落選運動とその活動についての法律問題


はじめに
以下の見解は、公式の自治省等の見解と異なる場合もあると思います。
このホームページを見られ、実際に落選運動をする場合は、自治省選挙課(03-5574-7230)又は都道府県の選挙管理委員会に問い合わせをしてから実行して下さい。
ひとつの公職選挙法に関する参考意見として思って下さい。

1 落選運動は、公職選挙法上の「選挙運動」か
自治省選挙部の解説によると、選挙運動とは、
@ 特定の選挙において
A 特定の候補者の当選を得又は得しめるために
B 選挙人に働きかける行為
であると言われています(衆議院選挙の手引・自治省選挙編・ぎょうせい出版 8頁〜)
 投票を得又は得しめるためとは、特定の候補者に投票を得又は得しめるための活動的行為であると説明しています。
 即ち、この考え方だと、落選運動は特定の候補者が衆議院議員として不適格である、よって落選させようと呼びかける行為は、「特定の候補者に投票を得又は得しめるための行為」でないから、選挙運動でないことになります。
 ちなみに、前記自治省の文献によるとによると、次の問答集が記載されています。
問:反対候補者に投票しないようにと選挙人に働きかける行為は、選挙運動か。
答:反対候補者に投票させないことによって特定候補者の当選を図る目的があれば、選  挙運動となる。
問:立候補勧誘行為又は立候補を中止させる行為は、選挙運動となるか。
答:いずれも選挙運動とはならない。ただし、特定候補者の当選を図る目的をもって他の  者の立候補を中止せしめる行為は、選挙運動となる。
  さらに、自治省選挙部編「選挙関係実例判例集」(第15次改訂版)も次のとおり述べて  います。
・反対党に投票させない行為(国警刑事部)
問:反対党に投票しないようにする行為は選挙運動なりや。
答:反対党に投票させないためだけの目的であれば選挙運動とならない。蓋し選挙運動となるためには、特定の候補者のために投票を得る目的の下になされたことがを要するからである。従って反対党に投票させないことが引いて自分の属する党に投票せしめる目的であるときは選挙運動となる。
 以上の自治省の見解によると、A候補者は国会議員として不適格、よって、この人に投票しないように働きかけること又は立候補の中止を働きかけることは、同一選挙区での候補者のB候補らの当選を図る目的がない限り選挙運動に該当しないと解されます。
 現在、一般にわが国で行われている落選運動は、不適格候補者の選挙区の対立候補者を応援して落選運動をしているわけではありません。自治省の見解によると一般的には落選運動ではないことになります。
 また、選挙運動でもないから、公職選挙法129条の事前運動の禁止規定にも抵触しません。

2 落選運動は「政治活動」か
(1) 落選運動は、公職選挙法上の選挙活動でないからといって、活動が自由ということにはなりません。
 公職選挙法は、公示後の政治活動について厳しい規制をしています。自治省選挙課長山本信一郎著「わかりやすい公職選挙法」(第10次改訂版 ぎょうせい発行)」によると、政治活動とは次のとおり定義しています。
「抽象的には、「政治活動」とは、政治上の目的をもって行われる一切の活動、すなわち政治上の主義施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくは反対することを目的として行う直接間接の一切の行為を総称するものであるということができる。したがって、これらの一切の行為の中には、特定の候補者の推薦、支持等その当選を図るために行う選挙運動にわたる活動をも含むものと解される。・・・・ したがって、「公選法上の政治活動」とは、右の政治活動の定義の中から選挙運動にわたる行為を除いた一切の行為ということができる」(223頁)。
 この見解からみますと、落選運動は「公職の候補者に反対することを目的として行う直接間接の一切の行為」に含まれることになりますから、落選運動は、政治活動に該当します。
(2) 選挙告示後と落選運動
 公職選挙法は、政治活動であってもその政治活動の方法を規制しています。
 前記「わかりやすい公職選挙法」(231頁)によると、別表のとおりです

 これによると、新聞紙又は雑誌による広告、パンフレット、ラジオ、テレビ等による政治活動は自由となります(上記230頁)。
 しかし、候補者等の氏名等が記載されている文書、図画は全面的に禁止されています。即ち、「如何なる名義をもってするを問わず、掲示又は頒布する文書、図画に・・・・特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載する」ことは、政治活動であっても禁止されています(法201条の13、1項2号)。
 なお、文書、図画には、文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に記載された意識であるから、落選候補者の氏名をホームページに記載することは禁止されることになります。
 但し、ホームページ等で禁止されるのは、「選挙の期日の公示からその選挙の当日までの間」にホームページ等に「記載すること」であるから、公示前にホームページに落選議員の氏名等が記載されており、且つ、選挙期間中に更新されない以上、本条文に直ちに抵触しないと解される(この点は自治省に問い合わせて下さい)。
 
3 告示後どのような落選運動は許されるのか
(1) 全く自由に許される行為
 電話等で、直接選挙民に落選候補者を落選させようと架電すること。この場合は、特定の名前を挙げても可能です。
電話での活動は、選挙運動でも政治活動でも全く自由です。集団で電話をしているところにテレビ、新聞記者等が取材に入り、その様子をテレビ、新聞等が伝えても、公職選挙法上、運動をしている人に対する制限はありません。電話結果を、落選運動のメンバーが記者の取材に応じ、A落選候補に対する選挙民の反応はかくかくしかじかであると口頭で公表しても、規制されません。
 この結果を「候補者の氏名又は氏名が類推されるような事項を記載した」文書、図画(インターネットを含む)に選挙中してはいけないのです。
(2) 集会
 告示日は、政談演説会、街頭政談演説会等は規制されます(法201条の5)。しかし、政談演説会等は、外部の者に対して落選運動を働きかける点にありますから、内部のメンバーが集会を開き気勢を揚げることは自由です。また、座談会や懇談会等も「演説会」とは異なるので、落選運動のためにあれこれ会員等が集まり討論議論することには抵触しません。
 A候補落選のため等と名称せず、単に落選させるべき国会議員について座談会を開催するからと、不特定又は多数の有権者等に口頭で呼びかけることも自由です(ビラ等の文書にすると抵触する)。
(3) 街頭での活動
 政治活動であっても、上記のとおり自動車、拡声器等の使用、連呼行為(140条の2)、気勢を張る行為(140条)、ビラの配布等も禁止されているので、通常のデモ行進(マイクをもってビラを配布し、シュプレヒコール等を繰り返す行為)は許されないことになります。
 許されるとすれば、拡声器ではなく「メガホン」で、「連呼」や「街頭演説」にならないよう、道を行く人々に個別に2〜3人でA候補を落選させようと呼びかける「ささやき戦術」くらいでしょう。この場合も、A候補を落選させようとの文書を配布すると、相手に口実を与えます。
(4) 個別訪問
 選挙運動と間違えられやすい行為はすべきではありません。
 しかし、個々の面接は違法ではなく、その面接の際にA候補者を落選させようと訴えることは規制されていません。
@ 別の用件で他人の家を訪問した時に、ついでにA候補者に投票しないでと依頼すること。
A 街頭、電車、集会などで出会った人に依頼すること。
B 買い物に行った時、食堂、理髪店等で出会った人に投票を依頼すること。
C 自分の家や事業場に訪ねてきた人に依頼すること。
  D 職場で同僚と会った際に依頼すること。
は個別面接であって、個別訪問ではないので自由です。 
(5) 落選運動と選挙の自由妨害罪
 落選候補と指名された議員らが、選挙妨害であるという批判をしています。選挙妨害で罰せられるのは、「選挙人らに対し、暴行若しくは圧力を加え又はこれを拐かしたとき」「演説を妨害し、・・・その他偽計詐術等不正の方法をもって選挙の自由を妨害したとき」(公職法225条)のようにその手段に違法性がある場合で、正当な手段でその候補者の落選を図ったとしても、選挙の自由妨害罪には該当しません。

4 インターネットを禁止することの違憲性
本来、選挙期間に文書、図画があれこれ禁止されるのは、大量の文書、図画が配布されると金がかかるからそれを規制していると説明されています(わかりやすい公職選挙法163頁)。
 しかし、インターネットで選挙運動や落選運動である政治活動をしたとしても、ビラ等のように金がかかるわけでもないし、また有権者に強制的に配布されるビラ等と異なり、インターネットは積極的にアクセスしない以上見ることが出来ないものであるから、これを規制する自治省の見解は、現在のIT革命と言われる時代に合いません。
 いずれ裁判でも争われることになるかもしれませんし、近いうちに公職選挙法の文書、図画にはインターネットは除くという改正条文が入るかもしれません。いずれにしても、自治省の見解は極めて古くさく、直ちに改正するべきであると思います(但し、選挙前に、ホームページに落選議員の氏名、理由が記載されたままになり更新されない以上、脱法文書でない限り違法とはなりません)。

5 公職の候補者に対する情報提供とその活動
 候補者の今までの発言録、政治課題に対する考え方を当選、落選と関係なく日常的に市民に情報提供をすることは選挙運動でもありません。
 選挙中は、前記政治活動との関係で微妙な問題を含みますが、選挙と関係なくかなり長期間継続している場合、これも政治活動として公示後も規制することはできないと思われます。インターネット上で、選挙と関係なく国会議員の活動等を批判する内容が記載され、且つ、それが選挙中に「更新」されない以上、規制することは許されないと思います。


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