・株主総会を株主に開かれた充実したものに・


T 株主総会への株主以外の代理人出席を認めた判決・      
U 説明義務違反を理由に退職慰労金決議を取り消した判決相次いで下される・           

T 野村證券株主総会出席権侵害慰藉料請求事件判決(確定)
  (神戸地方裁判所尼崎支部第1民事部平成12年3月28日判決)
(事案)
 野村證券と大和銀行の株式を有する個人株主(株主オンブズマン会員)が、集中日開催 (平成11年6月29日)のため大和銀行には自ら出席し、野村證券については弁護士を 代理人として出席することを求めました。これに対し野村證券は拒否したので、出席権を 含む議決権を侵害されたとして100万円の慰藉料請求したものです。
(判旨)
 〈議決権行使の代理人資格を株主に限定している定款は無効か〉
 「定款で代理人資格 を株主に限定しているからといって、株主以外の代理人であればすべて議決権の代理  行使が認められないと解すべき必然性はなく、代理人として選任された者が株主総会 に出席し、議決権を行使しても株主総会が攪乱されるなど、会社の利益が害されるおそ れがないと認められる場合には、商法239条2項の本則に立ち戻り、その者による議決 権の代理行使が認められることになる。右定款の解釈によれば議決権行使の代理人資 格を株主に限定している被告定款13条の規定は、無限定にこれを制限しているもので はないから、定款で右代理人資格を原告が主張する弁護士等の専門家や株主の6親  等内の親族等に認めなくとも、これらの者が議決権を代理行使する途が閉ざされたこ とにはならない。」
〈議決権代理行使を定款の規定を根拠に拒絶したことが違法か〉
「本件総会へ出席を委任された者が弁護士であることからすれば、受任者である弁護士が本人たる株主の意図に反する行動をとることは通常考えられないから、株主総会を混乱させるおそれがあるとは一般的には認め難いといえる。したがって、右申出を拒絶することは、本件総会がこの者の出席によって攪乱されるおそれがあるなどの特段の事由のない限り、合理的な理由による相当程度の制限ということはできず」

U 南都銀行株主総会決議(退職慰労金)取消請求事件判決(控訴)
      (奈良地方裁判所葛城支部平成12年3月29日判決)
(事案)
 南都銀行が平成11年6月29日開催した株主総会で付議した退職取締役、監査役に対する退職慰労金贈呈の議案につき、株主が質問したにも拘らず、これに回答せずに決議したのは説明義務に反するとしてその決議の取消しを求めた。
(判旨)
〈取締役が負うべき説明義務の範囲〉
「株主は、株主総会において、取締役・監査役の報酬金額、その最高限度額又は具体的な金額等を一義的に算出しうる支給基準を決議しなければならない以上、その金額または支給基準の内容について具体的に説明を求めることができるのは当然であり、説明を求められた取締役は、
@会社に現実に一定の確定された基準が存在すること、
Aその基準は株主に公開されており周知のものであるか、又は株主が容易に知りうること
Bその内容が前記のとおり支給額を一義的に算出できるものであること等について、説明すべき義務を負うと解するのが相当である。」
〈本件総会において説明義務違反があるか〉
「事前に各株主に送付された本件総会の招集通知、本件総会における議長及び取締役の説明のいずれにおいても、退職慰労金の算出基準が存することはうかがえるものの、右基準の内容については明らかではない。
すなわち、右通知は、一定の基準に従い相当額の範囲内で退職慰労金を贈呈するが、その具体的金額は取締役会または監査役の協議に一任されたいとの内容であり、取締役の説明も、算出方法については基礎額と乗数と在位年数を乗じて計算するというだけで、結局は取締役会及び監査役の協議によって具体的金額を決定するとの説明に終始しているにすぎない。株主としては、このような説明を受けたとしても、本件議案とされた退職慰労金の具体的金額がどの程度になるのか全く想定できないばかりか、その額が一義的に算出されうるものかどうか判断し得ないといわざるを得ず、本件総会において、退職慰労金の贈呈に関して議決をするのに十分な説明がされたと認めることは困難である。」

 株主オンブズマンでは、その設立当時よりつぎの「株主総会改革に向けて10の提言」をしてきました。
@ シャンシャン総会との決別
A 総会開催日の分散
B 総会屋との絶縁
C 社員株主の横暴自粛
D 総会のマスコミ公開
E 社長=議長制の廃止
F 議決権代理行使の制限緩和
G 書面投票制度の改善
H 使途秘匿金の開示
I 役員報酬と退職慰労金の開示
 高島屋、味の素、第一勧銀、野村證券、そして現在係属中の神戸製鋼所の総会屋への利益供与の代表訴訟においてはBの点を、住友商事の株主総会決議取消訴訟(現在最高裁係属中)では@、Cの点を追及してきています。
 今回の2つの判決は、TはFの提言と、UはIの提言とかかわっています(なお、Uの判決は株主オンブズマンは関係していません)。

Tの判決について
 議事を混乱させるおそれのない者である以上、広く代理権を認めることは、株主の権利の点からも株主総会の活性化の点からも改革が求められています。
 とりわけ弁護士、公認会計士等の代理出席を認めることは、会社の遵法経営(コンプライアンス)あるいは適正な会計情報開示についての議論を行うことによって、総会を充実した内容のものにするために大切なことです。
 代理人資格を株主に限るとの定款の定めは、専ら総会屋対策のためのものである以上、「株主総会が攪乱されるなど、会社の利益が害されるおそれのない」者に対して代理権を認めるのは当然のことです。この判決の立場からするなら、今後、弁護士等が代理人として出席するのを拒否して総会決議がされれば、決議取消の理由になります。
 総会屋の「呪縛」にとらわれたシャンシャン総会でなく、株主を大切にした、充実した総会への転換のためにも、この判決に基づいて、株主以外の者にも代理人資格を認めた総会運営が求められます。

Uの判決について
 役員は株主から委任を受けてその経営の任にあたっている以上、委任契約上の退職慰労金を含む報酬については、個々の役員ごとにその具体額を議案において明らかにすべきは当然です。
 退職慰労金については、その役員が在任中の功労を評価したうえ決定されるものである以上、株主へのその額の開示は不可欠と言えましょう。
 この判決は、個別の役員についての具体的な金額の開示を総会で求めているものではないものの、その支給額が一義的に算出できる規程の内容を説明すべき義務を負うとした点で、退職慰労金についての株主への情報開示を一歩進めたものです。
 退職慰労金を含む報酬額の個別的、具体的開示はプライバシーの問題を生ずるとの議論があります。
 しかし功労のあった役員がそれに応じた高い報酬を、功労の少なかった役員はそれに応じた低い報酬を得られないのは、委任契約の趣旨からして当然です。
 また、その評価の結果を開示することは、それによって個々の役員の経営努力に対するインセンティブが生ずるものであり、横並びのお手盛りの報酬制度の改革が求められています。
 なお、本件判決と類似の判決としてブリヂストン株主総会決議取消判決(判例時報1263号3頁以下)があります。


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