株主オンブズマン500社アンケート
2000年株主総会動向調査・結果報告(速報)
                                     2000年6月19日


1.調査対象および調査目的
 株主オンブズマンは2000年の株主総会シーズンを前に、日経500社(2000年3月1日現在)を対象に、株主の立場から注目される最近の株主総会の変化をふまえて、株主総会改革の動向についての郵送によるアンケート調査を実施した。なお、質問表には昨年から今年にかけての最近の株主総会をめぐる特徴的な動きを示す資料を添付した。

2.回収率
本会では3年前の1997年にも日経500社を対象に株主総会調査を実施した(『シャワッチ』第1号「よい総会、悪い総会」参照)。このときの回答率は19%(95社)であったが、今回は回答企業数が締切日の6月17日現在で224社に達し、回答率は前回の2倍以上の45%にのぼった。回答のうち1社は質問項目への個別回答でなく別紙に概括的に説明しているので、集計からは除外した。したがって、( )の%はとくに断らない限り223社に対する比率を示している。
 
3.調査結果の全体的特徴
 今回の調査結果は、日本の株主総会がある点では徐々に、ある点では急激に変わりつつあることを示している。従来の日本の株主総会は、総会屋対策と社員株主による「異議なし」「了解」「議事進行」の一斉唱和が重苦しい雰囲気をつくっていたが、株主との対話を重視して、質問には丁寧に答えるという姿勢に変わった企業が大きく増え、営業報告等のビジュアル化や、マスコミへのモニター公開などに踏み切る企業も多くなっている。
 調査結果はまた、総会招集通知の発送時期を早めたか、今後早める必要があると考える企業が増えていることを示している。この変化には、記述回答の説明からみても、海外の機関株主への配慮がはっきりと表れている。海外の機関株主の要求との関連では、独立社外取締役を選任する企業が増加していることも注目される。また、野村証券に対する神戸地裁尼崎支部での判決を反映して、1割近くの企業が弁護士等の株主以外の専門家の総会への代理出席を認めるとしていることも注目される。
 株主総会の集中日開催については、回答企業の1割強の企業が、ここ数年の間に集中日を避けるように改めたと答えている。しかし、なお大多数が6月末の集中日に開催している状況には大きな変化はない。また、情報開示に関連して、役員の報酬および退職慰労金の個別開示に関心が集まっているなかで、個別開示にすでに踏み切ったか、今後踏み切る予定の企業は回答企業中にはない。「今後の個別開示について検討する用意がある」として会社も2割にとどまる。こうした面からは、株主総会の改革はまだ緒に着いたばかりで、多くの課題が今後に残されているといえる。

1)株主総会の位置づけについて(重複回答可) 
  1.会社の基本的な意思決定を行う場            203社(91%)
  2.利益処分案の承認と取締役・監査役の選任の場    177社(79%)
  3.経営陣と株主との対話の場                 176社(79%)
  4.投資家および消費者への企業PRの場           24社(11%)

特徴:株主総会を「経営陣と株主との対話の場」とする会社は前回調査では65%であったが、今回は79%に増えている。このことは記述回答で、営業報告をビジュアル化したり、「株主が発言しやすい議事進行」や「質問しやすい雰囲気作り」に努めている会社が多いことと合わせて、会社側が一般株主を重視する姿勢に変わりつつあることを示している。

2)株主総会の開催日時について
  A 開催日時  (  )月(  )日(  )時より
   開催日
    3月30日      7社
    5月25日      4社
    6月27日      8社
    6月28日      21社
    6月29日     152社
    その他の日   13社
    未定・無回答   17社   

   開催時刻(午前10以外)
   1月18日 14時     INAX
   3月30日  9時     キヤノン
   6月24日 13時30分  ナムコ
   6月27日 14時    イビデン
   6月28日 11時    雪印 
   6月29日 13時    グンゼ
   6月29日 14時    北陸電力

B 6月集中日以外に開催している企業にお尋ねします。
  1.ずっと以前から6月末の集中日には行っていない。      18社
  2.ここ数年の間に6月末の集中日を避けるように改めた。   27社
  2000年から 7社 サークルケイジャパン、プロミス、藤沢薬品工業、  
           神戸製鋼所、東海銀行、日商岩井、日立化成工業
  1999年から 6社 東芝、三和銀行,日東電工、HOYA、日野自動車、ニチメン
  1998年から 10社 高島屋, 大和證券、西日本旅客鉄道、静岡銀行、
            ブラザー工業、三菱自動車工業、新日本製鐵、丸紅、 第一勧銀、ナムコ  
  1997年から 1社 東邦銀行
  1996年から 1社 雪印乳業
  変更年無記入 2社 大日本製薬、三井物産

C 6月末集中日に開催している企業にお尋ねします。
  現状を改める必要があるとお考えですか。
  1.早急に改める必要がある。   1社
  2.将来改める必要がある。    40社 
  3.今後も改める必要はない。   9社
  4.その他  93社  

特徴:ここ数年の間に6月末集中日を避けるように改めた会社が27社(12%)あり、以前から行っていない会社を含めると、6月末集中日以外に開催している会社は45社(20%)にのぼる。6月末集中日開催会社の26%にあたる40社は、6月末集中日開催を「将来改める必要がある」としている。これらから今後、集中日一斉開催の見直しの動きが徐々に広がっていることが伺われる。

3)総会招集通知の発送時期について
  A 現在の発送時期(今年からを含む)                    
   14日        89社
   15日〜19日     64社
   20日〜24日     38社
   25日〜30日     11社
   
   25日以上前に出す会社
    テルモ、アドバンテスト、東京海上火災保険、メイテック、三井海上火災、日立製作所、三菱マテリアル、
    花王、安田火災海上、HOYA、資生堂、

B 3Aの質問に1(2週間前)と答えられた企業にお尋ねします。
  今後早める必要があるとお考えですか
  1.早める必要がある  29社
  2.早める必要はない   8社
  3.その他         48社  

特徴:従来の2週間前に発送する会社が圧倒的に多かったことと比べると、総会招集通知の発送時期は早まる傾向にある。記述回答では「海外の機関投資家」の議決権行使に要する期間を考慮して発送を早めたという企業もある。

4)役員報酬について
役員の報酬を役員毎に個別開示して決定することについてどうお考えですか。
  1.すでに個別開示している               なし
  2.今後の個別開示について検討をしている     3社  阪和興業、京浜急行、鐘淵化学           
  3.今後の個別開示について検討する用意がある 49社
  4.今後とも個別開示をする必要はない。      82社
  5.その他                         73社

  (住友信託銀行は「その他」の項で「検討中」と記入)

特徴:開示拒否の姿勢に大きな変化はないが、49社(22%)が「今後の開示について検討する用がある」と表明している。「まず専務レベルの開示を検討したい」とする会社(ツムラ)もある。

5)役員の退職慰労金について
役員の退職慰労金を役員毎に個別開示して決定することについてどうお考えですか。
  1.すでに個別開示している                 なし
  2.今後の個別開示について検討をしている       4社  ヤマハ発動機、阪和興業、京浜急行、
                                        鐘淵化学工業
  3.今後の個別開示について検討する用意がある  52社
  4.今後とも個別開示をする必要はない。       71社
  5.その他                          80社

特徴:役員報酬同様に開示を拒否する企業が多いが、「今後の個別開示について検討をしている」も「今後の個別開示について検討する用意がある」も、役員報酬に比べてごくわずかながら前向きな回答が多いのは、南都銀行役員の退職慰労金支給に対する奈良地裁の判決が影響しているのかもしれない。役員報酬と同様に「その他」が多いのは、多数の企業がこの問題で態度を明確にしてないことを示している。
 
6)社員株主の一斉唱和について
社員株主による「異議なし」「了解」「議事進行」の一斉唱和が行われていますか。
 1.以前から行われたことはない                            15社
 2.過去には行われていた時期があるが、現在(最近)では行われていない 152社 
 3.過去には行われていたが、これからはなくしていくようにしたい        27社
 4.現在も行われており、これからもなくす考えはない                1社
 5.その他                                         24社
 
特徴:これまで大多数の会社で行われていた社員株主による一斉唱和は、いまではほとんどなくなってきた。そのことは、「過去には行われていた時期があるが、現在(最近)では行われていない」が152社(68%)にのぼり、「過去には行われていたが、これからはなくしていくようにしたい」とする会社も27社(12%)を数えることに示されている。「過去から行われたことがない」15社(7%)を含めると、廃止派は194社(87%)に達する。他方、「現在も行われており、これからもなくす考えはない」は、わずか1社にすぎない。ただし、「その他」に○をして「株主から自発的に行われている」と書いているところが1社ある。

7)総会議案の白紙委任について
A 貴社が株式を保有する会社の株主総会に際し、「包括委任状」を提出するなどして会社側議案の一切を白紙委  任する慣習についてお尋ねします。
  1.白紙委任を行っている      46社
  2.白紙委任は行っていない   134社
  3.その他               32社   

B 7Aの質問で1と答えられた企業にお尋ねします。
 白紙委任の慣習を改め、個別の議案に応じて賛成、反対、棄権の意思表示をすることについてどうお考えです   か。
  1.今後はそのように改める必要がある    8社
  2.今後もそのように改める必要はない   18社 
  3.その他                    23社

特徴:この質問では「包括委任状を提出するなどして会社側議案の一切を白紙委任する」ことをもって「白紙委任」とした。その結果、「白紙委任を行っている」とする会社は46社(21%)で、「白紙委任は行っていない」とする会社は128社(60%)であった。この結果は、ふつう考えられているほど白紙委任は広く行われてはいないとみることもできるし、一般株主や外国人株主からの白紙委任批判に対して表向きは配慮せざるえなくなっていることの反映と見ることもできる。 

8)独立社外取締役について
CalPERSなどの海外の機関投資家が求めている独立社外取締の選任についてお尋ねします。
 1.すでに実施している 24社
 2.今年から実施する予定である   5社 
 3.将来は実施する必要がある。   43社   
 4.今後とも実施する必要はない。  1社
 5.その他                117社

特徴:昨年はソニーや三洋電機などで、過去に当該会社や子会社に属したことない独立社外取締役の先任が話題を呼んだ。こうした独立社外取締役の選任をすでに実施しているところが24社(11%)ある。「今年から実施する予定である」は5社であるが、「将来実施する必要がある」とする会社は43社(19%)にのぼり、独立社外取締役の選任が一つの流れになりつつある。

9)総会への代理人の出席について
総会を攪乱される恐れのない弁護士や公認会計士等の専門家の株主総会への代理出席を求められた場合、どのように対応されますか。
 1.代理出席を認める  20社
 2.代理出席を認めない 48社
 3.その他         139社

特徴:野村証券に対する神戸地裁尼崎支部の判決(本年3月28日)で、株主総会への弁護士、公認会計士等の専門家の代理出席を認める判決があった。それを反映して、20社(9%)が総会への弁護士、公認会計士など株主以外の専門家の代理出席を認めるとしている。従来どおり「代理出席を認めない」とする会社は48社(22%)で、139社(62%)は、態度を保留している。その理由として、「検討中」、「ケース・バイ・ケースで対処」、「顧問弁護士に相談」などの理由をあげている。

「代理出席を認める」とした会社
  日本証券金融、カシオ計算機、ヤマハ発動機、日本酸素、アルパイン、
  プロミス、日本金属工業、旭硝子、山武、アイワ、住友大阪セメント、
  積水ハウス、日立造船、萬有製薬、太陽誘電、マキタ、アドバンテスト、
  ジャスコ、ナムコ、住友重機機械

記述回答欄にみる「総会の持ち方の工夫」

特徴:営業報告などのビジュアル化(グラフ化、映像化)しているか、する予定の企業は回答企業全体の約3分の1(67社、30%)にのぼる。総会のインターネット公開、総会終了後の株主懇談会の開催、会社(工場)見学会の開催、総会招集通知の英文作成などを新たに実施する企業も増えている。

ビジュアル化実施および実施予定企業名(検討中を一部含む) 

沖電気工業、サッポロビール、安田火災海上保険、松下電器産業、キッコーマン、大丸、
中外製薬、アルパイン、松下電工、イビデン、阪急電鉄、山之内製薬、旭硝子、花王、
藤沢薬品工業、クラレ、ニチレイ、資生堂、大東京火災海上保険、高島屋、関西ペイント、
日新製鋼、東芝、味の素、塩野義製薬、東北電力、大日本製薬、ミノルタ、川崎重工業、
ウェルファイド、三和銀行、三菱商事、東京ガス、三菱化学、日本ゼオン、マキタ、
住友化学工業、住友商事、荏原製作所、東邦瓦斯、日東電工、あさひ銀行、日本碍子、
中国電力、神戸製鋼所、日本鋼管、キヤノン、住友信託銀行、三菱自動車工業、
新日本製鐵、日本テレコム、川崎製鉄、東邦銀行、丸紅、三井海上火災、INAX、
ジャスコ、日商岩井、東洋ゴム工業、日立化成工業、日清食品、エーザイ、ニチメン、
大同特殊鋼、ハウス食品、住友重機機械工業、昭和電工


参考資料(株主総会アンケート調査の協力依頼文)
参考資料(変わり始めた株主総会)


株主総会アンケート調査の集計結果終わり
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