株主オンブズマン 2006年 株主総会・質問マニュアル


M&Aの拡大、ライブドアショックにつづくムラカミショック、収益の改善、株価の下落、不祥事の続発といった企業環境のなかで、会社のあり方とともに株主総会のあり方が問われています。このような時期であればこそ、私たちは、たとえ少数の株しか所有していなくとも、株主総会に進んで参加し、声を上げることが求められています。

株主総会では、私たちは株価や配当に関心を持つだけなく、ガバナンス、CSR(企業の社会的責任)、透明性(企業情報や意思決定のプロセスと内容がステークホルダーにわかる環境)などに関して、広く注意を払い、積極的に質問をしていくべきです。株主は議決権と一体の質問権を持っており、経営者は、株主の質問を無視すると、説明義務違反として決議取消という事態にもなりかねません。

質問はもちろん総会の議場で挙手して口頭で行うことができます。しかし、議場質問の場合には、質問者が多いと順番が回ってこない場合もあり、また調査に時間がかかることを理由に回答が拒まれることもあります。質問に対する言い逃れを許さないためには、事前に書面で質問事項を送っておくとよいでしょう。会社法の第314条には、取締役・監査役等の「説明義務」が定められており、株主が総会日より前に書面により説明を求むべき事項を通知したときは、取締役および監査役は、調査を要することを理由に回答を拒むことはできません。

また決算などについて質問をする場合には、各事業年度の計算書類の「附属明細書」を入手することが重要です。これによって、営業報告では知ることのできない、資本金、借入金、引当金などに関するかなり詳細な会計情報を知ることができます。また、前年に取締役や監査役に支払った報酬の総額なども記載されており、役員報酬について質問する場合の参考になります。

株主が活発に発言して総会を活性化させることは、経営者の違法・不正行為や誤った経営判断に対する大きな抑止力となり、ひいては企業活動の健全化とよりよい市民社会の形成の一助となるはずです。

本会は、1996年の設立以来、株主総会の改革に向けてさまざまな提言や取り組みを行い、何度か「株主総会質問マニュアル」を発表してきました。そこで、本年も従来のものに若干変更を加えて以下のような要項をお届けします。これがなんらかのご参考になることを期待しています。

I 株主総会のあり方についての質問

1)株主総会の開催は集中日を外し、一般株主が参加しやすい日時に変更すべきではないか。
2)質問への回答は、一括回答ではなく、一問一答でするべきではないか。
3)株主総会招集通知について、発送時期を早める、分かりやすくするなどの工夫を凝らし、株主の議決権行使をしやすくするべきではないか。
4)議決権行使書の白票を取締役会提案については「賛成」、株主提案についいては「反対」として扱う慣行を改め、白票は別個に集計すべきではないか。
5)個別の議案に対して投票結果については賛成票・反対票・白票の票数を具体的に示すべきではないか。
6)投票結果は前日までに到着した議決権行使株数だけでなく、総会当日の議場出席者の議決権行使株数も加えるべきではないか。
7)議決権の代理行使は、定款では当会社の議決権を有する株主を代理人としてしか行うことができないが、株主ではない弁護士や公認会計士やその他の専門家も代理人として認めるべきではないか。

II コーポレート・ガバナンス(企業統治)について
8)取締役・監査役の報酬や退職慰労金等の額については個別開示するべきではないか。
9)委員会設置会社においては、報酬委員会は、執行役・取締役等の個人別報酬等の内容を決定することになっているが、その際の報酬決定の基本的な方針および基準について説明してほしい。
10)役員の交際費(交際費、接待費、機密費等の費用)に支出される金額は総額でいくらあるのか開示してほしい。 
11)社外から取締役や監査役を迎えるにあたって、その候補はどのような基準で選んでいるのか。また、指名委員会における取締役の入れ替えや指名の基本的な方針や基準を説明してほしい(後段は委員会設置会社の場合)。
12)委員会設置会社に移行していない会社に対して。なぜ移行しないのかその理由を説明してほしい。
13)男女共同参画社会基本法の理念に立って取締役会および監査役会に1名以上の女性をおき、すでに女性がいる場合はその比率を高めるべきではないか。
14)今年の総会では「会社法」の施行にともない多岐にわたる定款変更の提案がされているが、その変更・新設の条文のそれぞれについて、ガバナンスのあり方やCSRや透明性の見地からあれこれの質問をしてもよい。

III 企業の情報開示について
15)製品のリコールや安全性の情報に関して迅速に開示しているか。
16)消費者からのクレームや要望について、相談窓口の設置や対応マニュアルの策定はできているか。
17)談合やカルテルについて、公正取引委員会から審決や告発を受けたことがあるか。あるならばその事実について課徴金の金額を含め具体的に示してほしい。
18)会社が原告または被告となっている法的係争にはどのようなものがあるか。あるならその結果や具体的情報を示してほしい。
19)政治献金を行っているか、行っていればその相手先と献金日時、献金理由を開示してほしい。
20)官僚からの天下りを迎え入れているか。いるならば人数と報酬を開示してほしい。

IV 企業倫理とコンプライアンスについて
21)企業倫理のガイドラインあるいは自主行動基準を細目にわたって策定しているか。またそれを一般に公開しているか。
22)コンプライアンス(倫理・法令遵守)に関して取締役の中に担当者を置き、専門的機関を設けているか。
23) ゼネコンその他の官公需比率の高い企業に対して。談合防止プログラムおよび談合防止宣言の有無(策定の用意の有無を含む)を明らかにし、談合根絶に向けての取り組みを説明してほしい。
24)海外機関投資家を中心にSRI(社会的責任投資)の動きが強まるなかで、それに対する取り組みや配慮を行っているか。
25)総会屋や反社会的勢力との絶縁についてどのような取り組みをしているか。
26)公益通報者保護法の施行にともない、経営上層への通報を奨励・保護する特別な窓口、組織、指針等を設けているか。

V 雇用の問題について
27)全従業員における正社員とパートその他の非正規雇用の比率を開示し、あわせて雇用の保障について基本的な方針を示してほしい。
28)全管理職における女性管理職の比率と、女性の雇用条件改善および雇用機会均等についての取り組み状況を具体的に開示してほしい。
29)常用労働者に占める障害者の割合と、障害者法定雇用率の達成状況、雇用納付金または雇用調整金の額を開示してほしい。
30)セクシャルハラスメントの防止と相談のための取り組みを示してほしい。
31)出産・育児・介護などに関する社内休暇制度の現状とその活用状況について具体的に示してほしい。
32)過労死・過労自殺などの過重労働による健康障害の防止に向けて、社内で発生している問題と社内で行っている取り組みについて具体的に示してほしい。

VI 環境や人権への配慮について
33)環境に対する経営のガイドラインやリサイクル・省エネなどに向けての最近の取り組みを示してほしい。
34)環境保護商品・エコマーク商品の開発や導入についての取り組みを示してほしい。
35)ISO14001シリーズなどの規格を取得しているか。規格取得の状況を示してほしい。
36)有害物質の排出量および漏洩量についてどのような実態把握と対策をしているか。
37)再生可能エネルギー資源の利用とリサイクルの推進についてどのような政策も採っているか。
38)途上国での事業活動において労働条件にどのような配慮を行っているか。またそれはILO基準や日本の労働基準に準拠しているか。
39)海外向け投資のなかで人権抑圧国に対するものはあるか。もしあるならば相手国と金額、今後の対応について示してほしい。

VII 決算と会計監査について
40)代表取締役(社長)として、報告された今期決算書は、真実の決算であることを宣誓するべきではないか。
41)内部統制組織の確立が法的に求められているが、その対応はできているか。
42)監査法人への支払報酬は決算報告書に記載されている○○○○円となっているが、その金額はどのようにして決定されたのか。また、監査法人から指摘された事項とその改善の有無について説明してほしい。
43)税務申告書における修正、国税庁による更正処分があったかどうかを明らかにするとともに、あった場合は、その内容、およびその更正処分に対する責任を明らかにしてほしい。
44)企業が税務申告で使途を秘匿した金額と、税務調査で判明した使途を株主総会に開示するべきではないか。
45)キャッシュフロー計算書に見られる資金使途の方針に関して説明を求める。資金が増加している場合には、配当にまわすべきではないか。

VIII M&Aとその対策について
46)これまで敵対的買収のターゲットにされたことはあるか。またその有無を問わず、敵対的買収に対してどのような防衛策を講じているか。
47)株式を長期に保有する個人株主(保有株数の少ない一般株主)の育成のための基本的な方針と取り組みを説明してほしい。


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