株主オンブズマンは,日本債券信用銀行(日債銀)の経営破綻問題
  をめぐって,大蔵省の要請に応じ同行の増資新株(いわゆる奉加帳増
  資)を引き受けた生保など金融各社に対し,保険契約者および株主の
  協力を得て,議事録の開示請求を行っていました。そのうち,日本生
  命については,大蔵省との確認書が明らかにされたことなど,既報の
  とおりです。このほど,日生以外についても取締役会の状況と特徴が
まとまりましたので,ここにその概要をお知らせします。



日債銀問題での金融各社への取締役会議事録の開示請求結果について

1.平成9年6月の日債銀への金融各社の増資引受
 平成9年6月に,主要な銀行(12社),生保会社(17社),損保会社(8社)が計1670億円
 の日本債券信用銀行の増資新株を引き受けています。しかし,日債銀はこの増資新株発行当時において
 債務超過の経営破綻の状況にあり,同10年12月13日には特別公的管理が開始され,新株引受をし
 た各社には引受額相当の損害が発生しました。

2.金融各社への取締役会議事録閲覧申立
 株主オンブズマンでは本年3月,株主,生保契約者の協力を得て,増資引受をした会社のうち13社
 につき取締役会議事録閲覧請求の申立をしました。その目的は,増資引受にあたって,これを要請した
 大蔵省から日債銀の資産並びに経営状況についてはどのような説明があったのか,これに基づき取締役
 会でどのような資料に基づき,どのような議論の結果,増資引受を決定したのかを明らかにすることで
 した。また,大蔵省の主導の下に奉賀帳方式で進められた増資引受について,引受した各社のサイドか
 らその情報開示をはかることは,日本の金融システムの今後を考えるうえで不可欠と考えたからです。
 
3.日本生命と大蔵省の確認書
 その結果,日本生命に対する手続のなかで平成9年5月30日付の大蔵省大臣官房審議官中井省氏と
 日本生命副社長名原剛氏の連名の確認書を提出させることができました。提出された当日,右確認書
 は国会にも提出されています。
 それまで大蔵省によって国会にも明らかにされていなかった確認書がこの手続によって明るみに出た
 ものです。確認書には「大蔵省は…今回の再建策が実行されれば日債銀の再建が可能である旨確認す
 る」と記載されています。この確認書は,増資引受が大蔵省の主導の下に,日債銀の再建が可能であ
 るとの確認の行われたことを明らかにしました。
 取締役会議事録に添付された資料には,右確認書は日本生命の側でその内容を決めたうえで大蔵省よ
 り徴求した旨の記載があります。大蔵省が述べていた再建は可能との言に対し,それなら一筆を求め
 るとして徴求されたこの確認書は,従来大蔵省の指導の言いなりになることの多かった金融機関と大
 蔵省との関係を考えるにあたっても,意味深いものと言えましょう。
 これに関連して,三井生命の議事録には,大蔵省に対して「日債銀の再建の見通しがあること,大蔵
 省が今後も同行をサポートしていくこと,並びに今後新たな保有株比率に基づく追加的負担を要請し
 ないことを同省が了知していることを確認済み」との記載があります。

4.この事件の責任の所在
 各社とも日債銀の提示していた再建策(再建初年度から170億円の当期利益が計上されたもので,
 これをまともに信用する経営者はあるまい)ではなく,大蔵省の再建可能との言に基づいて増資引受
 に応じたと言えます。
 この増資引受につき,まずその責を負うべきは,当時日債銀の検査を進めていた大蔵省銀行局がその
 調査内容の実態を各社に開示することなく,再建可能として強引に増資引受を奉賀帳方式で進めた大
 蔵省にあります。
 同時に,増資引受についての経営判断を大蔵省の確認書や言明に大きく依存した各社の経営陣の責任
 も軽いものとは言い難いものです。多くの会社では増資引受を判断するにあたって,顧問弁護士より
 善管注意義務違反として株主代表訴訟等での役員責任の対象となるかどうかについての意見を求めて
 います。株主代表訴訟が,取締役の経営判断を法的判断を経た慎重な判断にさせていると言えましょ
 う。

5.「シャンシャン取締役会」改善の必要性
 大和銀行では,増資引受を議題にした第1回目の取締役会では「大蔵省の検査および監査法人による
 監査の結果および内容が当行に十分に開示されていない」などを理由にして議決をとらず,次回期日
 において決議をしています(他社より先に付議している点もあるが)。
 他社は1回の取締役会のみで決議をしていますが,その審議時間を見ると「シャンシャン取締役会」
 と言いたくなります(別表参照)。更に明治生命,第一生命に至っては,このような重大で議案であ
 るにも拘らず,取締役会に付議せず,常務会での議題に留めています。取締役会の形がい化は,経営
 判断の形がい化を生み出し,活力ある企業経営を阻害するものです。
 株主オンブズマンは「シャンシャン総会」の是正を求めてきましたが,今後は株主総会だけでなく,
「シャンシャン取締役会」の是正も課題として取り上げていこうと考えています。

〔別表〕
会社名   開催日  議案数  審議時間    特徴点
日本生命  6月2日  7件 1時間45分 大蔵省との確認書添付
明治生命   (取締役会に付議せず)   財務会議(社長・副社長
                                          ・専務・常務)に付議
第一生命   (   〃     )
三井生命  6月17日  1件   15分 大蔵省が「再建可能であ
                                          りサポートする」こと等
                                          を了知していることを確
                                          認
太陽生命  6月27日  9件   37分 日債銀の収益計画と大蔵
                                          省検査結果に大きな齟齬
                                          はないことも勘案して応
                                          諾
住友生命   (取締役会に付議せず)   経営委員会に付議
住友海上  6月10日  2件   15分 常務会で事前に稟議して
                                          いる
東京海上  6月17日  不明   45分
安田火災  5月22日  8件   25分 シャンシャン取締役会の
                                          典型(?)
大和銀行 (5月19日)
            5月28日  1件   49分 第1回目では結論留保
あさひ銀行  (議事録未提出)
第一勧銀  5月29日  2件   22分 取締役40名中25名の
                                          み出席
住友銀行  5月23日  8件   65分