ソニー株主総会報告 ――上位5名の取締役報酬の個別開示に半数(47%)の支持――

2006年6月23日

 6月22日(木)ソニー株式会社の第89回定時株主総会が開かれました。株主オンブズマンは、今回の総会の第4号議案に、株主43名、株数882個の株主グループの委任を受けて、報酬額上位5名の取締役の個人別の額を毎事業年度の株主総会招集通知の事業報告に記載して開示することを求める株主提案を行っていました。

 第4議案の投票結果は賛成293万9079個、反対335万5361個で、賛成が46.7%に上りました。昨年比8ポイントの積み上げで、今回は議決権行使株数の半分近くの支持を得たことになります。6月23日の「日本経済新聞」は、この結果を「ソニー役員個別報酬 開示要求47%に急増」という見出しで報じています。

 提案理由の説明には会場から大きな拍手が沸き、他の株主から私たちの株主提案を支持する質問もありました。その株主は、「私は本日会場に来るまでは株主提案に反対であった。しかし、提案理由や質疑応答を聞いているうちに、沈滞しているソニーの経営を刷新するには思い切って株主提案を実行に移すべきだと思うようになったが、なぜできないのか」と質問しました。これに対して、ストリンガー会長は「イギリス人の私は、アメリカに続いて日本でソニーの経営に当たるようになって、異なる国の文化(個人報酬を開示しない日本の習慣?)を尊重することの重要性を学んだ。アメリカのビジネスモデルは日本にとってのパーフェクトモデルではない」という主旨の回答をしました。これは2005年1月に真崎副社長(当時)が私たちとの交渉の場で「アメリカの株主が賛成しているからといって、日本の株主が賛成していることにならない」と述べたのと同じような奇妙な論理です。

 委員会設置会社であるソニーにおいては、報酬委員会は、取締役・執行役等の報酬の内容を個人別に決定することになっており、株主総会に役員の個人別報酬を開示することにはなんの支障も困難もないはずです。報酬委員会のメンバーは岡田明重、宮内義彦、ヨーラン・リンダールの3氏です。ちなみに、岡田氏は取引関係のある三井住友フィナンシャルグループ会長である点で、社外取締役としての独立性に疑いがあります。宮内氏が会長を務めるオリックスは、市場ルールに無視したインサイダー取引容疑で逮捕された村上世彰氏の運営する投資ファンドを通じて巨大な利益を得てきました。この点では村上氏も社外取締役としての適格性に疑問があります。

 ソニー取締役会は報酬の個別開示の株主提案に対し、総額開示を行うだけで十分であるという態度をとり続けています。しかし、昨年の総会で退任した出井伸之会長を例にとれば、彼の会長在任当時の取締役全体の報酬総額は毎年約10億円でしたが、そのなかで出井氏の報酬がたとえば2億円であったのか3億円であったのか、あるいは5億円以上であったのかは、ついに不明のままでした。このような不透明さをなくすには個別開示しかありません。

 2006年3月期の営業報告書を見る限り、総額開示といえども、前期に取締役および執行役に総額24億4000万円(定額報酬8億2400万円+業績連動報酬2億9700万円+退職慰労金11億7400万円)を支払ったこと以外は明確には何も判りません。執行役を兼務する3名の取締役(ハワード・ストリンガー会長、中鉢良治社長、井原勝美副社長)を除く取締役の報酬総額は1億4400万円であったとされています。社外取締役の報酬は大手企業では1千数百万円と言われていることから判断すると、ソニーが社外取締役7名に支払った報酬総額は約1億円と推定してよいでしょう。だとすると、残る4400万円前後が2名の一般取締役の報酬と考えられます(取締役の総数は2005年の総会で選出された12名として計算した)。いずれにせよ、上記3名の執行役兼務取締役の取締役報酬は示されておらず、執行役報酬がいくらかであったかは総額でも個別でもまったく不明です。

 アメリカでは株主提案に議決権行使株数の10%以上の賛成があれば、取締役会は投票結果を株主多数の声としてガバナンスや会社の政策に反映させざるをえないと言われています。ソニーでは株主オンブズマンが2002年に行った女性取締役の選任を求める株主提案が17.5%の賛成を得ました。その結果、翌年には取締役会がその提案を受け入れ、橘・フクシマ・咲江氏が社外取締役に選任されています。これらのことを勘案すれば、昨年4割ちかく(38.8%)、今年5割近く(46.7%)の支持のあった要求を取締役会が拒み続けるのは、株主多数の声にかたくなに背を向けるものといわなければなりません。株主提案において白票は反対と見なされることを考えると、47%の賛成はきわめて重い意味をもっています。

 私たちは、今後、今回の投票結果をもとに、来年の株主総会を待たずともソニーが上位5名の取締役報酬の個別開示に踏み切るよう求めていくつもりです。今回の株主提案にご協力・ご支持いただいた株主のみなさんにこの場を借りてお礼を申し上げるとともに、今後とも引き続き私たちの活動にお力添えくださるようお願い申し上げます。

2006年6月23日

株主オンブズマン代表
関西大学教授 森岡孝二

     

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