JR西日本の回答書に対する私たちの意見


2005年6月22日

株主オンブズマン
代表者 森 岡 孝 二

JR株主 ・ 市民の会
代表者 桐 生 隆 文


 去る5月6日、株主オンプズマンとJR株主・市民の会は連名で、JR史上最大の犠牲者を出した福知山線(宝塚線)の脱線事故の真相解明と再発防止および安全確保を求めて、JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)に対して株主の立場から以下の3点の申し入れを行いました。

(1) 公平・中立で独立性の高い外部委員を入れた特別調査委員会の設置
(2) 公平・中立で独立性の高い社外取締役の選任と安全監視委員会の設置
(3) 説明責任の履行と誠意ある対応

 私たちの申し入れに対して、JR西日本から6月7日付で回答が示されました。

1.安全対策に関する取締役会の責任について

 今回の私たちの申し入れに対するJR西日本の回答が、利益優先・安全軽視の経営によって最悪の脱線事故を引き起こしたJR西日本の企業風土がどうして作られたのか、それに関する取締役会や取締役の責任に一言も触れていないことは納得できません。
 特に、2003年6月の株主総会では、109名の株主より、「鉄道の安全を監視する常設の安全監視委員会を設置し、その委員会は独立性を備えた社外取締役が担当する。」旨の株主提案がありました。このとき、取締役会はこの株主提案に反対しました。
 『もとより当社では、輸送の安全確保を経営の最重要課題と位置づけ、全力を挙げて取り組んでおります。具体的には、本社ならびに全支社に安全対策室を設置し、自己の発生原因等を詳細に分析・検討し、これらを踏まえた事故防止対策を社内審議機関である安全対策委員会で決定しております。さらに、部外有識者を交えた専門委員会を諮問機関として必要に応じて設置いたしております。こうした取り組みについては、社外の取締役・監査役が出席する取締役会に適時、適切に報告し、取締役会は必要に応じて具体的な指示を出しております。これらの結果、会社発足以来、鉄道運転事故件数は減少傾向にあります。したがいまして、ご提案のような委員会の設置を定款に新設する必要はないと考えております。』
 この株主提案は、議決権数では全体の5.46%ですが、株主数にすると77,035名中33,000名(42.8%)の株主が賛成していました。市民株主はこのときにJR西日本の企業体質に対して安全を求めていたことがわかります。
 もし、この時に多くの市民株主の声を尊重し、外部の人間を入れた安全監視委員会等が設置されていたなら、今回の事故は防げたかもしれないと思うと返す返すも残念です。この点に対する反省もないことに私たちは決して納得できません。
 この株主提案をはじめ、これまで取締役会にあって安全対策のためにどのような役割を果たしたかが明らかでない二人の社外取締役が引き続き取締役会にとどまることも理解に苦しみます。

2.外部の有識者からなる安全諮問委員会の設置について

 (1) 私たちは先の申し入れにおいて、「事故原因の全面的解明と重大事故の再発防止のために、現場の労働者、鉄道交通の安全に関する専門家、弁護士、利用者等で構成する特別調査委員会を設置し、その結果を公表する。なお、この委員会は、国土交通省の事故調査委員会の調査する事項とは別に、今回の脱線事故を生み出したJR西日本の企業体質と、社内風土を含む経営システム上の原因をも調査するものとする」ことを要請いたしました。
 しかし、JR西日本の回答は「事故の原因につきましては、現在、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会、警察の調査、捜査が行われているところであり、弊社独自の調査では非常に限定的なものにならざるを得ず、むしろ航空・鉄道事故調査委員会に全面的にご協力申し上げることが、より専門的かつ早期の原因解明につながるものと考えております」と述べています。これではJR西日本には、今回の脱線事故を生み出した企業体質と、経営システム上の原因を調査することを自ら放棄したものと言わざるを得ません。

 (2) JR西日本が設置する安全諮問委員会は安全対策について強い調査権限と立案能力を持つものと考えることはできません。発表されているメンバーにも疑問があります。予定者のうちには住友金属工業株式会社の常務執行役員が含まれていますが、同社は、JR西日本が購入する台車等の納入企業です。2000年には東京の営団地下鉄の脱線事故に絡んだ調査で、住友金属製の台車の亀裂が相次いで発見されました。事故の原因が台車の亀裂にある場合を考えれば分かるように、取引上の利害関係をもつ人が安全諮問委員会に入ることは徹底した原因究明と安全対策の構築を妨げるおそれがあるといわなければなりません。

3.社外取締役の選任について

 6月23日開催の株主総会において社外取締役に迎える東京大学名誉教授の曾根悟氏はJR西日本の安全対策を厳しく批判してきた人ではありませんが、交通システム工学の専門家である点で安全対策の充実・強化に何らかの寄与ができるものと思われます。それだけに、回答にもあるように、「公平、中立かつ独立した立場から、鉄道の安全に関する適切な助言・指導」がなされることを期待しています。またそれと同時に、曾根氏がそうした役割を果たせるように、狭い意味の鉄道の安全に関する情報だけでなく、経営体制全般にわたる情報が曾根氏に迅速かつ適切に提供されることを求めます。

4.説明責任の履行と誠意ある対応について

 回答はこの点をもっとも詳しく説明していますが、今回の事故による犠牲者とその遺族、被害者および沿線住民に対して事故原因の説明責任を尽くしたものにはなっていません。 それは言葉で伝えられるものというより、今後の安全対策の構築や経営体制の刷新を通して、目に見えるかたちで示されるべきものです。

5.最後に

 JR西日本が、多数の犠牲の上に、遅ればせながら安全対策に重点を移す方向で改革しようとしている姿勢を批判するつもりはありませんし、より一層安全性に関する改革を行うことを希望いたします。
しかし、それを真に実のあるものにするために、JR西日本の企業風土が何故作られたのか、その原因の解明やそれに関する企業トップの責任、役割について調査・検討すること抜きには、改革、改善と言われてもにわかに信じがたい面があります。
この点の調査・検討がない以上、JR西日本の改革の行方を株主の立場から注意深く監視していく所存です。

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