後、商法267条に基づく株主代表訴訟を遂行し、善管注意義務違反に基づく損害賠償について取締役の責任を明らかにするために不可欠な手続です。議事録の閲覧・謄写の対象とされているのは、@1986年1月から1996年2月までの末野興産等40社の大口借り手に対する融資貸付ならびに返済状況について議論された部分、A1985年1月から1996年2月までの間の、融資貸付の審査基準の設定ならびにその改訂・運用について議論された部分、B1988年1月から1996年2月までの間の、群栄化学工業の株式売買について議論された部分となっています。

日住金は1985年に国鉄所有地架空払い下げをかたる詐欺にあい33億円をだましとられていますが、このときは「手付金」として金をわたして担保もとっていませんでした。しかも、33億円もの支出に融資担当取締役会なども開いていなかったことが明らかになっています。この一事から押して、その後も経営上の重要事項について取締役会でほとんど議論されず、したがって議事録にもみるべき記録がほとんどないと考えられますが、それはそれで同社の放漫経営、ずさん融資を証明するもので、役員の責任はまぬがれないものと考えられます。

 追記:この訴訟については4月5日に第1回審尋が行われる予定です。

 

*「住専処理・怒りの市民法廷」が開かれる

3月19日、大阪市北区の新阪急ビル12階スカイルームで、約60名の市民の参加を得て、株主オンブズマンの呼びかけによる「住専処理・怒りの市民法廷」(模擬裁判)が開かれました。裁判は大蔵省元銀行局長、三つ葉銀行頭取、全日住金元社長の3人を被告人に、農水省元経済局長、全日住金元社員が証人、株主オンブズマンのメンバーが裁判官になりました。弁護人を含む出演者には大阪・神戸の市民劇団の方々にご協力いただきました。

 法廷では、検察官と市民が3人の被告に対しバブルに踊って不良債権を膨らませた責任を追及し、住専処理に税金を投入する政府案を批判しました。また、法廷は、証人尋問、被告人質問が終わった時点で、会場の約65名の参加者のうちから5、6人に意見聴取をしたのち、論告求刑に入り、被告全員の私財没収を当然のこととした上で、3人の被告人についてそれぞれ懲役刑の刑期を@終身刑、A20年、B30年のいずれにすべきかを参加者に尋ね、3被告とも圧倒的多数で終身刑に処すことなりました。そのあと裁判長は職権で本法廷で被告人にならなかった以下の人々にも、次のような刑を科すことを申し渡しました。最後に市民法廷に参加した人々は集会決議を確認して散会しました。

大蔵官僚−−−公職追放、天下り禁止・引き上げ、大蔵省解体・市民財政省設置
母体行役員−−役員報酬ゼロ、市民の預金金利の正常水準への引き上げ
住専経営者−−退職金没収、浪費癖による準禁治産宣告
政治家−−−−国会解散、銀行からの政治献金没収、10年の公民権停止
借り手企業−−私財没収、生涯労働による借金返済
農林系幹部−−即時辞任


株主オンブズマン通信第1号(file.1123) 終わり
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