談合防止の定款変更を求める株主提案が実現へ
大林組取締役会が株主総会に提案することを決議



大阪市北区西天満4-6-3 第5大阪弁護士ビル3階
株主オンブズマン代表(関西大学教授) 森岡 孝二


1.談合防止の定款変更を求める株主提案が実現する運びになった意義

 私たち株主オンブズマンは、株式会社大林組の第103回(2007年度)定時株主総会に向けて、本年4月24日、株主26名、合計581個(58万1315株)の委任状を添えて「談合防止を定款に盛り込むための株主提案」を行いました。
 大林組取締役会はこの提案を受けて、本年4月27日午後、会社(取締役会)として、株主総会に提案し、定款第3条に談合防止の条文を新設する旨を決議し、東京証券取引所を通して開示しました(https://www.release.tdnet.info/inbs/141b2130_20070427.pdf)。
 これによって、当初の目的が実現されることになりましたので、当会は取締役会の英断を歓迎し、先に行った株主提案を正式に取り下げることを決定しました。同時に取締役会の談合防止に関する定款変更(条文の新設)の提案が来たる6月の株主総会で首尾よく承認されることを期待しています。
 大手建設会社においてこれまでにこれと同趣旨の定款変更が行われた例はありません。大林組が同業他社に先駆けて、刑法、独占禁止法に違反し、入札の公正、公平を阻害する談合行為を行わないことを、株式会社の根本規則である定款に盛り込むことは、ゼネコン業界の多年の悪弊である公共工事その他の建設工事の入札談合を断ち切るうえで、いかなる宣言よりも大きな効果をもつものと考えられます。また、日本においては、業界を問わず上場企業で株主団体からの株主提案を受けて取締役会が定款変更の議案を株主総会に提出した例もこれまでありません。その意味で今回の株主提案から取締役会による受け入れにいたる経過は日本の株式会社の歴史において画期的な意義をもつものと言えます。

2.株主提案の呼びかけから取締役会の受入決議までの経緯

 私たちは、談合体質が根強い建設業に限らず、依然として談合行為が絶えないことに重大な関心を抱き、2005年に発覚した鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件では、東京などの談合弁護団と連絡をとって、2006年、三菱重工、日立造船、神戸製鋼、住友金属、その他の企業の関係役員を相手取って株主代表訴訟を起こしました。
 大阪市に本店を置くスーパーゼネコンの大林組は、昨年の改正独占禁止法の施行を機に、談合の再発防止に向けて、「談合監視プログラム」を策定し、「コンプライアンス室」を新設しました。しかし、その後も、談合行為の摘発と発覚が相次ぎ、防衛施設庁官製談合事件、和歌山県ンネル工事談合事件、名古屋市地下鉄工事談合事件などが起きています。 そこで私たちは、大林組に談合の防止と根絶のための出直し的な改革を求めて、談合防止の条文を会社の根本規則である定款に新設する株主提案を行うことを決め、本年4月4日に数百名の株主に対して、賛同を求める呼びかけを発送しました。(当サイト4月8日掲載文書。)
 その後、4月16日(月)に大林組の総務部から本会の松丸弁護士(事務局長)に、「取締役会として株主提案を受け入れる用意があるのでお会いしたい」という連絡があり、4月23日(月)、大阪弁護士会館の応接室で、同社の総務部長と担当グループ長から、本会の森岡代表と松丸弁護士が同社の対応を聞きました。そして、同社としては、「変更定款案」と「提案理由」を4月27日の取締役会で決議し、直ちに東証で適時開示の手続きをとる予定であるという説明を受けました。その結果、本会としては、その内容を本会が行う株主提案の趣旨に合致したものであると考える、という判断を伝えました。
 こうした経緯を受けて、「株主総会の開催日の8週間前」という株主提案の行使期限より1週間早く、4月24日に前述の通り、株主26名、合計581個(58万1315株)の委任状を添えて、「当社は企業倫理の徹底と法令遵守に努め、特に公共事業の入札に際して、刑法、独占禁止法に違反し、入札の公正、公平を阻害する談合行為等を行わない」という条文を定款に新設する、という株主提案を大林組大阪本店に提出しました。
 さらに4月25日開催の本会の例会に以上の経緯を説明し、承認を得るとともに、4月27日の大林組取締役会において談合防止の条文を定款に新設する議案を株主総会に提案する決定がなされ、その東証開示が確認された時点で、本会の株主提案を取り下げることを決定しました。あわせて、同社が談合防止の株主提案を受け入れたことを企業改革として高く評価し、本会が準備していた防衛施設庁、和歌山県トンネル工事、名古屋市地下鉄工事等の談合事件についての大林組の関係役員への責任追及訴訟(株主代表訴訟)は、本会としては行わないことにしました。
 もとより、談合の再発防止に関する条文を定款に新設するだけでは、談合の根絶には十分ではありません。大林組には、これを機会に社内コンプランス体制をあらためて抜本的に強化し、トップから現場にいたるまで、新設予定の定款第3条にいうように、「当会社においては、役職員一人一人が、法令を遵守するとともに、企業活動において高い倫理観を持って良識ある行動を実践する。特に建設工事の受注においては、刑法及び独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)に違反する行為など、入札の公正、公平を阻害する行為を一切行わない」ことを繰り返し周知徹底することが求められています。

 私たちも株主の立場から引き続き大林組の談合防止の取り組みを監視していく所存です。

戻る