告  発  状
                                                                       平成11年12月 2日(file.120601)

   当事者の表示            別紙記載のとおり


 政治資金規正法違反告発事件


                    告 発 の 趣 旨

  被告発人団体(未来産業研究会)の行為は政治資金規正法第二二条の二、同二六条三号、同二八
条の三に左記のとおり違反するので、早急に捜査を遂げ、厳重に処罰されたく告発する。

                            記

一 被疑事実
    被告発人団体(未来産業研究会)は小渕恵三首相が代表者である政治資金規正法に定める資金管
    理団体であるが、その役職員または構成員が
 1 別紙寄附者目録一、二、三、四、五記載の者から金二〇〇万円の寄附を同記載の年月日に受け
   ながら、もし同団体(未来産業研究会)で右合計金額の寄附を受ければ政治資金規正法第二二
   条の二に抵触するので、それを仮装または脱法するため、同2記載のペーパー政治団体に寄附
   させ、またはさせたかのごとく仮装し、その上、同記載のペーパー政治団体から被告発人団体
  (未来産業研究会)が寄附を受け取り、もって、別紙寄附者目録一、二、三、四、五記載の同一
   人から金一五〇万円を超える金二〇〇万円の寄附金を受け取ったものである。

 2 別紙寄附者目録六記載の者から同1記載の年月日に金一〇〇万円の寄附を受けながら、同人か
   らの寄附は毎年高額になるので、これ以降の献金は政治資金規正法二二条の二に抵触するおそ
   れがあるので、それを仮装または脱法するため、同1記載のペーパー政治団体に寄附をさせ、
   またはさせたかのごとく仮装し、順次、同2、4、6のペーパー政治団体にも寄附をさせ、ま
   たはさせたかのごとく仮装し、さらに同団体(未来産業研究会)で3、5の政治献金も受け取
   り、その上、同記載のペーパー政治団体から被告発人団体(未来産業研究会)が寄附を受け取
   り、もって、同六記載の同一人から金一五〇万円を超える金五〇〇万円の寄附を受け取ったも
   のである。

 3 別紙寄附者目録七記載の者から同1記載の年月日に金一〇〇万円の寄附を受けながら、平成一
   〇年九月一〇日、さらに金一〇〇万円を受けるにあたり、もし同団体(未来産業研究会)で右
   合計金額の寄附を受ければ政治資金規正法第二二条の二に抵触するので、それを仮装または脱
   法するため、同2記載のペーパー政治団体に寄附させ、またはさせたかのごとく仮装し、その
   上、同記載のペーパー政治団体から被告発人団体(未来産業研究会)が寄附を受け取り、もっ
   て、別紙寄附者目録七記載の同一人から金一五〇万円を超える金二〇〇万円の寄附金を受け取
   ったものである。

二 罪名及び罰条
  罪名及び罰条 政治資金規正法二二条の二違反(寄附の個別制限法違反)、同二六条三号、同二
  八条の三


     告 発 の 理 由

一 当事者
 1 告発人らは、日本生命、住友生命の政治献金が相互会社でありながら特定の政党政治団体に寄
    附することが違法である旨の社員代表訴訟の提訴を準備するため、企業の政治資金を調査してい
    た。この過程の中で、左にのべる重大な法違反の事実を発見したので、告発をする次第である。
 2 被告発人団体は、小渕恵三首相が代表者である政治団体で、政治資金規正法(以下単に法とい
   う)第一九条に定める資金管理団体である。
 3 被告発人団体ならびに恵山会、恵友会、恵和会の所在地、代表者、会計責任者、事務担当者、
   電話番号は別紙政治団体目録のとおりである。
   これらの四団体の会計責任者または事務担当者は同一人物である。

二1 政治資金規正法は、寄附の個別制限について次のとおり定めている。
  二二条一項「政治活動に関する寄附は、各年中において、政党及び政治資金団体以外の同一の者
    に対しては、百五十万円を超えることができない。」
  二二条の二「何人も・・・前条(二二条)一項の規定に違反してされる寄附を受けてはならない。」
   二六条「次の各号の一に該当する者(団体にあってはその役職員又は構成員として当該違反行為
  をした者)は一年以下の禁錮または五十万円以下の罰金に処する。」
  一号「・・・又は二二条第一項の規定に違反して寄附をした者」
  三号「二二条の二の規定に違反して寄附を受けた者」
  二八条の三「団体の役職員又は構成員が・・・二六条の規定に違反行為をした時は、その行為者
  を罰するほか、その団体に対して当該各条の罰金刑を科する。」
   右のごとく、寄附の個別制限の趣旨は、一五〇万円を超える政治献金の授受が政治の腐敗を招き
  やすく、癒着現象をひきおこしやすいので、特定の者と特定の政治団体又は公職の候補者との癒
  着を防止しようとするものである(政治資金規正法・自治省選挙部政治資金課編集一九〇頁)。
   以上の立法趣旨からすると、政治団体や公職の候補者は政治献金を授受するに際して、幾多の実
  体のないペーパー政治団体を利用して、最終的に自己の政治団体に一五〇万円を超えて寄附を受
  けた場合には、同法に違反すると解すべきである。

 2 政治資金規正法は政党(法三条一項一号)、政治資金団体等のみなし政治団体(法五条)、資
  金管理団体(法一九条)以外の政治団体に対しても特典を与えている。
  会社、労働組合、個人等の政党等への寄附には総額の制限(法二一条の三)や同一の者に対する
  寄附の個別制限(法二二条)があるが、右政治団体のそれへの寄附には制限がない。
   個人が政治活動に関する右政治団体への寄附のうち、一定の要件に合致するものは租税特別措
  置法上の優遇措置が講じられている(三二条の二)。
  右のような団体に対する特典が認められている実質上の理由は、政治上の主義・施策を推進した
  り特定の候補者を支持することを本来の目的として、そのために組織的、継続的に政治活動をし
  ているからに他ならない。
   自治省は政治団体については、それらの活動が非組織的であったり、一時的である団体は「政
  治団体」に該当しない(『政治活動の手引』自治省選挙部編三頁)としているのは、組織性、継
  続性がない「政治団体」を同法上の政治団体として保護するに価しないと見ているのである。
   さらに「自らは政治的キャンペーン等の活動をすることは、およそ目的とせず、また実際にも
  何らの活動をしないで、政治家のために資金上の援助をすることのみを目的とし、かつ、これの
  みをする団体は政治団体に該当しない」(右同二六四頁)としている。
  これは政治家の資金援助のみを目的として何らの活動をしない団体を政治資金上保護に価しない
  し、また保護すべきでないと考えているからに他ならない。
  その点で、自治省に届出はしているが、政治上の活動を何ら行われず、実体上は別の政治団体の
  役員や構成員によって「運営」されているペーパー「政治団体」は政治資金規正法上の独立の政
  治団体として保護すべきではない。

三 被告発人団体の法違反
 1 被告発人団体の平成一〇年度の政治資金の収入のうち、次の政治団体から献金を受けている旨
  の記載がある(甲第一号証)。
  恵山会         三〇〇万円
  恵和会         四〇〇万円
  恵友会        二二五〇万円
 (以下この三政治団体を総称する場合は単に三団体という。)
  この他にも国際政治経済研究所から七〇〇万円を受けている。同団体もペーパー政治団体である
  が、今回はこの点は捨象する。

 2 右三政治団体の同年度の収支は甲第二号証乃至甲第三号証のとおりとなっている。
  いずれもこの三団体は各個人から寄附を集め、そしてその全額を被告発人団体に寄附している。
  政治「団体」である以上、団体の意思決定があり、相当数の構成員が有機的に活動する「組織体
  」でなければならず、それらの者が年間を通じて活動するという「継続性」がなければならない。
  そうすると、必ず通信費、電話代、人件費、家賃等、支出があるはずである。
   しかるに三団体はいずれも、何の支出もしていない。この三団体は、たまたまこの年度だけ支
  出がなかったのではなく、この四年間、全く何の支出もしていない。通信費、電話代、人件費、
  家賃等を一円も負担しないことは独自の団体としての基本要件である「組織性」や「継続性」が
  不存在であることを示している。
  すなわち、自治省には届出しているが、社会的には政治団体として不存在であり、このような社
  会的に存在しない政治団体は政治資金規正法上、独立の政治団体とみることはできない。

 3(一)別紙寄附者目録記載の者六名は、同記載の「政治団体」に寄附をした旨、届出されている。
  これをみると別紙記載の者の一、二、三、四、五の五名は同一日時にまとめて一五〇万円を超え
  て同時に寄附していることが判明する。ところが、これを受け取った会計責任者か事務担当者は
  二〇〇万円を超えて受領すると前記の寄附の個別制限に抵触するので、これの一部をペーパー政
  治団体に寄附させ、または、させたかのごとく仮装して、その旨、自治省に届出している。被告
  発人団体を含む合計四団体の実質上の事務処理者は同一人であるから容易にこれをなし得る。
   別紙記載の七の者は受領日時が違うが、同様である。
  そして、これらの前記ペーパー政治三団体への寄附金は何らペーパー政治団体に保留されず、寄
  附金全額が結局のところ被告発人団体に最終的に寄附されているのである。また、同六の者の寄
  附は毎年高額(平成九年度も合計五〇〇万円を寄附している)になるので、被告発人団体の事務
  担当者が最初からペーパー政治団体に分散献金をさせているか、またはそれを仮装しているに過
  ぎないものである。

  (二)一般に、政治家は資金管理団体以外にも政治献金の受け皿となる政治団体をいくつも有して
  いる。(このことの批判はさておく。)
  しかし、このような場合でも、最低限法律上許容されているのは、その政治団体が団体として現
  実に存在し、組織体として活動(活動すれば家賃や電話代、電気代、人件費等が出費している)
  しているからに他ならない。だからこそ、そのような実際に政治活動をし、現実に存在する政治
  団体でも本法は前記のような特典を与えているのである。
   ところが、ペーパー政治団体でも、前記のごとき税法上の特典が認められるとすれば、例えば、
  一市民が税金を免れるために妻を代表者とするペーパー政治団体を設立し、自己の収入の一部を
  そのペーパ政治団体に献金しても、それは合法となり得る。
  このようなケースの場合、おそらく税務当局は悪質な脱税事件として立件するであろう。何故な
  ら、政治団体なるものが実態上存在しないからである。
  このように、政治資金規正法上その特典を受けるためには、政治団体が実態上存在することが不
  可欠である。ペーパー政治団体で、実態上存在しない団体に政治資金規正法上の特典を与えるこ
  とは許されない。
   ところが、本件の場合は、前記三団体がペーパー政治団体であるが故に、そのペーパー政治団
  体に献金した者の金額全額が小渕首相の資金管理団体にストレートに全額献金されているのであ
  る。形式上前記三ペーパー団体名義を借用しているに過ぎないのである。
  ペーパー政治団体を経由すれば、いくらでも献金が合法的に許されるとなれば、一人年間一団体
  に一五〇万円という制限は容易に脱法できる。
  その点で、本件三団体からの被告発人団体が受け取る献金は右三政治団体からの献金ではなく各
  献金者個人の献金と見るべきである。実際上も、献金者は小渕首相の政治団体へ寄附する意思で
  あり、全く活動もしていない政治団体に特別献金する意思を有しているとも思われないからであ
  る。以上の事実から、各七人の一五〇万円を超える部分について、被告発人団体が最終的にこれ
  を受け取っているのであるから、二二条の二、二八条の三に違反することは明らかである。

四 情状
  被告発人団体の代表者は一国の首相であり、法を遵守し、いやしくも法を脱法する等して法に違
  反することは許されない。
  さらに、このような一円の経費も支出しないペーパー団体を有している首相経験者や派閥の代表
  者の中では小渕首相だけである。
  よって、早急に捜査を遂げ、厳重に処罰されたく告訴する。



            証 拠 方 法

 一、甲第一号証    平成一〇年度未来産業研究会収支報告書要旨
 二、甲第二号証    平成一〇年度恵山会収支報告書要旨
 三、甲第三号証    平成一〇年度恵友会・恵和会収支報告書要旨


      添 付 書 類
 一、甲各号証写し                           各一通
 二、委任状                                   一通


                        一九九九年十二月二日

                               右別紙告発人代理人代表
                                弁 護 士    阪   口   徳   雄
東京地方検察庁 御中


      当事者の表示

                告 発 人  別紙告発人目録記載のとおり


    〒五三〇 大阪市北区西天満三丁目一四番一六号
  ―〇〇四七          西天満パークビル三号館八階
                 電 話(〇六)六三一四―四一八八
                               FAX(〇六)六三一四―四一八七
                   右告発人ら別紙記載代理人代表
                        弁 護 士   阪   口   徳   雄


〒一〇〇 東京都千代田区永田町二丁目一〇番二号
―〇〇一四            被告発人  未 来 産 業 研 究 会
                 右代表者  小   渕   恵   三

付属文書 ◆寄附者目録、政治団体目録(ここをクリックして下さい)
      ◆代理人目録、告発人目録 (ここをクリックして下さい)

file.120601(告発状)終わり